マンション管理の部屋 -6ページ目

マンションと駐車場(2)

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マンションの駐車場問題についての2回目です。

 

マンションの管理組では既に設置されている「駐車場」という共有の財産を維持、管理する義務があります。この駐車場を適正に維持・管理するには、まず駐車場が備えている属性を知る必要があると思いますので、今日は駐車場の形態について見ていきましょう。

 

様々な形態

一口に駐車場と言っても、その構造は多種多様です。

構造形式で分類すると《平面式駐車場》《立体式駐車場》に区分することができます。

さらに立体駐車場は<機械式><自走式>に区分されます。

 

■平面式駐車場■

もっともポピュラーな駐車場です。

単純に敷地の一部をアスファルトやインターロッキングで舗装するなどして、白線やロープなどのラインで区画したようなものです。

ちなみにインターロッキングとは、皆さんもよくご覧になると思いますが、レンガ位の大きさのコンクリートブロックを地面に敷き詰めたようなものです。

カラフルな色彩でアスファルト舗装よりも明るい感じがして良いですね。

 

↓インターロッキング

インター

 

平面式駐車場では敷地に何台分ものスペースを確保した《平置きタイプ》が一般的ですが、最近のマンションでは、1階住居のすぐそばに専用庭として併設されている《専用カーポートタイプ》というのもあります。

マンションは一般的に下層階、特に1階は湿気の影響を受けやすかったり、眺望がよくないとの理由から敬遠されがちなので、デベロッパーが1階住居に付加価値を持たせた企画商品といえます。

↓戸建感覚の専用カーポート付マンション

専用駐車場   

平面式駐車場は物理的に敷地に対する駐車台数に限りがありますが、比較的建設費が安くメンテナンスにも手間がかからないため、敷地に余裕のあるマンションには適しています。

 

■立体式駐車場■

近年の自動車保有台数の急増に伴って、道路交通法、車庫法などの改正が相次ぎ、駐車場の確保は深刻な社会問題となりました。

余談ですが普通の駐車違反は「道路交通法」違反、軽微な違反であれば反則金を支払うことで済まされますので、前科になることはありません。

しかし、同一場所に12時間以上(夜間は8時間以上)停めておくと、「道路交通法」ではなく「自動車の保管場所の確保に関する法律」(通称「車庫法」)違反となります。いわゆる「青空駐車」というやつです。

こうなると厄介で、罰則は3ヶ月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。とありますから、これは刑罰の対象であり、反則金とは比べ物にならないほど重い罪となります。

 


このような社会情勢から、最近のマンションでは高い駐車場保有率を求められています。

ですから昭和40~50年代に建てられた、比較的敷地に余裕のあるマンションでも、住民の自動車保有率の増加に伴い、徐々に立体式駐車場が増設される傾向が強くなってきました。

 

さて、立体駐車場には《自走式》《機械式》があります。

自走とは、格納位置まで自動車を動かして停めることですから、ある意味、平面式駐車場も自走式といえますが、ここでは自走式立体駐車場について説明することにします。

さて、少し長くなりましたので、立体駐車場の詳細については次回といたします。




団地自治会からの退会は可能か?(2)

裁判官  


皆さん、大変申し訳ありません。

「団地自治会からの退会は可能か?」の後編はアップしているもとを思いこんでおり、次のテーマにいってしまいましたが、まだのようでした。


それでは改めまして、県営住宅の団地の自治会からの退会は可能か?という最高裁判決についての後半です。

前回のポイントを整理しますと、

①マンションの管理組合、町会などの地縁団体(自治会)、今回の県営住宅の自治会はそれぞれ法的な位置付けが異なる。

②マンションの管理組合は強制加入で、区分所有権を譲渡(マンションの譲渡)をしない限り、脱退は認められない。

③町会などの地縁団体は入会を強制されるものではなく入退会は自由。

④今回、県営住宅の自治会からの退会は有効との最高裁判決が出た。

というものです。

 


それでは、ここで判決理由を見ていきたいと思います。


【事実関係】

1.この団地自治会は会員相互の親睦、住環境の維持管理等、会員相互の福祉・助け合いを目的として設立された。


2.共益費は1世帯あたり2700円で、自治会費は300円と規定していて、会員の退会についてはこれを制限していない。なお、共益費は街路灯、階段灯等の電気料金、屋外散水栓等の水道料金、エレベーターの保守、害虫駆除等の費用である。


3.入居者の男性は自治会役員の方針や考え方に不満があることを理由に、平成13年5月に退会の申し入れを行った。


4.自治会は平成13年3月から平成15年2月までの共益費 6万4800円(2700円×24ヶ月分)と自治会費7200円(300円×24ヶ月分)の合計7万2000円と遅延損害金を求めて訴えた。

 

【原審(高等裁判所)の判決】

最高裁に来る前の第二審判決を要約すると、

1.自治会の会員は自治会に加入することで共用施設の維持管理や住環境の確保などの利益を享受するのだから、その対価として共益費の支払い義務があり、またその自治会運営のための諸活動を賄うための自治会費を負担する義務がある

 

2.自治会の規約では自治会は団地の入居者で組織することが定められていて、退会については定められていない


3.自治会が法秩序に著しく違反したり、個人の権利を著しく侵害するなど特段の事情がある場合は退会が許されるとしても、特定の思想、信条や個人的感情から退会を申し入れることは許されない

 

というものでした。


【最高裁判所の判決】


これに対して最高裁は、

1.入居者の男性は入居当初、共益費を支払っており、この団地に入居している限り共益費を支払うことについては約束が成立している と見ることができる。



2.自治会からの退会が有効であろうが無効であろうが共益費の支払い義務はなくならない


3.この自治会は会員相互の親睦、住環境の維持管理等、会員相互の福祉・助け合いを目的として設立されたものであり、強制加入団体でもなく、規約で退会を制限する規定を設けていないのだから、いつでも退会できると解釈すべきである。


4.だから、滞納している共益費は支払わなければならないが、退会申し入れ後の自治会費(月300円)は支払い義務が無い。


 


7万2000円をめぐって最高裁まで行ってしまいましたが、金額の問題では無いと言うことですね。

 

さて、皆さんはこの判決をどのようにお感じになったでしょうか?

「月に300円くらいなら払ったって良いのではないか?」、「みんなが払っていて、一部の人が払わないのは不公平ではないか?」という感情を持たれた方も多いのでは?

 

しかし、法律で支払いを命じるということは、強制力があるということで、もし支払わなければ財産を差し押さえてでも、無理やり支払わせるということになりますから、たとえ300円と言えども慎重な判断が必要だと思います。

逆に言えば法律で強制するほど必要性があるか?ということだと言えます。

 

このケースでは、県営住宅の入居ですから、県と入居者の賃貸借契約が基本となります。だから、この賃貸借契約によって支払う義務があるか否かの判断であると思われます。


判決では入居をしていることで「共益費の支払い義務はある」と認めていますが、自治会自体は「任意加入団体」であり、自治会費は強制されないとしています。


ポイントは「規約に退会を制限する規定が無い」という点であり、もし規約に「入居者は自治会への入居は強制であり、退会してはいけない」とあれば、入居者はこれに同意をして入居していることになるので、退会は認められず、自治会費の支払い義務があるとの判決が出た可能性があります。


その意味から、私は今回の判決は妥当であると感じています。

とは言え、本当は話し合いで解決できればみんな幸せだったのでしょうが・・・・。

 

今回の場合は県営住宅なので、マンションの管理組合の場合とは異なりますが、マンションの管理規約や細則などの見直しに際しては、参考になる部分も多いのではないでしょうか?


なお、マンションの管理費とは別に、マンションの入居者も地域の自治会費(町会費など)があると思いますが、この取扱いについては以前「管理費と自治会費(3月2日)」という記事を書いておりますので、興味のある方はアーカイブでご覧ください。


マンションの駐車場問題(1)

駐車場パース


最近の自動車業界はトヨタ自動車の好調振りを伝える一方で、リコール隠しなどの不祥事が続いた三菱自動車の経営不審などが新聞紙上を賑わせていますね。

近年ではマイカーを保有することは全く珍しいことではなく、一家で複数台の自家用車を保有するケースも増えてきているようです。私が子供時分(昭和40年代)では自家用車を持っている家は、かなり裕福か自営業の家でした。

 

わが国の自動車保有台数は平成15年度末で5,500万台を超え、10年前と比較すると3割り増し、20年前と比較すると倍以上増加したことになります。〔(財)自動車検査登録協会による〕

 

このような状況の中、マンションにおける駐車場は様々な問題点を抱えております。

その証拠に平成15年度マンション総合調査結果報告書によれば、マンショントラブルとして

【居住者間の行為、マナー】と言うカテゴリー中、

「違法駐車・違法駐輪」55.5%の管理組合に発生しており、ペット飼育や騒音の問題よりも多く、第一の問題点となっています。


また、

【管理規約】というカテゴリー中、

「駐車場使用方法に関するトラブル」13.0%の管理組合で問題となっております。

 

平成11年度のマンション総合調査結果報告書では、マンショントラブルとして


【居住者間の行為、マナー】のカテゴリー中、

「違法駐車・違法駐輪」36.4%であり、ペット飼育や騒音のトラブルを抱える管理組合の方が、多かったことを考慮すると、駐車場問題がより深刻化しているといえるでしょう。

 

さて、マンションにおける駐車場の問題とはどのようなことでしょうか?

駐車場問題は大きく分けると


1.駐車場の設備や構造に関する問題(ハード面の問題)


2.駐車場の使用や運用についてのルールに関する問題(ソフト面の問題)

 

の二つに分けることができると思います。

 

さて、近年マンションではなぜ駐車場問題が増加してきているのでしょうか?

まず、第一の要因として前述のとおり、自動車の保有台数の増加によってマンションの駐車場台数が不足しているということでしょう。

最近のマンションでは機械式駐車場などの設置により、駐車場の数を増やす傾向にあり、「駐車場100%完備」を売り文句にしている分譲マンションも増えてきていますが、マンションの大型化、高層化が進むにつれ、十分な駐車場台数を確保することは困難な状況になってきています。

 

抽選等でマンション敷地内に駐車することができた人とそうでない人では、まず不公平感が生じます。普段の乗り降りはもとより、天気が悪いとき、買い物の荷物を降ろすときに敷地内の駐車場はとても便利です。

 

私が以前住んでいたマンションでは、近隣に駐車場が少なく、歩いて5分もかかる、最寄駅よりも遠い駐車場を借りていました。この時は子供も小さかったので、車で外出の際は駐車場からマンションへ家族を迎えに来て、帰りはマンションで家族を降ろして駐車場に車を停めに行くという非常に面倒なことをしていました。

 

更に駐車料金も周辺相場に比べて敷地内の駐車料金の方が若干低く設定されているケースが多いようですから、益々不公平感が助長されます。

 

また、更にややこしいのはマンションの住民全員がマイカーの所有者であれば良いのですが、マイカーを所有しない人にとって駐車場は騒音や公害の原因であり、迷惑な存在になりかねません。特に1階の居住者でベランダが駐車場に隣接しているような場合は大きな問題になる可能性があります。

 

このようにマンションにおける駐車場問題は多岐にわたり、また深刻な問題でもあります。

これから数回にわたり、この駐車場問題を特集していきたいと思います。

 

次回はまずハード面の問題として、駐車場の設備や構造について考えてみたいと思います。






団地自治会からの脱退は可能か?(1)

最高裁


↑皇居の程近く、東京千代田区隼町にある最高裁判所の建物です。

 

公営住宅の住民が自治会から退会できるかどうかが争われた訴訟で、最高裁判所第3小法廷は4月26日、退会を原則的に認めないとした1、2審判決を変更し、退会の自由を認める判決を言い渡しました。

判決では「団地の自治会からは一方的意思表示で退会できる」との始めての判決を示したもので、住民側の一部勝訴が確定しました。


ご存じでない方のために補足しますが、日本の裁判制度は三審制を取っていて、裁判所が間違った判断をしないように、当事者が判決に不服がある場合は、一つの事件を3回までやり直すことが認められているのです。


通常、
1回目(第一審)=地方裁判所(東京地裁など)


2回目(第二審)=高等裁判所(東京高裁など)


3回目(第三審)=最高裁判所  となります。


第一審から第二審に行くことを「控訴」といい、第二審のことを「控訴審」といいます。


また、第二審から第三審に行くことを「上告」といい、最高裁判所で出された判決は最終決定となります。


ですから最高裁の判決が出たということは、類似する裁判での手本となるべき判例が出たということで、非常に重みのあるものです。

この事件は埼玉県新座市の「埼玉県営住宅本多第二団地」に98年に入居した男性が、自治会役員に不満を持ち、01年に当該団地の「けやき自治会」に対し、退会届を提出。


その後は毎月の共益費2700円と自治会費300円を納付しませんでした。

このため自治会側は退会届を無効として2年分7万2000円の支払いを求めて提訴していたものです。


さいたま地裁は04年1月、 「やむを得ない事情が無い限り退会は無効」と判断し、東京高裁(04年7月)も「居住者全体の利益を損なう」として退会を認めませんでした。


同自治会が別の住民を相手取った同種の訴訟では、東京高裁(04年5月)が退会を認める判決を出し、同じ団地を巡る2つの訴訟で判断が分かれていました。


最高裁判所第3小法廷では「自治会は会員相互の親睦を目的として設立されたもので、退会制度の規定もなく、退会申し入れは有効」と述べ、退会届提出後の自治会費(毎月300円)の支払義務は無いとした。ただし、共役費について「県住宅供給公社が入居者に自治会への支払いを指示している」として男性に支払いを命じたものです。


さて、まず間違えてはいけないのは、この裁判は県営住宅の自治会の脱退について争われたもので、分譲マンションの管理組合や町会などの地縁団体とも異なるという点です。


まず、マンションの管理組合は、法律上区分所有者は当然管理組合に加入することになり、これは強制ですから、自分だけ脱退するようなことは認められません。


一方、町会などの地縁団体は自由参加です。

例えば、住まいを購入したり、民間の賃貸住宅を借りる際に、「居住者は○○町会へ加入すること」などと言う契約を結びませんよね。


町会に入らないと言うと、近所で陰口を言われるかも知れませんが、法的に強制されることはありません。


では、今回の県営住宅の自治会はどのような位置付けになるのでしょうか?


次回はこのあたりを掘り下げて考えてみたいと思います。

アルカリ骨材反応(2)

アルカリ2



アルカリ骨材反応とは、コンクリートを構成する骨材である砕石に含まれるケイ素が、セメントのアルカリ成分と反応して、部分的に膨張やひび割れなどの劣化を引き起こす減少で 「コンクリートの癌」と言われている現象です。


具体的にはコンクリートに使用した骨材が固まった後のコンクリート中に含まれる水分を吸収膨張し、コンクリートにひび割れを起こしてしまうというものです。さらにその亀裂から雨水などの水分が浸入し、内部の鉄筋を錆びさせて亀裂から赤褐色のただれが出る。あとは内部の劣化が進み最後には鉄筋が切れて著しく強度を落とすというものです。


アルカリ1



さて、前回の続きですが、なぜアルカリ骨材反応が西日本を中心に広がったか?についてです。


昭和30年代後半から高度成長を続けた我が国では、高速道路や新幹線の橋脚やトンネルのような公共構造物だけではなく、マンションなどの民間建造物の建設が大規模に行われ、その主要材料として膨大な量のコンクリートが必要とされました。


当初、コンクリートに使用される骨材は河川砂利が使われていましたが、その採取量が多すぎて、自然破壊につながり、各地の河川で骨材用の砂利採取が禁止され、必然的に骨材資源は砕石に置き換わりました。


関西では宝塚、茨木、高槻などに採石場がありましたが、ダンプカーによる陸送ではコストが高くつき、臨海部の生コン工場に砕石を運ぶには、海上運送が効率的であるという理由から、香川県豊島(てしま)産の砕石が選ばれました。


豊島



しかし、この豊島産の砕石に、アルカリ骨材反応を引き起こす成分が含まれていたのです。

なお、現在では豊島産の砕石は骨材として使用する事を禁止されています。

このような地理的要因から、西日本を中心にアルカリ骨材反応の被害が報告されているものと思われます。


さて、アルカリ骨材反応を起こした躯体は解体して建て直すことが一番の解決法ですが、マンションなどはそう簡単に建て直すことはできません。


もし、マンションでアルカリ骨材反応を発見した場合、速やかな補修と定期的な観察が必要となります。
では、普通のクラック(ひび割れ)とアルカリ骨材反応のクラックはどのように見分ければ良いのでしょうか?


まず、アルカリ骨材反応が進んだ躯体では、急速に内部の鉄筋が錆びるため、躯体のひび割れから赤茶色の錆び汁が流れ出てきますが、できれば錆び汁がでる前に早期発見したいものです。



アルカリ骨材反応のひび割れの特徴としては、コンクリートのクラックが亀甲状ではなく、縦軸方向に沿って起こることが多いということです。


また、通常のコンクリートの収縮率に比べ、アルカリ骨材反応の収縮率の方が大きいため、アルカリ骨材反応のひび割れ幅が大きく、割れ目に段差を生じることがあります。

また、雨がかかりやすい部分にひび割れが集中している場合は要注意です。


アルカリ骨材反応に詳しい専門家が見れば、かなりの確立でアルカリ骨材反応を見分ける事ができるという事ですので、もし不安があれば早い段階での検査をお薦めします。

アルカリ骨材反応(1)

  皆さん、アルカリ骨材反応という言葉をご存知でしょうか?



これは、コンクリートの癌と恐れられているもので、コンクリートを構成する砕石(骨材)に含まれるケイ素が、セメントのアルカリ成分と反応して、部分的に膨張やひび割れなどの劣化を起こす現象です。


阪神大震災で大破した阪神高速道路の橋脚などで問題になったもので、西日本を中心にしたマンションなどでも発生が報告されています。



高速道路

  


さて、このアルカリ骨材反応のメカニズムですが、鉄筋コンクリート造は鉄筋の周りをコンクリートでコーティングすることで、構造物に強度を持たせます。

 

鉄筋は鉄ですから、大気にさらされると当然錆びますが、コンクリートによって大気から遮断されることにより、錆びから守られ、強度を保つことができます。

 

コンクリートの材料はセメントと水、それに強度を増すために骨材と言われる砂利や砕石を混ぜて作られます。

アルカリ2  

↑色の濃い部分が骨材で、その周りがアルカリ骨材反応により膨張している。

 

この骨材がセメントのアルカリに反応して、部分的に膨張することにより、コンクリート内部にひびが発生し、そのひびが表面部分に達すると、そこから雨水などが浸透し、本来錆びるはずのない内部の鉄筋に錆びが生じ、コンクリートの強度が著しく損なわれるというものです。

 

動物の体細胞が異常増殖し、最終的に機能不全を起こす癌と同様に、コンクリートの癌と言われる所以です。

 

アルカリ骨材反応に冒された躯体は、内部の鉄筋がロボロに錆び、いわば骨抜き状態になってしまいます。

 

アルカリ1  

では、このアルカリ骨材反応がなぜ西日本を中心に広がっているのでしょうか?

これには、わが国の高度経済成長期の骨材調達政策に溯らなければなりません。

 

次回は、アルカリ骨材反応が発生するようになった原因について記載します。


オール電化

オール電化3  


 

最近すっかりお馴染みとなった「オール電化」という言葉。

そうです、鈴木京香さんと、いかにも頭の良さそうなお坊ちゃま君が出演する、ご存知のTVCMですね。最近では迫力の有る「おばあちゃま役」として、江波杏子さんを投入する力の入れようです。

 

オール電化2  

【オール電化】

キッチンや暖房や給湯などの主な住宅設備のエネルギーをすべて電気で賄うシステム。

 

オール電化にすると、もうガスや灯油は必要無いということですね。

私の子供の頃はまだ「煉炭」や「豆炭」、「湯たんぽ」で暖を取っていたものですが時代は変わったものです。しかし、「オール電化」だと停電したらお手上げですね。

 

さて、このように電力各社では「オール電化」キャンペーンを積極的に推進しているところですが、これに対し4月末に公正取引委員会が関西電力に対し、警告を行いました。

 

以下は新聞記事です。

 

関電、オール電化営業で独禁法違反の恐れ 公取委が警告

 

関西電力(大阪市)は新築マンションの建設業者らに対し、オール電化を条件に不当な営業を繰り返していたため、公正取引委員会は21日(4月)、独占禁止法違反(不公正な取引)の恐れがあるとして、同社に警告した。

 

公取委によると、関西電力は住宅のオール電化を普及させるため、02年頃から「オール電化」に協力する業者を優遇する一方で、ガスを使う業者に不利な取扱いをするようになった。

 

部屋数が20~150戸のマンションを建設する際には、通常であれば建設業者に対し、建物の中に変圧器を置くための「受電室」(車約2台分)の設置を求めるが、オール電化を採用した場合には、屋外の変圧器の使用を認めていた。

業者は販売する部屋の面積を確保したいため、「受電室」の設置を嫌がるが、オール電化に協力したことで、受電室の設置を免除されたマンションは04年10月までの1年間で約500棟あった。ガスを併用する業者には受電室に設置を求めたという。

また、戸建て開発業者が景観の向上を理由に、電線を地下に埋め込みたいと希望した場合にも、要望に応じる条件としてオール電化への協力を求めていた。戸建て開発は、大阪府堺市や兵庫県芦屋市などで十数か所にのぼったという。

 関西電力はこうした取扱いを社内のマニュアルで定めており、公取委はマニュアルを見直すように指導した。

関西電力は「警告を真摯に受け止める。必要な社内ルールの見直しを行い、従業員に周知徹底し、公平かつ公正な取扱いに努めたい」とコメントした。

   

公正取引委員会(公取委)は、世の中の不公正な取引きを排除するための機関で、主に独禁法による取り締まりを行います。独禁法は正しくは「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という長ったらしい名前の法律なので、六法で調べようと思われた方はご注意ください。

 


さて、この件で注目したいのは、オール電化を採用したマンションには、

「受電室」の設置を免除した  という点です。


マンションの中で居室などの専有部分以外を共用部分と言い、区分所有者の共有財産です。

この受電室も当然共有財産であり、管理組合としては受電に必要な変圧器の設置のため「やむを得ず」電力会社に「受電室」を提供しているわけです。しかも、この借室契約は無償ですから、ただで部屋を貸していることになります。


もし、この「受電室」が必要なければ、このスペースを事務室や管理員室、駐輪場や倉庫など有効利用ができます。

管理組合としては受電のために必要だと思うからこそ、無償の借室という不利益な契約を結んでいるわけて、オール電化を採用したマンションにのみ借室を免除するというのは、非常に不公正な取引であると言わざるを得ません。


以前、ある管理組合が過分に広い受電室を縮小するように電力会社に求めましたが、交渉は難航したようです。


皆さんも一度、普段あまり見る機会のない「受電室」を確認してみてください。

 





個人情報保護法(9)

リビング  

連載も9回をかぞえた個人情報保護法ですが、今回が最終回です。

 

さて、すでに説明してきましたように、この法律の目的は、プライバシーを含む個人の権利利益の保護にあります。

プライバシーの権利は


「そっとしておいてもらう権利」とか「ひとりでいさせてもらう権利」


といわれてきましたが、コンピュータ・データベース等の情報化の親展に伴って、


「私生活をみだりに公開されない権利」


と言うような、どちらかと言うと他人から自分を隠すという消極的な側面だけではなく、自分をどのように表現するかについての選択権を自分で持つことがプライバシーの権利である、つまり


自己情報コントロール権」


という積極的側面が顕在化してきました。

学説もこの概念を認める方向に変化しています。

では、個人情報とプライバシーとはどう違うのかということですが、個人情報は前述したとおり氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを言うので、個人の識別等に重点が置かれますし、情報の種類によって区別していません。

つまり、公知情報かどうか、センシィティブ(鋭敏な)情報か否かを問わないのです。

これに対しプライバシーは、憲法13条を根拠とする一種の人格権と考えられていますし、プライバシーの権利をどうとらえるかによって、その内容も多義的になります。

プライバシーを私生活をみだりに公開されない権利ととらえれば、特定の個人を識別することさえできればセンシィティブ情報か否かを問わない個人情報の方が広いと言うことになります。

また、プライバシーを自己情報コントロール権ととらえれば、個人情報とほぼ同じような範囲と考えられるのではないでしょうか。

また、個人情報保護法に違反した場合は、主務大臣の勧告・命令の対象になり、その命令にも違反すれば罰則が科されます。しかし、この法律違反がストレートに民事上の損害賠償に結びつくかと言うと、そうではありません。

この点、プライバシー侵害の効果は、本人から損害賠償や差止請求などということになります。

このように、個人情報とプライバシーとは、その内容・範囲が必ずしも一致するものではありませんし、法的効果も違います。したがって、個人情報保護法を遵守したからと言って、プライバシーの侵害をしていないと言うことにはならないことも、記憶しておく必要があります。


個人情報保護法では個人データが5000件未満の事業者は適用除外となりますので、一般的なマンション管理組合は同法の対象にはならないと思われますが、立法趣旨を尊重し、あくまで個人情報保護法に則した対応を取ることを前提に記載しております。


参考:「マンション管理センター通信 3月号」









個人情報保護法(8)

           モリゾー


最長10連休と言われたゴールデンウイークも終わり、皆さんもやっといつものペースに戻った頃でしょうか?


愛知県では35年ぶりの万博が開催され、多くの方が足を運びました。私も愛・地球博に行きましたが、「冷凍マンモス」には非常に感動しました。


さて、個人情報保護法の連載途中でしたが、ペット訴訟の判決を報告したり、GWに入ったりで随分と間があいてしまいましたが、個人情報保護法は今回を含め、あと2回の予定ですからどうぞお付合いください。



さて、前回は「管理組合はどのように対処すべきか」について記載しましたが、今回はさらに具体的な対策について記載します。

 

①書類のチェック

まず、管理組合で作成したり、あるいは組合員等から作成、提出された書類にはどのようなものがあるのか、改めてチェック・整理してみてください。今まで説明したような個人情報が記載された書類がかなりあるはずです。

②細則の作成

組合名簿や入居者名簿等については、それたの作成、保管、運用に関する細則を作ってください。

主な項目は、

名簿の利用目的

名簿に掲載する情報の範囲(部屋番号、住所、氏名等)

情報の取得方法

名簿の作成・更新

名簿の管理・保管

閲覧請求があった場合の方法や閲覧を認める範囲

 

また、防犯カメラを設置している管理組合では、その設置目的のほか、そのような場合に映像の閲覧ができるのかを定め、閲覧の際の立会人の定めと、その者の守秘義務、映像の貸与、映像の保存とその取扱い等について定めておくことが必要です。

以上のように、組織的・制度的に、安全管理措置を講じなければなりません。

 

③保管方法の確認

個人情報が記載された書類等の保管については、理事会でその管理方法を早急に決めて、誰でもが簡単に取り出したり、見たりすることができないよう、あるいは盗難の被害などにあわないよう、鍵のかかる場所に保管するなどして、物理的な面での安全で適正な管理に努めなければなりません。これらの書類を取扱うことができる者の範囲も決めておきましょう。

 

④教育・訓練

管理組合自身が管理員を雇用している場合は、その管理員に対し、個人情報の漏洩、滅失等がないよう、教育や訓練等の人的な面での安全管理を行うことも必要です。

 

⑤ソフトウエア対策

例えば、組合員名簿等がパソコン入力されている場合には、ソフトウェア対策など技術面でも安全管理措置も必要になります。

 

⑥監督義務

管理組合が管理会社に管理を委託している場合は、前述のとおり、管理会社に対する監督義務が課せられるので、委託する業務の遂行に必要な範囲の個人情報か否かを検討し、必要な範囲の情報を提供するよう、限定することが大切ですし、管理会社として、個人情報に関しどのような取扱体制をとっているのかを確認しておかなければなりません。

⑦管理組合が個人情報が記載された書類を組合員等から提出してもらう場合は、その書類に、あらかじめ利用目的を明示しておきます。

 

個人情報保護法では個人データが5000件未満の事業者は適用除外となりますので、一般的なマンション管理組合は同法の対象にはならないと思われますが、立法趣旨を尊重し、あくまで個人情報保護法に則した対応を取ることを前提に記載しております。




ペット問題(後半)

 犬2



前回に続いて、名古屋のペット裁判の解説です。


この裁判、第一審では訴えの根拠を「占有権の侵害」としていました。しかし、この「占有権の侵害」が認められなかったため、第二審(控訴審)では訴えの根拠を「人格権の侵害」に変更していました。


この、 「占有権の侵害」とか「人格権の侵害」とはどのようなものでしょうか?


まず「占有権の侵害」ですが、占有権とは物を所持(占有)していることによって生じる権利です。マンションで例えると、部屋に住んでいる人に占有権があります。


似たような権利に所有権がありますが、所有権は物を処分(売却や贈与等)できる権利なので、持ち主にしか発生しませんが、占有権は賃借人にも発生します。


さて、占有権には「占有訴権」と言って、占有者が占有を他人に侵害された場合に、侵害の排除などを請求できる権利が見とめられています。


例えば、
(1) 自分の家の庭に台風で隣の家の樹木が倒れたら、「この樹木を撤去してくれ」

   という請求ができます。(占有保持の訴え


(2) 隣の家の石垣が崩壊しそうな時は「危ないから防護措置をしてくれ」と請求する

   ことができます。(占有保全の訴え


(3) 占有物を奪われた場合には、「その物を返せ」と請求することができます。

   (占有回収の訴え

                                          などがあります。


この「占有権の侵害」について第一審では「犬の騒音によって占有権が侵害されたとは言えないので、慰謝料は認めるが犬の飼育禁止までは認められない」といった判決でした。


そこで第二審(控訴審)では訴えの根拠を「占有権の侵害」から「人格権の侵害」へ変更しました。


では、この「人格権の侵害」とは何でしょうか?


人格権とは日本国憲法の概念です。実際に憲法13条の条文を見てみましょう。


「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」


よく「基本的人権の尊重」などと言いますが、人間は誰でも幸福を追求する権利があり、他人に迷惑をかけない範囲であれば、この基本的人権は保障されるというものです。


さて、今回のケースで考えてみると、犬を飼うということは幸福追求権により認められる権利です。
私も小さい頃、犬を飼っていました。犬に限らずペットは人の心を癒してくれる、家族の一員となります。


最近ではペットロス症候群と言って、飼っていたペットの死亡で、精神に支障をきたすケースがあるほどです。


しかし、一方でペットの鳴き声や足音で迷惑をしている人は、そのような騒音に悩まされる事無く、平穏に暮す幸福追求権があります。


         狂犬

人は誰でも動物好きとは限りません。犬に噛まれた経験のある人は、犬の鳴き声を聞いただけで恐怖感を憶える人もいるでしょう。


上階から四六時中「カツカツカツ」と犬の足音が聞こえると、落ち着いて暮して行けないという人がいても不思議ではありません。


さて、このような「幸福権の追求」が衝突した場合、どちらを優先すべきでしょうか?


前述したとおり、いくら基本的人権の尊重とは言っても、人権が絶対無制限であると言う意味ではありません。人権とは言っても「他人に迷惑を掛けない限り」という一定の歯止めがなければ、みんなが好き勝手な人権を主張して、世の中は大混乱になるでしょう。


この歯止めのことを憲法では「公共の福祉」という言葉で表現します。


さて、今回の第二審(控訴審)では原告の「人格権の侵害」を認めました。


両者の権利のどちらを保護するかといえば、マンションでは管理規約でペットの飼育が禁止されており、ペットの騒音で体調を壊したとなれば、「公共の福祉」に反するということでしょう。


犬3


マンションで暮すということは、「マナー」とは別に絶対に守らなければならない「規約」があるということを良く考えて、ペットを飼っている人や、今後どうしても飼いたい人は、飼育可能なマンションを選ぶなど、計画的な生活設計を立てる必要があります。