個人情報保護法(9) | マンション管理の部屋

個人情報保護法(9)

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連載も9回をかぞえた個人情報保護法ですが、今回が最終回です。

 

さて、すでに説明してきましたように、この法律の目的は、プライバシーを含む個人の権利利益の保護にあります。

プライバシーの権利は


「そっとしておいてもらう権利」とか「ひとりでいさせてもらう権利」


といわれてきましたが、コンピュータ・データベース等の情報化の親展に伴って、


「私生活をみだりに公開されない権利」


と言うような、どちらかと言うと他人から自分を隠すという消極的な側面だけではなく、自分をどのように表現するかについての選択権を自分で持つことがプライバシーの権利である、つまり


自己情報コントロール権」


という積極的側面が顕在化してきました。

学説もこの概念を認める方向に変化しています。

では、個人情報とプライバシーとはどう違うのかということですが、個人情報は前述したとおり氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを言うので、個人の識別等に重点が置かれますし、情報の種類によって区別していません。

つまり、公知情報かどうか、センシィティブ(鋭敏な)情報か否かを問わないのです。

これに対しプライバシーは、憲法13条を根拠とする一種の人格権と考えられていますし、プライバシーの権利をどうとらえるかによって、その内容も多義的になります。

プライバシーを私生活をみだりに公開されない権利ととらえれば、特定の個人を識別することさえできればセンシィティブ情報か否かを問わない個人情報の方が広いと言うことになります。

また、プライバシーを自己情報コントロール権ととらえれば、個人情報とほぼ同じような範囲と考えられるのではないでしょうか。

また、個人情報保護法に違反した場合は、主務大臣の勧告・命令の対象になり、その命令にも違反すれば罰則が科されます。しかし、この法律違反がストレートに民事上の損害賠償に結びつくかと言うと、そうではありません。

この点、プライバシー侵害の効果は、本人から損害賠償や差止請求などということになります。

このように、個人情報とプライバシーとは、その内容・範囲が必ずしも一致するものではありませんし、法的効果も違います。したがって、個人情報保護法を遵守したからと言って、プライバシーの侵害をしていないと言うことにはならないことも、記憶しておく必要があります。


個人情報保護法では個人データが5000件未満の事業者は適用除外となりますので、一般的なマンション管理組合は同法の対象にはならないと思われますが、立法趣旨を尊重し、あくまで個人情報保護法に則した対応を取ることを前提に記載しております。


参考:「マンション管理センター通信 3月号」