マンション管理の部屋 -8ページ目

福岡県西方沖地震ルポ(後半)

福岡地震

 

 

4月4日、東京新聞に掲載された「福岡県西方沖地震ルポ」の後半をご紹介します。

 

 

(以下新聞記事)

 

修繕金も足りずダブルローンに

 

築10年以内のマンションばかりで、修復には修繕積立金も足りない。

白石氏は「住宅金融公庫の災害復興住宅融資を借りるしかない」と話す。

同融資では1戸当たり150万円で戸数分出るが、各戸の負債増になる。

「今後30年の長期間、ダブルローンになる人も多い」(杉本氏)。

 

白石氏は「不足分は銀行から借りる。管理費などに上乗せして、返済してもらうしかない。

一瞬で1戸あたり1000万円の被害を受けた」と悲壮感を漂わせる。

住民の財産的被害は大きかったが、「今回のような被害を防ぐ耐震技術は戦前すでに完成していた」(西沢氏)という。

「1923年の関東大震災(M7.9)後の研究で、日本独自で世界最高水準の鉄筋コンクリート(

RC)造の耐震技術ができあがった。

現に阪神大震災(M7.9)でも、戦前に建てられた小学校や神戸教会などRC建造物は被害を受けていない。戦前の基準では、柱や梁、床を『箱』として一体に造り、今の2倍の耐震強度があった」

新耐震基準以降、被害は大幅に軽減されているが、西沢氏は「戦前に完成された技術の小出しにすぎない」と批判する。

「新耐震基準でも柱と壁が一体化していないから、まだまだ地震に弱い」と指摘。

戦前の技術を生かさない背景を「建設業界と一部の学者が一緒になって、壊れやすい建物を造り被災後の再建築で金儲けしようという考えがある」とも話し、もし事実なら大きな問題だ。

戦前に完成していた基準が大幅に変わったのは、戦中からだ。戦時規格で鋼材やセメントの節約のため、安全基準が緩められた。


「その考えが戦後に引き継がれた。戦災を受けた家屋600万棟再建のためには
仕方がない。その後、柱と梁だけのガラス張りの開放的な建築がモダニズムとしてもてはやされ、耐震性が大幅に低下した」(西沢氏)。

 

今回の被害について、九州産業大学の落合太郎教授(都市計画)は「デザイン優先のため、建物全体のバランスに無理があった可能性もある」と言う。

 

実施、被災したマンションはしゃれた造りだ。一方「隣接の無骨な造りの築30年の社宅は被害を受けていない」(杉本氏)

 

また「バブル後にコスト削減が進み、締め付けられた現場の士気低下も一因」(西沢氏)と粗悪工事の懸念も指摘。
今回被災したマンションもバブル後に完成している。

 

 

壁も大事な資産 壊れては困る

 

杉本氏は基準の見直しを求める。「今回の被害は、新耐震基準が非構造壁は壊れてもやむを得ないと考えている点に原因がある。

多額の借金をしてマンションを買った者にとって、非構造壁も壊れては困る」西沢氏は、被災住民に「耐震機能をアップさせる修繕の機会」と提案する。


「日本の建築費は、人件費が高く材料は安い。下層を中心位に耐震壁を若干

従来の建築費などより5%程度の負担増で、戦前の強度を実現できる。

大変だろうが、ご近所の底力でかんばってもらいたい。


(記事 以上)

 

2回に渡り、東京新聞の記事をご紹介しました。

 

「建設業界と一部の学者が一緒になって、壊れやすい建物を造り被災後の

再建築で金儲けしようという考えがある」という部分は、ちょっと飛躍しすぎ?とも思います。

 

戦前の建物は、階数もそれほど高くないでしょうから、壁の強度をたかめることで、ある程度の耐震力は増すと思いますが、高層マンションでは難しいでしょう。

 

免震構造としては、建物の強度を強くするのではなく、逆に基礎にゴムのダンパーを設置して柔軟性を増し、地震の揺れを吸収させる方法が主流となっています。

 


マンションが地震で大きな被害を受けた場合、戸建住宅と比べると大きなデメリットがあります。それは合意形成の困難さと敷地の持分が極めて低いということです。

 

多くの人が居住するマンションでは地震による被害を修理するにしても、区分所有者の合意形成を必要とします。収入に余裕がある人は一時金を集めてでも、早く修繕を進めようと思うでしょう。

 

しかし、「今の生活でギリギリだ」という人、年金生活なので借金などとんでもないという人もいるでしょう。

 

戸建住宅であれば自分が「修繕をしよう」「建て直そう」と自分が決断すれば、あとは資金を調達などを進めていくことで修繕や建て替えが進んで行きます。


しかし、マンションではいくら全員が修繕をしたいと思っても、全員に資金調達の目処がつかなければ、問題が解決しないというところに難しさがあります。

 

あと、敷地持分についてですが、マンションでは敷地を各区分所有者で共有していますので、区分所有者1人の土地の持分は少なく、高層マンションになればなるほど、一人あたりの持分は低くなっていきます。


ですからマンションは地震で倒壊したからといって、更地にしてしまうと一人あたりの土地の価値など微々たる物となってしまいます。


すなわち、マンションの価値の大半は、上物であるマンションの建物の価値なのです。

 

戸建住宅の場合、地震で建物が倒壊しても、更地だけを売却するという選択肢があります。が、マンションが倒壊しても自分の土地持分だけを処分することはほとんど無理です。

 

阪神大震災でダブルローンを抱えた人のドキュメンタリー番組を見たことがありますが、考え様によっては修繕や建替えまで漕ぎ着けたマンションはまだ幸せで、中には区分所有者の合意形成が進まず、塩漬け状態になっているマンションも多くあります。

 

もし賃貸住宅に住んでいるならさっさと引っ越して新しい生活をスタートさせられますが、不動産を所有するということはなんと大きなリスクを抱えることだろうと、私は大きな地震災害が起きるたびに思います。

 

増設し、壁中の鉄筋を倍増させれば、将来の被災を防げる。

福岡県西方沖地震ルポ(前半)

4月4日付の東京新聞に、福岡県西方沖地震のマンション被害についてのルポが出ていましたのでご紹介します。

 

 

(以下 新聞記事)

  

「築数年なのに・・・・・・マンション被害の嘆き」

 

福岡県西方沖地震で、震度6弱を記録した福岡市中心部では、断層付近の多数のビルが被害を受けた。

なかでも中央区今泉の隣接する4棟のマンションは、壁や廊下に亀裂が走り、玄関ドアが開閉不能となるなど被害は深刻だ。

補修するにも、地震保険が下りる可能性は低いという。

「新耐震基準」を満たしているはずの建物被害に、住民からは疑問の声が上がっている。

「地震で玄関ドアが開かなくなった。外壁はぼろぼろ。ローンが3000万円以上ある。修繕費も借金になって生きていけるかどうか」

福岡市中央区今泉2丁目の築4年のAマンションの女性住民(42)は、外壁にできた複数の「X」形の亀裂を見上げながら嘆いた。

損傷が大きいマンション4棟は道路沿いに南北に並ぶ。

いずれも地上10階以上の中層で、完工後4-7年の比較的新しい建物ばかりだ。

都心部の被害は、今泉や大名、天神地区など警固断層の東側に集中する。

Bマンション管理組合の白石信吾理事長は「半数以上の戸の玄関ドアが開かなくなった。

壁が崩れ隣の部屋が見えた個所もある」と話した。

14階建ての同マンションの中層階以下のほとんどの玄関ドアは変形し閉まらない状態。外廊下の外壁は崩れたままだ。

「実家に避難していて、荷物を取りに来たんだけど出入りは窓から。被災時も玄関ドアが開かず、ベランダの避難はしごで逃げた。渡り廊下にも10センチ以上の隙間ができていて危ない」とDマンションの女性住民。

静岡県から駆けつけた女性は「Cマンションに姉夫婦がいて、Bマンションには母親が住む。どちらも悲惨な状態」と話す。

「共用部分に損害  中層階以下集中」

各棟とも、専有部分の被害は軽微で、廊下の壁など共用部分の被害が大きい。

中層階以下に破損が集中しているのも共通点だ。

1978年の宮城県沖地震を機に、コンクリート強度などを厳しくした「新耐震基準(81年の改正建築基準法で導入)を満たしている建物の被害で、疑問の声が上がる。

前出のAマンションの女性は「耐震構造なのに、なんでこんなに壊れるんですか」と憤る。

しかし、新耐震基準は、壁面の破損などを織り込んだものだ。

阪神大震災で被災マンションの修復に尽力した京都大学の西沢英和講師(建築構造学)は「多くのマンションの構造は柱や梁を頑丈に作ってあるが、壁は鉄筋が少ない非構造壁で、ある程度以上の地震に対して衝撃を吸収して壊れるように設計されている。車で言えばバンパーの役割」と解説。

「壁面の破損で損害は出ても、柱と梁が破損しないことで人命を守る設計。今回の地震でも、その目的は達したといえる」

だが、白石氏は「ドアが開かず閉じ込められた人も大勢いる。火災が起きていれば、死者が出た可能性もある。人命を守る基準と言えるのか」と憤る。

NPO法人「福岡マンション管理組合連合会」の杉本典夫理事長は「地盤が弱い地域で、新耐震基準を満たしていても、地震の負荷に耐えられない壁が多かったのではないか」と分析する。

一方、修復のための資金確保も難しい。杉本氏は「地震被害を想定していなかった福岡県内のマンションの8割は、管理組合が地震保険に入っていない。

今回被害が大きかった共用部分の修復には、個人の地震保険では無意味で、マンション全体の加入が必要だった」と嘆く。

さらに、地震保険は新耐震基準に準拠した形で「柱と梁、その接合部」の主要構造部に被害が出なければ保険金は下りない。「保険金が支払われるマンションがあるか疑問」と杉本氏。

実際、前出のDマンションの女性は「管理組合で4億8000万円の地震保険に入っていたが、保険金は下りないと聞いた」と話した。

 

(以下、次回)

 

 

 

 

週刊ダイヤモンド パート2

 

パート2です。                                         ダイヤモンド

 

引き続き週刊ダイヤモンドの記事をご紹介しましょう。


前回の管理会社ランキングは「定量的な評価である」ということから、記事の後半では

インターネットによる聞き取り調査の結果が紹介されいます。

 

調査の依頼先はインフォシーク。同社の約40万人の会員のうち、1都3県(東京、埼玉、

千葉、神奈川)で、現在マンション管理組合の理事長もしくは理事をしている234人を対

象にしています。


1組合平均50戸とすると1万1700戸の住民の意見といえます。

 

 この調査において回答役員数が10名未満であった管理会社を除いた7社の集計結果が

掲載されています。

 

管理会社名は以下のとおり


大京管理(52名)

東急コミュニティー(32名)

日本ハウジング(29名)

コスモスライフ(26名)

長谷工コミュニティ(26名)

住友不動産建物サービス(17名)

三井不動産住宅サービス(13名)

※( )内は回答した理事の人数

 

以上の7社。

 

いづれも、管理戸数が10万件を超す管理会社です。

 

主な質問は8項目で以下のとおり。


Q1 管理会社は依頼事項を適切かつ迅速に処理しているか
Q2 管理会社の担当者は信頼できるか
Q3 管理会社の担当者は理事会に毎回出席するか
Q4 管理会社の担当者の変更は年1回以上あるか
Q5 年度決算報告は満了後2ヶ月以内に行われているか
Q6 清掃状態には満足しているか
Q7 管理委託業務の重要事項説明書は必ず配布されているか
Q8 居住者の問い合わせに管理会社は適切に対応しているか

 

以上の問いに「はい」「いいえ」で回答してもらい、そのパーセンテージを表示している。

 

例えば、Q1では当然「はい」と答えた率が高いほど評価が高いということになる。


表が掲載できないので説明が難しいが、全体の集計結果を見ると、長谷工コミュニティが

回答者より高い評価を受けており、内3項目においては「良い」と評価した理事の割合が

7社中トップであった。(Q1 88.5%,Q2 92.3%,Q5 84.6%)

 

また、東急コミュニティーも2項目(Q3 96.9%、Q4 81.3%)でトップの評価を受けている。

  

一方、7社中のワースト評価項目が一番多いのが日本ハウジングで4項目(Q1 27.6%、Q2 27.6%、

Q3 20.7%、Q7 20.7%)。


日本ハウジングは独立系の管理会社で、2002年度から2003年度の管理戸数の増加率でトップ

(前年比 19,508戸の増)を獲得。


この増戸数のうち、7割がリプレース(管理会社の変更)物件と言うこと。
管理委託費のコストダウンを図りたい管理会社にアプローチをかけ、安い管理委託費を武器に他社

のシェアを積極的に奪ってきたようです。

 

そのため、急激な管理戸数の増加にフロントマンの育成が間に合わないことが、管理組合側の不満

を呼んでいると分析している。


現在では管理組合もかなり積極的にマンション管理に取り組むようになり、管理会社のリプレースも

決して珍しいことではないですが、費用削減だけを目的とした安易なリプレースは考え物でしょう。

 

なお私が独自に、この調査で「良い」と評価されたパーセンテージの平均値でランキングをした結果、

要するにまんべんなく良い会社の1位は三井不動産住宅サービス


以下、コスモスライフ、長谷工コミュニティ、大京管理、東急コミュニティー、住友不動産建物サービス、

ワーストは日本ハウジングという結果でした。

 

アンケートの最後にフリーアンサーとして、自由意見を記載する欄を設け、結果を集計したところ、

委託管理費の削減交渉が進んでいるためか、管理組合の不満は『対応が遅い』、『管理会社の

担当者がいい加減』といったところに集中したようです。

 

 

週刊ダイヤモンド①

ダイヤモンド

 

皆さんこんにちは。


アメブロのリニューアルに伴いましてジャンルを「NPO・ボランティア」から、この度新設されました「住まい・暮し」に移転いたしますので、今後ともよろしくお願いします。

 

さて、先週の『週刊ダイヤモンド』誌でマンションの格付け特集というものが組まれました。


記事の内容は「いま買える物件」として東京品川の湾岸エリアで大量供給されたマンションの現状や首都圏の新築物件格付け、優良中古マンションなどの記事と、管理会社104社ランキング、住民アンケート&現地調査といったものです。

 

週刊ダイヤモンドは「○○ベストランキング」というのが得意技で「危ないゼネコンランキング」とか「銀行の安全度ランキング」などを頻繁に特集しています。


もっともワーストで紹介された会社の従業員からすると、まったく「大きなお世話」というところでしょうが。

 

さて、今回は主な管理会社104社をランク付けしているものです。
評価項目として


① 管理戸数(15点満点)
② 契約上の未収金への対応期間(15点満点)
③ 管理費などの未収戸数率(15点満点)
④ 建築士や建築施工管理技士などの有資格者数(15点満点)
⑤ 管理業務主任者数(15点満点)
⑥ 自社運営の研修施設(5点満点)
⑦ 自社運営による緊急センター(5点満点)
⑧ 無料のお客様相談窓口(5点満点)
⑨ ISOの認証取得(10点満点)


以上の9項目、合計100点満点で評価をし、ランキング表にしてあります。

 

表には「ベストランキング」となっていますが、これはかならずも上位の管理会社が優れていて、下位の管理会社が劣っているというものではありません。

 

たとえば評価項目には「管理委託費用」が加味されていませんから、上位の会社であっても管理委託費が高く、組合員からすると「割高感」を感じていると言ったケースもあるでしょう。


一方、ランクが下位の会社で、会社規模や管理戸数が少なくても、非常に丁寧な管理を行っている会社もあるはずです。

 

さて、記事に記載されている全ての会社をご紹介することはできませんので、ポイントをお話しして行きます。

 

まず、ベストランキングの上位会社をご紹介します。


1位は東急コミュニティー長谷工コミュニティの2社が堂々の1位(同点)です。


両社とも100点満点でした。おめでとうございます。

東急コミュニティーは言わずと知れた東急グループのマンション管理会社です。正確には東急不動産の子会社です。


実はあまり知られていませんが、東急ハンズも東急不動産の子会社です。
まったく親孝行な子会社たちですね。

 

一方長谷工コミュニティはマンション建設で業界トップの長谷工コーポレーションの子会社です。長谷工コーポレーションのホームページには、週刊ダイヤモンドで長谷工コミュニティーが1位を取った事を、IR情報として掲載していました。

 

それではここで、トップ10までをご紹介しておきます。


3位  大京管理(96点)
4位  コスモスライフ(93点)
4位  伊藤忠アーバンコミュニティ(93点)
4位  日本管財(93点)
7位  野村リビングザポート(91点)
7位  穴吹コミュニティ(91点)
7位  合人社計画研究所(91点)
10位  三井不動産住宅サービス(88点)
10位 三井不動産住宅サービス関西(88点)
10位 三菱地所コミュニティーサービス(88点)
10位 総合ハウジングサービス(88点)

1位からコスモスライフまでの4社は管理戸数の評価で満点の15点を獲得していますが、いずれも親会社に不動産分譲会社をもっているため、管理戸数については非常に有利です。

 

もっとも管理戸数や研修施設、ISOの認証などは、会社規模による部分が多いので、必ずしも高得点企業が優良な管理会社であるとは言えないと思いますが、管理会社は薄利事業でありますから、ある程度の管理戸数を有するということは、経営の安定化には寄与していると言えるでしょう。

 

私はこのランク表の中で最も注目する点は、 ③の未収戸数率です。
これは管理費などの未収戸数率(3ヶ月以上)を
2%未満………………15点
2%以上3%未満……13点
3%以上4%未満……10点
4%以上………………8点
と数値化したものです。

 

さすがに上位60位くらいまでの管理会社は15点を獲得しており、下位に行くほど点数が悪くなっていきます。70位以下では4社が「8点」です。


未収は全て管理会社の責任とは言えませんが、やはり未収問題というものはマンション管理の中で最も重要な要素の一つなので、管理会社においても積極的な対応が望まれるところでしょう

 

さて、以上のランキングはあくまで定量的な評価であるため、管理組合の役員を対象にインターネットによる調査も実施しています。


これはかなり面白い結果がでていますので、次回ご報告したいと思います。

積立型の火災保険


昨日の日経新聞朝刊に積立型の火災保険についての記事が出ていました。

4月1日のペイオフ全面解禁に向けての新商品です。

(以下 新聞記事)

火災保険に積み立て型

三井住友海上 ペイオフに対応

三井住友海上火災保険は4月のペイオフ全面解禁に合わせ、

マンションの管理組合向けに積み立て型の火災保険を売り出す。


多額に上る修繕積立金の運用先が分散するとみて、その受け皿

を狙う。

ペイオフ解禁をきっかけに、金融界の顧客争奪合戦が激しさを増し

ている。

主力の火災保険「ホームピカイチ」を積み立て型に組み替える。

通常は毎年掛け捨てで契約するが、新商品はまず5年分の保険料

(積立金を含む)を一括して払い、5年後に満期返戻金が戻って

くる仕組み。

火災保険の機能と貯蓄の機能を併せ持つのが特徴だ。

例えば東京都内の戸数200戸のマンションに12億円の保険を

かける場合、約2770万円の保険料を一括して支払っておく。


5年後に2400万円の満期返戻金が戻ってくるため、差引き

約370万円で5年分の火災保険をかける計算になる。

火災保険料の水準は、積立金部分に運用利回りが発生する分、毎年

契約し直すより実質割安になっている。


修繕積立金はマンションの規模によっては数億円を超え、全国計で

数兆円に達すると見られる。


三井住友海上は「保険と修繕積立金を一元管理できる点でも利便性

が高い」として、大都市圏を中心に売り込んでいく構えだ。



皆さん今週の金曜日は4月1日です。別に「エイプリルフール」を言って

いるのではありません。ペイオフの全面解禁です。


いくら金融システムが安定してきたからと言っても、多額の修繕積立金を

保有するマンション管理組合のには頭の痛い問題です。


さて、この積立型火災保険ですが、従来の「掛け捨て型」と比較すると

運用益の部分がありますので、割安ということになるようですが、注意が

必要な部分があります。

それは、 

『損保会社が経営破たんした場合のリスクがある』

ということです。

損害保険会社は経営破たんに備えて「損害保険契約者保護機構」という

保証機関に加入しています。

もし損害保険会社が経営破たんした場合、どうなるかと言うと

① 破たん会社を救済する保険会社が現れれば、この保険会社が業務
 を引き継ぐ。

② 「損害保険契約者保護機構」が子会社として設立する保険会社が
  業務を引き継ぐ。

③ 「損害保険契約者保護機構」自体が破たん保険会社の契約を引き
  継いで業務を行う。

という3つのパターンが予想されます。

ところが、「保護機構」と言っても保険契約全てを保証してくれるわけ

ではありません。

保護機構においては保険契約の保証の9割を保証します。

保険契約の9割というのは、例えば1億円の火災保険を掛けていて

全焼した場合、本来なら1億円の保険金が支払われるところを9割の

9000万円までは保証するというものです。

ところが、この9割の保証というのは実は『積立型等の満期返戻金』には

適用されないのです。

これらの解約や満期の返戻金は、破たん時の会社の資産状態応じてカット

されることになります。

要するにこの『積立型火災保険』は『火災保険』+『元本保証の無い投資』であり、

ペイオフの回避策ではない

と言うことを十分認識してください。

ですから、この保険に加入する場合、損保会社の経営状態を常にチェック

することが重要です。

余談ですが、以前私は生命保険を数年前に破たんした日産生命と言う会社

で掛けていました。

企業の破たんというものは本当に突然やってくるものですよ。

「損害保険契約者保護機構」について詳しくお知りになりたい方は↓まで。

http://www.sonpohogo.or.jp/

マンションの地震災害



20日に起きた九州北部での地震。

先日の新聞では「福岡市で女性一人が死亡、負傷者は400人を超し、玄界島では

170棟が全半壊した」とありました。

被害に遭われた皆さまには、心からお見舞いを申し上げます。



さて、このような大きな地震が起きるたびに思い出されるのが、1995年1月に

発生した『阪神淡路大震災』ではないでしょうか。



このブログのプロフィールにもありますように、当時私の両親は神戸の東灘区という

ところのマンションに住んでいました。

マンション管理士の資格に興味を持った一つのきっかけが、この阪神淡路大震災です。

今日は、この時のことを少しお話ししたいと思います。



私の実家だったマンションは、阪神電鉄の青木(おうぎ)駅というところにあり、

場所的には皆さんも当時のニュースでご覧になったと思いますが、地震で倒壊した

高速道路から少し西に行ったあたりです。



マンションの被害としては基礎部分が壊れ、12階建ての1階と最上階で約10㎝

の傾きが生じました。


さて、この時感じたのはマンションはライフラインが止まると、生活が非常に困難に

なると言う事です。


ライフラインとは電気、水道、ガスなどの事ですが、マンションの場合、エレベーター

は当然電気を動力源としています。


5階程度ならば階段を使って生活も出来るでしょうが、それ以上の階となると非常に

負担になります。もっとも、お年寄りならば5階以下でも厳しいことでしょう。


また、水道が止まった場合飲料水の供給は給水車に頼ることになります。

毎日の生活水を給水車に頼らざるを得ない状況で、エレベーターの止まったマンション

の自室までポリタンクを運ぶということは、非常に困難なことです。


このような状況では、なるべく生活水を節約することが求められます。

この場合、特に有効なのが『風呂の残り水』です。

風呂の残り湯は飲用や炊事には使えないとしても、トイレの洗浄水や掃除用の水に使用

でき、飲料水の節約になりますから、災害時には非常に役立つので、もし夜のうちに

風呂の水を流している家庭は、是非翌日まで残しておくことをおすすめします。


マンションの場合、屋上に受水槽を設置していることが多く、受水槽への水の引き上げ

のポンプは当然電気を動力源としていますので、水道管が無事でも電気が止まると水道

が使用できなくなることがあります。


また、機械式駐車場のあるマンションではパレットの移動にも電気が必要です。

電気が復旧するまで、地下や上段に格納されている車輛は出庫が出来ません。

ただ出庫ができないだけならいいのですが、水道管の破裂や高波などでマンション

の周辺が冠水した場合、地下に格納されている車は水没してしまい、二次的な被害

が拡大することになります。


阪神淡路大震災の時も電気は比較的早く復旧しましたが、水道とガスは相当時間が

かかったと記憶しています。これは、電気が電柱、電線など空中に露出した状態で供給

されているのに比べ、水道・ガスは地中配管で供給されていることから復旧に時間が

かかるものと思われます。


このように、マンションは大きな動力を必要とする分、ライフラインが止まった場合

のダメージは予想以上のものとなります。

日頃の危機管理訓練などには、このような要素を加味した対応策が必要と思われ

ます。

まちに広がる交流の輪

日経新聞朝刊に連続で特集されている「マンション誰のもの」を紹介しています。

今日は3月18日の掲載分です。

(以下記事本文)

『地域の暮らし守る拠点に』



 これが都心マンションの行く末か、と思わせる物件が東京都豊島区にあった。

JR池袋駅から徒歩で約10分。タイル張りの瀟洒(しょうしゃ)な外観とは裏腹に

、約130戸のほぼ半数には風俗店が入居し、廊下はタバコのポイ捨てが当たり前、

ヒトの排泄物も放置され、異臭を放つ異様な空間が広がっていた。

 1999年12月。「フツーのマンションでシッポリと……」と書かれた雑誌記事

を手に、管理組合の小沢秀夫さん(63)は区役所に駆け込んだ。

 「安全、安心、安らぎの『三安』こそ不可欠」。

生活する上で、当たり前の権利が脅かされている実態を説明しながら、小沢さんは

「問題は建物内の不安にとどまらない。防犯上の悪影響は、広く周辺に及ぶ」と訴えた。

 荒廃したマンションを住人自らの手で再生する。その成否を握るのが、行政や商店街、

町内会など地域一体となった運動にどう発展させていくかだ。

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 東京都品川区にある「ハイツ武蔵小山」。

長岡進理事長(73)の自慢は、毎年8月にご近所を呼んで盛大に催す花火の観賞会だ。

舞台は10階建ての屋上。ビール片手に東京湾に打ちあがる花火を楽しむのが、

ちょっとした地元の風物詩になっている。

 80年代、このマンションには暴力団事務所が入居。

いわゆる“札つき”物件と目されるようになったが、85年に住民が団結して組員を

追い出したのを機に、交流の輪をマンションの外にも広げた。


 目的は不審者の出入りを監視する目を建物という「点」から町内会など「面」に

拡大すること。その上で「ここを古里と思えるようにしたい」と願うからだ。

地元の神社の祭りや防犯パトロールで協力、顔見知りも増え「地元で一番頼りにされ

るマンションになった」と長岡さんは胸を張る。

 不動産経済研究所によると、2004年に首都圏で販売された民間マンションは

前年比2.7%増の約8万5000戸にのぼる。

ピークの2000年に比べて約1万戸少ないが「30代半ばの団塊ジュニアが今後は

物件購入の主役。あと10年は8万戸台で推移するだろう」。

福田秋生企画調査部長は、しばらく大量供給が続くと予想する。

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 マンション住民の存在感が増す中で、行政なども、ともすれば孤立しがちな居住者

と地域との新たな連携の姿を模索する。

 約30万人が住む港、中央、千代田の都心3区では、2005年までの10年間で

約4万人増加した。

港区長の武井雅昭氏は「区としても町内会への参加を積極的に呼びかけたい」と説明。

大地震がきても、マンションが一時避難場所や炊き出しの拠点となるような未来像を描く。

「小さな子供たちも、安心して育てられるようになった」――。

この5年余り、豊島区で再生運動の先頭に立ち続けた小沢さんの表情にようやく笑顔

が戻ってきた。区に相談した後は、区議会に請願書を提出。

2000年5月には同じ悩みを抱えるマンションの管理組合を連絡協議会を結成。

風俗店追放に乗り出し、警察も巡回を強化するなど側面から支えた。

2001年4月には「豊島マンション連絡協議会」を旗揚げ、15団体程度が参加した。

 今、小沢さんらが対策に奔走したマンションからは風俗店は消え、廊下には子供

たちの笑い声は響く。

 東京都によると、23区内に住むのは役387万世帯。マンションなどの集合住宅

の入居者の割合は7割近い。

荒廃の瀬戸際に立つコミュニティー再生には、住人自らの働きかけが欠かせない。

マンションは誰のものか―――。

多くの人にとって、その問いかけは他人事ではない。



日経新聞朝刊に4回に渡り特集された「マンション誰のもの」の最終回です。

皆さんどのようにお感じになられたでしょうか?

「うちのマンションに限って」と思った方、結構多いのでは?

マンションの最大のメリットは狭い土地に階数を設けることで、多くの人間の居住

空間を確保することです。

しかしその反面、入居者同士のコミュニケーションは希薄になりがちです。

高層マンションなどでは入居者数も多くなるので、「同じマンションでも顔を知らない」

ことは珍しいことではありません。


そのため「マンションに有害な第三者の侵入を招きやすい」というデメリットが生じます。

この「マンションに有害な第三者」とは泥棒や放火犯だけを指すのではなく、マンション

にとって「招かざる客」である不良入居者も含みます。

新聞の記事にある「暴力団事務所」「風俗店」や管理費の滞納者、まわりへ迷惑行為

を繰り返す者等です。

このような「招かざる客」は防犯カメラやセキュリティーシステムなどのハードを整備

しても防ぐ事はできません。

これを防げるのはマンションに対する『住民の日頃からの関心』だと思います。

「招かざる客」は病原菌と同じで抵抗力の弱いマンションを狙って侵入します。

そして、放置しておくとどんどん増殖します。



『割れガラスの法則』

学校荒廃において割れた1枚の窓ガラスを放置すると、加速度的にガラスが割られて

いずれ学校が荒廃するというものです。

マンションでも同じことが言えるのではないでしょうか。

住民・自治体危機感薄く

日経新聞朝刊に連続で特集されている「マンション誰のもの」を紹介しています。

今日は3月17日の掲載分です。

(以下記事本文)

「再生」へ制度機能せず


 築年数は同じだが、大きな差がついた二つのマンションがある。

 テレビのロケで何度も使われたエントランスホール、居住者しか利用できな

い落ち着いた雰囲気の中庭-。

東京都世田谷区にある築3年の「上北沢コートテラス」。

建物だけでも魅力的だが、もうひとつ優れた点がある。

 「将来のトラブルを今から防ぐ手立てが必要なんです」。

同マンション元理事長の古賀純明さん(61)は1枚の紙を手に話す。

そこには82ある住戸それぞれが負担する30年先までの積立金が細かく書き

込まれている。

将来必要になる修繕費を元に部屋の広さに応じて決めた金額で、管理組合の

総会で議決済みだ。

これまでのところ管理費などの滞納も一切ない。

 居住者が徐々に入れ替わるマンションでは、様々なルールを当初からはっき

りと決める必要がある。

管理水準を維持する「ソフト」が重要なのだ。

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同じく築3年の千葉市若葉区にある「千葉テラス」(仮称)。

周辺では珍しいオートロック方式のしゃれた物件だが、こちらは将来に黄色信号

がともる。

月1万5000円程度の管理費を住民の2割が滞納し、滞納総額は200万円

を超す。

支払いの督促は管理会社の業務だが、おざなりだったことで傷口が広がり、管

理組合が悪質な住民を訴えるまでにこじれた。

 両者を分けた最大の要因は住民自身のモラルにあるが、上北沢コートテラス

が管理面でも優れた物件になったことには理由がある。

東京都の「優良マンション登録表示制度」に申請したことがきっかけだ。

 都から優れた物件というお墨付きをもらうためには建物性能のほか、修繕計

画、管理組合の運営方法などソフト面の整備が必要。

古賀さんは都が示す基準を基に点検し、不備な点を次々と改善した。

 首都圏の自治体は現在、マンション管理士によるセミナーや専門家の派遣な

ど様々は支援策に乗り出している。

適切な管理体制を整備することが、老朽化の進行を抑え、トラブルを防ぐ近道

なためだ。

だが、マンション住民は思うようには動かない。

 上北沢コートテラスのように都の登録制度で認定を受けた中古物件はこの

2年間でわずか7件。

建て替えや改修の専門家を無料で派遣する渋谷区でも、今年度の利用者は前年

度よりも半減した。「笛吹けど踊らず」の状態だ。


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一方、行政もマンション対策に躊躇する。

2002年12月い施行された「マンション建て替え円滑化方」には防災や

居住環境の面では有害なマンションに対して、市区町村が建て替えを促す勧告

権が盛り込まれた。

だが、「伝家の宝刀」が抜かれたケースはまだない。

「マンションはあくまで私有財産だから」

自治体の担当者は口をそろえる。

勧告すると、借家人を立ち退かせることができる一方、代替住居をあっせん

する必要がでてくるからだ。

ある区の職員は窓口で相談があった物件を実際に見て、呆然とした。

老朽化が激しく、景観上問題があるが、住民たちに建て替えの備えはない。

「最後は市場原理に委ねるしかない」。それは言いかえると放置することと

同じだ。

管理意識が希薄な住民と及び腰の行政-。

老朽化マンションが年々増えるなか、時間だけが過ぎる。



マンションで最も困難なものの一つに『合意形成』があげられると思います。

言いかえれば、管理意識の底上げをはかり、マンション全体で「マンションの

資産価値を向上させていこう」という気風を培うことが大切でしょう。

会社では「社風」といいますが、マンションでは「マン風」とでも言うので

しょうか?

そうすることで、売買で居住者が替わっても、管理意識は「マン風」によって

引き継がれると思います。

そのためには理事長一人が頑張ってもだめで、管理の重要性を住民の腹に落

す、将来どのような不安要素があるのかを示す必要があります。

この時効果的なのが『数字を見せる』ことです。

たとえば「統計では何年後に大規模修繕が必要で、修繕費は5000万円必要だが、

積立金では2000万円足りないので、工事の時に一時金で一戸当たり50万円出すか、

毎月の修繕積立金を1年で2000円づつ値上げしなければならないがどうする?」

といった具合です。

まずは区分所有者に「考えてもらう」と言うきっかけを作ることが「マン風」

作りの第一歩ではないでしょうか?

自治意識高める教訓に

日経新聞朝刊に連続で特集されている「マンション誰のもの」を紹介しています。

今日は3月16日の掲載分です。

(以下記事本文)

<font size=4>管理巡るトラブル多発</font size=4>

「うそつき」「ひきょう者」。

東京都足立区のマンションでは2001年春から1年以上、怒号が飛び交った。

管理費に約1000万円の欠損があったことが発覚。

加えて管理会社が1億円2000万円もかかる修繕計画をぶちあげたためだ。

12階建てのこのマンションの管理は分譲された1975年以来A社が担当。

「欠損金も含め全く寝耳に水」と前理事長の加藤利助さん(69)は振りかえる。

「A社を管理者とする」。

購入時、マンション規約に盛り込まれていたこの一文が現況だった。

本来、マンションの維持管理の全責任は所有者から成る管理組合が持ち、

組合の理事長が管理者となる。

修繕、清掃などの諸作業を外部に委託。

管理会社とは“主従関係”にあるのが通例だ。

 しかし、このマンションでは管理組合は法的に存在はしたが休眠状態。

総会は1度も開かれず、決算書はドアポケットから投函されるだけ。

過去の工事の資料も無い。それでも不審に思われなかったのは「A社に

任せきっていたから」だ。

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「これからは住民全体で管理を」。

加藤さんらが立ちあがったのは同年11月。分譲から26年がたっていた。

A社との間で裁判になったが地裁、高裁と住民側が勝訴した。

訴えを担当した黒岩哲彦弁護士は「自分の財産は自分で守る、との意識が

根付いていれば問題は起きなかったはず」と指摘する。

 国土交通省の外郭団体日本住宅総合センターの2003年8月調査によれば、

マンション関連で目立つ相談が「管理員、管理会社とのトラブル」と

「役員選任、理事会運営」。

管理組合への無関心は管理会社に向ける監視の目を曇らせかねない。

「責任感がある人ほどマンション暮しは煩わしく思えるはず」。

東京都江戸川区で不動産業を営む村井清さん(50)の実感だ。

村井さんは管理組合理事長を務める「クラウンハイツ」も訴訟の舞台となった。

 かつて3階までの分譲主の建設会社の事務所だった。

会社は無断で1階に部屋を増築、屋上に広告塔も設置した。

あたかも「自社ビルに住まわせてやってる」という感覚。

判決は建設会社敗訴となった。

「分譲主の子会社が管理を担って手抜きする。結果はうやむや。

問題になる典型例だ」。

訴訟を担当し、建築士らと管理のあり方に関する勉強会も開く

榎本武光弁護士は指摘する。

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トラブルなどで管理会社を変更する動きも広がる。

横浜市神奈川区のマンションは分譲22年目の昨年5月、管理会社を替えた。

従来は注文をつけても対応が遅く「のれんに腕押しだった」と前理事長の村本重之さん(53)。

我慢を重ねた理由は「会社変更の手続きをどう進めたらいいのか分からなかった」。

マンション管理士を顧問契約して、管理組合の通帳や印鑑を管理会社が

保管していたことが判明してからの決断は速かった。

会社を替えて管理費は2割削減できた。

それ以上に「住民の意識が高まった」(本村さん)ことが収穫だった。

新会社のサービスに関する満足度アンケートを行うなど「住民が主役」の

意識は高まっている。

 ローンを組み、引っ越しを済ませれば「自分の城」の完成、とはいかないの

が分譲マンション。

神経をすり減らすトラブルを通じ、初めて住民が結束し「自治意識」が芽生える。

それからが本当のマンション生活の始まりとなる。



以前、「管理会社は身内では無い!」というテーマで書いたことがありますが、

正にこの記事のとおりです。

管理会社を信頼関係を構築することは大切ですが、管理会社に全てを任せっき

りにしても良いという事ではありません。

危険なのは区分所有者の多くが

「マンション将来についても管理会社が全責任を負う」

と勘違いしていることです。

区分所有者は毎月修繕積立金を管理会社に支払っているのだから、将来の

大規模修繕や建替えも管理会社が全責任をもってやってくれるはずと迷信していることです。

修繕積立金は“管理組合が決めた積立額”を管理会社が管理組合からの委託を

受けて集金しているだけで、管理会社が将来について何ら責任を負うもの

ではないのです。

将来の修繕費用に足りるか、足りないかは当然管理組合で判断すべきことです。

管理会社は管理組合が業務を委託している、単なる業者だということを

忘れないで下さい。

例えば自分が“お手伝いさん”を雇う事と同じです。

いくらそのお手伝いさんが優秀で信頼できるからと言っても、普通は家の

財産管理まで任せないですよね。

お手伝いさんだってその家ことに全責任を負っているわけでは無いですし。

マンション管理でこのような錯覚に陥るのは、多くの区分所有者で共有すると

いう中で、きっと大丈夫をいう“群集心理”が原因であると思います。

老朽対策、立ち上がる住民③

今日も強烈な花粉の攻撃で、朝から結膜炎です。

今日は川口で開催された埼玉県マンション管理士会のセミナーに出席してきました。

この報告はまた改めて行います。

さて、前回の続きの日経新聞記事です。

(以下記事本文)

高齢化、合意形成難しく

分譲マンションの管理に最終責任があるのはあくまでも個々の部屋を

保有する住民。

しかし、建物の老朽化に合わせて居住者も高齢化し、交流も希薄になる。

横浜市旭区にある築約30年の「希望が丘第3コーポラス」。

敷地内には3年ほど前に閉鎖したプールがそのまま残る。

かつては夏の到来とともに子供たちの歓声は響いたが、団地内で現在目立つのは

一人暮らしのお年寄りだ。


約320の住戸の四割は所有者自身が住むのではなく、賃借人が暮らす。

「いつの間にか隣同士でもよく知らない関係になった」。

一年前に輪番で同団地の自治会長になった柳司さん(48)の胸に不安がよぎる。

加えて、駐車場不足やペットの是非、積立金の管理方法など、長年の懸案が毎年、

あいまいなまま先送りされてきた。

「人任せにはしない」。

柳さんらは役員任期を従来の一年から二年に延ばし、四月には自治会とは別に

管理組合を立上げる。

まずは大規模修繕を実施し、駐車場問題にケリをつける予定だ。



さて、この記事で注目したいのは「~4月には自治会とは別に管理組合を立ち上げる。」

とありますが、前にも書きましたとおり管理組合というものは任意で「立ち上げる」

ものではなく、

『マンションとなった時点』

で何もしなくても組合は自然と構成されます。


会社などの『法人』は設立登記という手続を行うことで、初めて会社が誕生

するわけですが、管理組合は人が生まれるのと同じで、マンションが誕生した

ことで自然に設立(構成)されるのです。

ただし、構成さることと活動することは別問題です。

ですから、この記事にある「立上げ」というのは、「法律上は管理組合は存在

していたのだが、全く活動をしていなかったものを活動するようにした」という

ことなのです。

このようなケース意外に多いようです。

&#12854;マンション管理センターにも「管理組合を設立したい」という相談がよくある

ということが、マンション管理通信の記事に書いてありました。

「買い手さえいれば1万円でも手放す」

と言うのもかなりショッキングですよね。

前に見た「マンション建替え」についてのNHKのドキュメンタリー番組でも、

老朽化マンションの住民が、

「売値はいくらでもいいから、何しろこのマンションと縁を切りたい」

ということを言っていました。

「だったら、そんなマンションほっとけばいいじゃないか!」と思う人もいる

かと思いますが、マンションが現存している限り区分所有者としての権利義務

が残りますので、固定資産税や管理費負担義務も発生します。

この記事にありますが、築30年以上のマンションで建替えを検討中なのが

7.7%。全く未検討が56.5%だそうです。

続きは次回!
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不動産情報の東京カンテイによると、建て替えや大規模修繕の検討が必要になる

築30年超のマンションは現在、首都圏で32万戸ある。

4年後には50万戸を突破、十年後には百万戸を越す。

だが、野方団地のように老朽化し廃れ行く淵(ふち)で踏みとどまり、再建へ舵を

切った事例はほんの一握りだ。


東京・文京区湯島にある某マンション。壁にひびが入り、内装ははげ、エレベーター

もしばしば故障する。

管理組合は休眠状態で管理に責任を負う人はいない。

水道管の破裂、住民の退去、夜も暗いままの建物。

「買い手さえいれば1万円でも手放す」と話す区分所有者の男性は不吉な未来を

他人事のように予見する。


マンション管理支援協会(横浜市)副理事長でマンション管理士の水谷文彦さん

(45)は「マンションはいわば江戸時代の長屋。

バブル崩壊でマンションを終(つい)の住みかと考える人が増えてきた」とみる。

ただ、依然、個々の問題としてとらえられている人も多い。

問題は住民全体の意識をどう高め、再生へと結実させるかにある。

  (以降、次回)