マンション管理の部屋 -3ページ目

姉歯問題の根幹(物の値段)

小嶋

耐震偽造「公表前にヒューザー圧力」とイー社長 衆院委

日経新聞の特集記事『地域のなかで』をご紹介中ですが、今日は姉歯問題について少し考えてみたいと思います。

先月29日、耐震強度偽造問題を審議するため、衆議院国土交通委員会でヒューザーの小嶋社長、木村建設の篠塚元東京支店長、イーホームズの藤田社長などを参考人として招致し、質疑を行った。

この時の模様はニュース番組やワイドショーなどで相当取り上げられているので、ここで説明するまでもないが、被害住民不在の責任のなすりあいに終始している。

当初は「姉歯建築士」という一個人の犯罪か?と思われていたが、いまでは行政庁や政界を巻き込んだ大問題に発展してきている。

さて、このヒューザーのマンション。

色々な報道によると、専有部分が100㎡を超えるにもかかわらず、3000万円程度と破格の価格設定だったとか。

この問題は明らかに違法行為に基づくものですから、購入した方に責任があるわけではありませんが、やはり、『うまい話しには裏がある』ということでしょうか。

さて、今日は

物の値段

について考えてみましょう。


主婦の皆さんであれば、日常よく購入するもの、例えば野菜や卵の相場感というものをある程度お持ちだと思います。

たとえば卵なら1パック200円とか、キャベツなら一玉150円とか。


仮に卵が1パック30円で売っていたとします。

これが信用のおけるスーパーマーケットなどであれば客寄せのための「目玉商品だな」と理解できますが、ちょっと怪しげな店でのようなことがあると、「なんだかいわく付きでは?」と勘ぐりたくなります。

先日、最寄り駅の駅前で、軽トラックに野菜を積んで売っている行商人がいました。

リンゴが一山5個で150円・・・・。

男性だと相場をご存じないかもしれませんが、スーパーマーケットでは1個100円前後です。

あまりに安いと「最近問題になっている、農家からの盗難品では?」と疑いたくもなります。

このような疑念が起こるのは、リンゴの相場というものを知っているからです。


さて、難しいのは一般の人にはマンションや工事費などの相場感というものが無いということです。
今回も100㎡で3000万円という値段、確かに安いが相場感が乏しいので「何らかの理由で安いのだろう」という理解をしてしまう。

物の値段には必ず理由があります。

普通、物の値段は原材料費に製造費や経費を加え、さらに会社の適正な利益を乗せたものになります。

何らかの理由がなければ損をしてまで安売りをすることはありえません。

マンションの場合は土地の仕入れ価格に建設費と販売のために広告費や営業経費などを乗せ、そこに会社としての利益を乗せたものが販売価格になります。


土地購入費+建設費+経費(広告費等)+販売会社の利益
=販売価格  

です。

それぞれの費用が適正な価格であれば、最終的な販売価格も適正な価格になるはずです。
その地域のマンションの一般的な相場が4000万円であって、あるマンションが3000万円だとすると、何らかの理由があるはずです。

販売会社がわざわざ損をする訳がないので、販売会社の利益は確保されているはずです。

特に新興のデベロッパーでは、知名度や信用力が乏しいため、ある程度の経費(広告費等)は必要です。

また、マンション用地に適している土地であれば、競争が起きますから土地購入費が破格に安かったということもあまり無いでしょう、

そうなると残る費用は建設費です。
これは取引の上下関係から言っても、建設会社は一番弱い立場です。
上の図式で言うと、一般的には土地を売る地主が一番強く、次が販売会社(デベロパー)、最後が工事の請負業者である建築業者です。
業界では請負「うけおい」を、その立場の弱さから「うけまけ」と言ったりもします。

いくら弱い立場とは言え、建設業者にも値引きの限界があります。

今回の事件は、主導的立場が誰であったかは別として、人の安全という最も重要でありながら、もっとも立場の弱い部分で不正が行われたという悲惨な事件です。

マンションの管理におていは工事の発注や管理会社との契約、普段なじみのない物品の購入など、相場感のわかりづらいものの取引きが多く行われます。
管理組合における重要な事項については、単に「安いから」とか「有名な会社の製品だから」といった安易な判断ではなく、ある程度費用をかけてでも、納得できる判断結果を導くことが肝要です。

『地域のなかで』 2

姉歯問題については、問題に関与した設計事務所の代表の自殺、新たな欠陥マンションの発覚、はたまた伊藤元国土庁長官がヒューザーの小嶋社長を国交省幹部に仲介していたことが発覚したり、武部自民党幹事長が相変わらずの問題発言をしたりと、政界を巻き込んでの社会問題となっています。


管理組合としては大変気になる問題ですが、各販売会社(デベロッパー)もそろそろ調査結果が出ているころと思われますので、自分のマンションに姉歯建築事務所が関与していたかどうか確認をしてみてください。デベロッパーによってはHPで報告しているところもありますから。


では、前回に続いて日本経済新聞首都圏版の特集記事、「マンション誰のもの 第4部-地域のなかで」の第二回目をご紹介したいと思います。


◇◇--------------------------------◇◇



(以下新聞記事)

「この買い物は失敗でした」。

東京都墨田区の室田一平さん(仮名、66)はうなだれる。


元会社役員の室田さんは、1993年、荒川区にワンルームマンションを1戸購入した。

分譲された30戸がすべて投資用で、室田さんももちろん住むつもりはない。

「税金対策になりますよ」。

業者のささやきに物件をみぬまま即決し、約2,800万円を払い込んだ。


賃料収入のうち室田さんの手取り額は毎月約6万円。

管理会社側から送られてくる会計資料はゴミ箱に直行だった。

だが99年夏、玄関ポストに投げ込まれた書類をふと手にして唖然とした。


マンションの大規模改修に必要な修繕積立金が7万円余りしかない。

取りはぐれた管理費が332万円あり、業者側が修繕積立金を勝手に管理費として流用していたのだ。

それでも管理費は足りず、業者側が215万円を「立て替えた」ことになっていた。

無断流用が言語道断なのはもちろんだが、チェック機能が働かなかった管理組合側の甘さも見逃せない。

「目先の利回りに気を取られすぎた」と室田さん。


2000年、室田さんら一部の区分所有者の呼びかけで臨時総会を開いたが、”投資家”であるところの所有者は東京のほか、広島、富山、長野など10都府県に拡散している。


東京に住む室田さんが理事長を買って出て、積立金を値上げしたうえで、大規模修繕にこぎつけたが、残ったのは700万円まで下落した物件と深い徒労感だった。


◇◇--------------------------------◇◇


東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県の不動産情報を扱う東京カンテイの推計によれば、専有面積30㎡未満のワンルームで大規模な修繕が必要となる築20年超の物件は6万7千もある。

20年後には20万件を突破する見通しだ。

「ワンルームのほとんどが投資向け。住民でないと、どんな修繕が必要なのかわからず、管理会社に任せっきりになる」と同社の井出武主任研究員は指摘する。

「表札は出さない、ゴミだしのルールも守らないし、自転車は路上や歩道に無秩序に置く。割を食うのは近隣の住民だ」。

豊島区西池袋南町会の副部長、佐藤智重さん(65)は地域社会から浮き上がったワンルームマンションの問題点を訴える。

佐藤さんは同区が昨年6月、29㎡未満の住居を9戸以上つくる建築主に課す「ワンルームマンション税」を導入する際にも、抑制策の必要性を説いた。

高野之夫豊島区長は「独居老人の安否を確認する『声掛け』も含め、地域に営々と築かれてきたコミュニティーが崩壊する恐れがある」と、課税に踏み切った理由を語る。

豊島区以外にも「自転車置き場や管理人を置くこと」(板橋区)、「40㎡以上の住戸を一定以上確保すること」(中央区)など、ワンルームマンションの建築を規制している自治体は多い。

底流には、管理責任が不明確で手入れもおざなり、地域との交流も薄いワンルームマンションが「都市のスラム化の元凶になるのでは」との懸念がある。

解決策を模索する動きがないわけではない。
西池袋南町会は分譲業者に「新築マンション居住者は町会に加入すること」などを盛り込んだ町会規準を作成、協力を呼びかけることにした。

今年9月、第一号の合意にこぎつけ、建設会社側の負担で発電機などもそろえた。

災害時などは町内全体でつかえる。

「今後はワンルームマンションも防災拠点にできれば」と佐藤さん。

管理のずさんなケースが目立ち、町内会の「鬼っこ」のような扱いをされることもあるワンルームマンション。

地域とどのような形の共生が可能なのか、模索が続く。




◇◇--------------------------------◇◇

投資用ワンルームマンションの広告は新聞の広告欄でもよく目にしますね。


『投資に最適!』

『駅から徒歩3分の好立地!』

『低金利の今こそチャンス!』

銀行に預けていても利息はすずめの涙。

だったら、収益物件として手ごろなワンルームマンションに投資をするチャンスでは?とお考えの方も多いのではないでしょうか?


しかし、マンション管理の観点からすると、問題なのはワンルームマンションだけではありません。

たとえば分譲型のリゾートマンションもそうですし、賃貸比率が非常に高いマンションも同じです。


要は『区分所有者が実際に居住していないことによる合意形成不全』が問題なのです。


区分所有者が居住している普通のマンションでさえ、合意形成には大変な努力が必要なのに、区分所有者が実際に住んでいなくて、しかも全国各地に分散しているような投資目的のワンルームマンションやリゾートマンションで適正な管理ができるわけありません。



『ワンルームマンションを買う予定は無いから自分には関係ない』

と思っている方。


そうとは言い切れませんよ。

先ほど書きましたように、今皆さんがお住まいのマンションでも賃貸比率の上昇によって、同じような状況になる恐れがあるのです。


一般的に高年式のマンションほど賃貸率が上昇します。

購入後30年、40年と経つと、子供も独立し夫婦二人の生活。

部屋も余ってきて「もう少し狭くてもいいから、便利なところに移ろうか?」という人が増えてきます。


今まで住んでいたマンションはローンも払い終えているので、売却して税金をとられるより賃貸にしようと言った具合で、どんどん賃貸化が進みます。


そうなってくると役員のなり手もごく限られた人で持ちまわることになり、マンション管理も活性化しません。

このような賃貸化は将来に向けての大きな課題です。


かといって先ほどのワンルームマンションのように管理会社にまかせっきりにすると、思わぬ損害を蒙ることにもなりかねませんから、信頼できる第三者を管理者として選任するということが考えられます。


多少費用はかかりますが、マンション管理士などの専門家に管理者としての業務を委託して、委託をされた専門家が責任をもって管理会社などに管理業務を委託します。

要するに管理のために自分の代理人を選任するのです。


特に地方のリゾートマンションなどはこのような手法が有効的ではないでしょうか?

利益相反する管理会社へ丸投げするより、よっぽど安心ではないでしょうか?


            (区分所有者の代理として資産管理)

区分所有者 ⇒ マンション管理士などの専門家 ⇒ 管理会社等へ管理を委託


◇◇--------------------------------◇◇

記事の後半部分はワンルームの問題というより、マナーや道徳の問題ではないですかね?

要するにワンルーム=一人暮らし=マナーが悪い


う~ん・・・、ワンルームじゃなくても、マナーの悪い住民はいっぱいいますからね。

社会全体が他人に対して無関心になってきているという悪い影響ではないでしょうか?


それではまた。

『地域のなかで』 1


姉歯

姉歯建築士、今日聴聞会。

前回記事で書いた姉歯建築設計事務所による構造計算書偽造問題。

大変な社会問題になっており、連日ニュースやワイドショーで報じられていますね。


デベロッパーによっては無償で建替えに応じると表明しているところもあるようですが、昨日のニュースでは熊本県に本社がある木村建設という会社は、不渡りを理由に営業停止状態にあるといいます。


また、別の報道では姉歯建築士は施工会社から改ざんを強要され、会社役員にキックバック(不当な賄賂等)を要求されていたといいったものもあります。


この事件、誰が一番得をするのか?を考えると・・・・・・。

日に日に新しい事実が報じられていますので、これからも注目していきたいと思います。


◇◇--------------------------------◇◇


皆さんもマンションの購入を検討される際、販売会社はどこか?ということは、かなり大きな判断材料になったのではないでしょうか?


たとえば大手財閥系や電鉄会社系列の有名な不動産会社と、地元の中小の不動産会社。

両社を比較すると大手の会社に安心感があるように感じますが、これは


『大手企業は不正を起こさない!』


ということではありません。三菱自動車のリコール隠しなど見ると分かるように、どのような大企業でも不正が起きる可能性はあります。

ただ、問題が生じたときに大資本の会社ほど、賠償能力が期待できるということです。


問題が生じたときに、相手に責任があるということが

『認められる』ことと、実際に相手から

『賠償を受けられる』ということはまったく別問題です。


いくら責任が認められても相手が破産してしまえばされまでです。


しかし、だからといって地元の中小の会社が悪いというわけではありません。

むしろ地元密着型の営業で、厚い信頼を受け、大手企業より細やかなサービスや斬新なアイデアを提供している会社も沢山あります。

ただ、このような会社を選択する場合は、商品やサービスの見た目だけではなく、企業の理念、姿勢や財務体質などにも興味を持ち、購入者としての自己責任として選択する慎重さが求められます。




◇◇--------------------------------◇◇


さて、話しは変わりますが。日本経済新聞の首都圏版で11月8日から「マンション誰のもの 第4部-地域のなかで」という特集記事が組まれました。

この「マンション誰のもの」という特集は第4回目になり、前回は9月に「工事 潜むリスク」というテーマで連載されており、このところ頻繁に特集されています。

これは、マンション管理問題が益々社会問題化してきている結果ではないかと感じております。


それではこれから4回に渡り、この特集記事をご紹介していきますが、以前の特集記事については「新聞特集記事」というテーマの過去ログからご覧ください。


(以下新聞記事)


東京・板橋区の東武東上線、ときわ台駅前に昨年2月に完成した11階建てのマンションを巡り、地域住民と分譲会社のあつれきが続いている。


住民グループ「ときわ台の景観を守る会・がタカラレーベンなどを相手取って、景観侵害による損害賠償と7階以上の建物撤去を求める訴訟を起こしたのだ。


「地域に愛着を持つ人々が自主規制して作り上げた街なのです」と原告の一人で、守る会のメンバー、暫波都代子さん(64)は強調する。


常磐台では宅地分譲が始まった昭和初期の段階で、住宅以外への転用禁止や道路側への前庭の設置などを購入者が守る紳士協定が存在した。それ以来の長い歴史がある。


◇◇--------------------------------◇◇



景観上の被害を数値で表す指標の一つに「形態率」がある。

人物の上空に半球を描き、そこに投影される建物の影の割合を示すもので、一定の数値を超すと人々に圧迫感を与えると言われる。


この地域ではその限界が「6階建てまで」(住民側弁護士の米倉勉さん)なことが、7階以上の撤去を求める根拠になっている。


もっとも、同マンションは建築基準法は遵守しており「地元への説明会も行ってきた」(タカラレーベン)。

景観面で威圧感を感じるかどうかには個人差があることも事実だろう。


昨年12月の景観法施行は住民らに追い風をなったが、景観権は日照権や眺望権のように広く認知されてはいない。


それだけに各地でマンション建設に伴う景観紛争を相次ぐ。争いを未然に抑えようと自治体の間で建物の高さを規制する「絶対高さ制限」を導入する動きが広がっているが、規制強化は既存のマンション住人にとって足かせになる場合もある。


新宿区大京町にある築40年を超す「エンパイアコープ」の建て替え計画がゆれている。

当初、現在の7階建てを高さ100メートル超の超高層マンションに建て直す予定だったが、都から待ったがかかった。


◇◇--------------------------------◇◇


神宮外苑の銀杏並木からみると、絵画館の真後ろにマンションの上層階が突き出す形になるのが理由。

隣接する新宿御苑にマンションの影がどのようにかかるかも問題となった。


「建物には社会性があり、景観を損なうことは本意ではない」。

同マンションの住人で設計事務所所長の山内研さん(63)は計画の見直し要請を受け入れ、都や区と協議を重ねながら最終的に42.8メートルまで高さを下げる案を作成したが、まだ着工に至っていない。


大幅な計画変更に住人は戸惑い、合意形成が遅れているためだ。



新宿区は来年3月下旬をめどに、新宿駅周辺の商業地区などを除く地域に絶対高さ制限を導入する予定。同マンションがある場所の高さは最高30メートルと定められており、着工が遅れると計画は振り出しに戻りかねない。


街並みを守るためには財産権に一定の制約を設けることはやむを得ないだろう。

しかし、経済効率を優先した街づくりが続いた首都圏で、良好な景観を創造することは容易ではない。


マンションの建設急増は地域住民と施工会社などとの間で様々な対立を起こしている。一方、老朽化したマンション群の再生は周辺住民にとっても重要な課題だ。

第四部では、地域におけるマンション問題を追う。


◇◇--------------------------------◇◇


姉歯の事件の後ですから、景観や環境を理由に建物の撤去を求めるということは、ちょっとやりすぎでは?との感じも否めませんが・・・・。


確かに過去何十年も間、地域の皆さんは環境や景観の保全に努力されてきたわけですから、突然そのような配慮を無視するようなマンションの建築が始まると、『冗談じゃない!』という気持ちになることはわかります。


しかし、このような要求がどこまで認められるか?ということですね。

少なくとも建築に関しては行政の許可は得ていて、違法な行為ではないわけですし、景観問題で建築が規制されるとなると、その土地の所有者にとっては土地の価値が下がることになり、逆に、『冗談じゃない!』ということになりかねません。

たとえば法的に10階まで建築できる場所で土地の価値が1億円なのに、地域住民が反対して6階までしか認められないため、6千万円の価値になってしまった場合、土地も持ち主は4千万円損をするということです。


マンションの建て替えの場合、非常に大きな影響を受けることになります。

現在のマンションを取り壊して新築するには、解体費用や新築の工事代金等、膨大な費用を捻出するために、普通は可能な限り部屋数を増やそうとします。


しかし、このような建築制限の要求が出されると、建て替え計画自体が頓挫することになってしまいます。


景観 VS 生活


難しい課題ですね。



昔は東京のあちこちから富士山が見えたといい、その名残で「富士見」といった地名も多くあります。

いま富士山が見える場所といえば、ごく限られた場所でしょう。


冨士


民法という法律の第一条に、


①私権は、公共の福祉にしたがう。

②権利の行使および義務の履行は、信義に従って誠実にこれをしなければならない。

③権利の濫用はこれを許さない。


とあります。

皆さんは如何お感じでしょうか?

マンション強度偽造 刑事告発へ

今日の朝刊の一面に、千葉県の設計事務所が「構造計算書」を偽造し、3都府県の21棟の建物に倒壊の恐れがあるという記事が掲載されました。


(以下 11月18日日系新聞朝刊)



【一面記事】


マンションなど強度偽造
千葉県の設計事務所 3都府県の21棟
震度5強で2棟倒壊も


国土交通省は17日、千葉県の建築設計事務所が、建物の耐震性などを示す「構造計算書」を偽造していたと発表した。


書類が偽造された疑いが強いのは東京、千葉、神奈川のマンションなど21棟。

このうち少なくとも2棟は震度5強の揺れで倒壊の恐れがあると言う。


国交省は建物所有者らへの連絡を始めるとともに、設計事務所を警視庁に刑事告発する方針を決めた。


国交省によると、書類を偽造したのは千葉県市川市の姉歯建築設計事務所。

2003年2月以降に建設許可の出たマンション20棟とホテル1棟について偽造が疑われている。


所属する一級建築士の男性(48)あホテルを除く20棟について偽造を認め、「コスト削減のプレッシャーがあった」などと話している。


マンション4棟は工事中、3棟は未着工だった。

完成済みのマンションは世帯向けが7棟(236戸)、単身・小世帯向けが6棟(235戸)だった。


建築基準法などは震度6~7級の地震でも人命が危険にさらされない耐震性を求めているが、既に国交省が点検を終えた5棟のうち千葉県船橋市と川崎市のマンションは、いずれも震度5強の揺れで倒壊の恐れがあった、残り3棟は未完成だが完成すれば同様の危険があったという。




【社会面記事】


耐震偽造 刑事告発へ

千葉県の建築設計事務所による書類偽造が17日発覚した。

首都圏では7月に最大震度5強を観測した地震が起きたばかり。

「マンション2棟が震度5強で倒壊の恐れがある」との報告に緊張が走った国土交通省は、この建築設計事務所を刑事告発する方針。

突然危険性が明らかになったマンションの住民らにも「信じられない」などと衝撃と不安が広がった。


国交省、対応策急ぐ 補強や建て替え要請も

マンションや公共建築物などは建築確認申請の際、構造計算書を指定確認検査機関などに提出することが定められている。

この設計事務所は別の設計事務所から構造計算書作成を請け負い、コンピューターで計算したデータの一部を偽のデータに差し替えて提出していたと見られる。

委託した設計事務所や指定確認検査機関が適正に検査していれば書類の不備から偽造に気付いた可能性もあったが、不備を見落としていたという。

国交省は自治体と連絡協議会を設置。

既に完成済みのマンションで耐震性に大きな問題が確認されれば、建物の所有者に耐震補強や建て替えなどを求める。

退去者の受け皿として公営住宅や都市再生機構住宅の活用も検討している。

記者会見した佐藤信秋事務次官は「突然の話しで居住者の気持ちは察するに余りある。誠に遺憾で違法行為をした設計事務所に対しては毅然とした態度で臨む」と話した。

マンション住民、ぼうぜん

構造計算書の偽造による倒壊の危険性が明らかになった川崎市のマンション。

衝撃の事実を突きつけられた居住者は言葉を失った。

昨年分譲されたばかりで1戸当たりの専有面積も広い。

最寄り駅からも近く、「優良物件」のはずだった。

自営業の男性(32)は「去年の10月に買ったばかり。言葉も出ない」と悲痛な表情。

医師の男性(42)は「信じられない。地震はいつ起きるか分からない。入居者に不利にならないよう1、2ヶ月以内に対応してもらいたい」と、険しい表情で語った。

東京都墨田区のマンションの住民たちには販売会社からお知らせが。

マンションの管理組合理事長(32)は「会社でニュースを見て、大変だなと思った。帰宅して我が家だったのかと、びっくりした」と話した。

各戸ポストには販売会社から「重要事項のお知らせ」が投函され、「近日中に説明会が開催できるよう努力している」などの説明書きがあった。




今回被害に遭われたマンション居住者の皆さんの心中を察すると、本当にお気の毒としか言いようがありません。

こればっかりは「注意をしていれば避けられた」という次元ではありませんから・・・・。


事件の背景を少し補足しますと、

建物を建築する場合は、意匠設計図、構造設計図、構造計算書、設備設計図、各工事仕様書、工事費積算書、建築関係諸手続き書類など、様々な図面や書類が作成されます。

そして、ここで作成した設計図の一部を使って「建築確認申請手続き」を行ない「建築確認通知書」を受理してからでなければ、工事に着工できません。


構造計算書といのはマンションやビルなど、一定の規模の建物を建築する場合、重力や風圧、地震などの外部からの力に建造物が耐えられるために必要な鉄筋の本数や柱の太さを計算した書類で、建築士が作成するもので、行政機関か民間確認検査機関に提出をすることが義務付けられています。


今回の事件は、姉歯建築設計事務所が構造計算書を改ざんして、さらに民間の検査機関のチェックに引っかからずパスしてしまったため、耐久力の劣るビルができてしまったという、とんでもない事件です。



今年の3月には兼松日産農林という会社が、自社で製造したビスや釘の耐久力に関する大臣認定書を偽造して、表示よりも耐久力の無い釘やビスが出回り、その釘やビスを使って建築された戸建て住宅の耐震性に問題が出たという事件がありました。

このような行為は『人の命にかかわる』ことであって、どのような理由があっても決して許されるものではなく、毒入りの食べ物をばら撒くのと同じといっても過言ではありません。

建築とは関係ありませんが、三菱自動車のリコール隠しも全く同じことです。

この構造計算書の改ざんについては、今後司直の手によって実態が解明されていくことと思いますが、これらの事件をみて感じたことは、「重要なことは常に性悪説に立って考えることが必要だ」ということです。

特にマンション管理の場合は、区分所有者全員の、しかも多額の資産を管理しているわけですから、油断は禁物です。

「大手の会社だから」とか「信頼のおける人だから」ということで安心してはいけません。

いくら注意をしていても騙されるときは騙されてしまうのですから、日頃から常に危機感をもって事にあたりましょう。


大規模修繕セミナー

先日、埼玉県マンション居住支援ネットワークと埼玉県、越谷市が主催する「マンション建物診断と修繕計画」についてのセミナーに参加してきましたので、その時の内容を少しご紹介したいと思います。



【長期修繕計画】

さて、皆さんのマンションでも『長期修繕計画』をお持ちだと思います。


修繕というものは一般的に

日常修繕中規模修繕大規模修繕等

に分類され、中規模修繕は5年に一回程度、大規模修繕は12年に1回程度実施されるもので、大規模修繕になると外壁に足場を作って壁の補修を行ったり、屋上の防水をやり直すといった、かなり大掛かりな修繕となります。


平成15年度のマンション総合調査でも、98.3%の管理組合が長期修繕計画の必要性を認めており、83.0%の管理組合がすでに長期修繕計画を作成済みとされています。


マンションは決して『メンテナンスフリー』ではありませんから、日ごろからしっかりと修繕管理をする必要があります。

さて、この『長期修繕計画』ですが、皆さんのマンションでは誰が、どのようにして作成されていますか?


マンション総合調査では、


マンション管理業者が作成   59.4%

販売業者が作成          6.4%

管理組合が独自に作成     20.5%


という結果になっています。

ようするに約7割近くの管理組合が管理会社や販売業者に長期修繕計画の作成を依頼している ということです。


長期修繕計画をまったくの素人が作るのは困難なので、管理会社は販売会社へ依頼することはおかしくありませんが、問題なのは全てを『丸投げ』してしまい、管理組合でほとんど『精査をしていない』場合です。


マンションは受注生産物ですから、自動車やパソコンのように同じ規格のものを工場で大量生産するものではありません。

一棟づつ、現地で加工、製造、組立を行って作っていくものなので、立地を含めて考えると世の中に同じものが二つと無いという特性があります。


大切なことは。このようなマンションごと条件や特性を、どの程度長期修繕計画書に盛り込んでいるかどうかということです。


例えば同じ構造のマンションでも、海の近くのマンションでは潮風の影響で錆びやすいという特性があるでしょうし、国道沿いのマンションでは排気ガスの影響でコンクリートの劣化が進みやすい状況かもしれませんから、補修のサイクルや内容もマンションによって異なってきます。


管理会社や販売業者が、それぞれのマンションの特性を考慮した長期修繕計画を作り込んでくれているのであれば問題ありません。


しかし、管理会社も多くの物件を抱えていますから、長期修繕計画書は一定の雛形に沿って画一的に作成されていることも少なくないと思われます。


ですから自分たちのマンションに応じた、適切な計画を策定しておかなければ、将来思わぬところで予定外の事態に陥る危険性があります。



【修繕の内容】

一概に修繕といっても多岐に渡りますが、大きく分けて

『建築部分』『設備部分』に分けられます。


『建築部分』とは

・外壁工事

・鉄部の塗装工事

・防水工事

などをさします。


『設備部分』とは

・給排水設備工事

・電気設備工事

などで、エレベーターの改修なども含まれます。

以上がマンションの機能を回復させる修繕にあたるわけですが、その他に


『改良工事』というものがあります。

これはもともと無かった機能を追加して、マンションの付加価値を上げるたものものです。

例えば

・エントランスのオートロックの新設

・バリアフリー化

・エレベーターの新設

・駐車場の増設等です。


長い年月、マンションで快適に過ごすには、このような『改良』についても、住民とよく相談をすることが大切です。




【修繕積立金の増額】

多くの人がその必要性を理解しているマンションの『長期修繕計画』でも、いざ修繕積立金の増額や一時金の徴収という話しになると、区分所有者の間で揉め事になることがよくあります。


反対派の言い分は、

・購入してから修繕積立金を増額するのは約束違反だ。

・生活費に余裕がないので困る。

・理事会のやり方に不備があるのでは?(不信感)


などなど・・・。


私はそもそも、購入前に月額の修繕積立金の額が決定していて、その金額でマンションの修繕が保障されているという誤解を与えているという点が非常に問題だと思います。


『約束違反だ!』などと言ったところで、どこにも約束など無いのです。



マンション購入者してみれば、ローンの支払いと管理費+修繕積立金が毎月の住宅費ですから、その範囲で支払いが可能かどうかを判断していますから、途中で値上げといわれても困るといったところでしょう。


ごく単純なシュミレーションですが、


前提を戸数100戸のマンションで、毎月の修繕積立金が1戸あたり1万円とします。


このマンションで12年目と30年目に大規模修繕を行うとして工事費累計額を仮に

建築工事3億円

設備工事3億5000万円の計6億5000万円とします。


一方、新築から30年間で積み立てられる修繕積立金は、金利等を考慮しなければ

1万円×100戸×12ヶ月×30年=3億6000万円です。


実に2億9000万円の不足となります。


もし、30年間で6億5000万円を積み立てようと思ったら、

1戸あたり月額1万8千円の負担となります。


『ほとんどのマンションでは現状の積立金では不足なのです!』



しかし、マンション販売業者は修繕積立金の額をあまり高額にするとマンションの売れ行きに影響が出るので、なるべく低く抑えようとします。


私はマンションの広告にも「この修繕積立金は将来の修繕を保障するものではなく、正式な管理組合の総会において見直される必要があり、増額、一時金の徴収の可能性があるといった説明が必要ではないかと思います。



今後、管理組合の理事会に求められることは、

○将来どのような修繕や改良をしていくかという綿密な計画を立てる。

○修繕積立金を貯めるために、管理会社との管理委託費を見直し、余剰金を修繕積立金に充当する。

○もし駐車場収入等を月々の管理費予算に充当しているような場合は、駐車場収入等を修繕積立金に充当するように会計方法を変更する。

○現状の修繕積立金では将来の修繕に全く足りないということを区分所有者に十分理解させる。


上記の対応は、早ければ早いほど効果がありますので、対応の遅れている管理組合は早急に取り組むことが肝要です。


《おすすめの一冊》

廣田


マンション管理のコンサルティング業務の草分け的会社である『ソーシャル・ジャッジメントシステム』、

廣田社長著の「マンション管理はこうして見直しなさい」

マンションの管理に必要な考え方を簡潔にまとめた一冊です。


ダイヤモンド社から1400円(税別)で発売中です。








マンションみらいネット

みらいネット


「マンションみらいネット」のロゴマーク



マンションの格付けについては、新聞や雑誌で随分とりあげられていますし、このブログ

でも書いてきましたが、詳細がわかってきましたので報告いたします。


ひとつは国土交通省が現在策定準備を進めている

『マンション管理標準指針』と、


もうひとつが、国土交通省の補助事業で(財)マンション管理センターが準備を進めている

『マンション履歴システム』 (通称:マンションみらいネット)です。



まず、『マンション管理標準指針』ですが、

マンションを適切に維持管理するため、管理組合の標準的な対応等を示す指針で、

国土交通省がH17年中を目途に策定・公表予定しているものです。

おそらく年内中に公表されるものと思われます。


これまでも国土交通省は、マンションの標準的な規約としての

『マンション標準管理規約』


管理組合と管理業者間の標準的な委託契約としての

『マンション標準管理委託契約書』を策定してきています。


昔はマンション分譲業者や管理業者が独自に規約や契約書を作っていましたが、最近の

マンションではほとんどこれらの『標準~』に準拠して作成されています。

管理規約が全く「標準管理規約」と異なるマンションは、管理規約の見直しを行った方が

よいと思います。


次に『マンション履歴システム』 (通称:マンションみらいネット)ですが、これは

マンション管理の情報をマンション管理センターのコンピューターに登録して、管理情報

を管理しようというものです。


このシステムには、

【登録システム】、【閲覧システム】、【比較一覧表作成システム】からなっています。


まず、【登録システム】というのは、マンションの管理情報を登録するシステムで、この

マンションみらいネットの基礎的な部分です。


次に【閲覧システム】ですが、登録された情報をインターネットを使って閲覧できるシステム

で、非開示以外の情報については購入希望者なども閲覧できる予定です。

最後に【比較一覧表作成システム】ですが、 登録された情報の全国平均値や、先ほど

説明しました管理標準指と比較して、自分のマンションの管理レベルがどの程度なのか

検証するための一覧表を作成するシステムです。


おそらく、『格付け』といわれるものの基礎は、このデータになるものと思われます。


これらのシステムは、

○マンション管理のレベルアップ

○マンション購入希望者に対する管理情報の提供

○良好管理マンションに対する評価獲得

などを目的としています。


費用面では初年度登録費用と一年毎の更新料がかかります。

まだ、これらの費用については公表されておりませんが、私がヒアリングをした結果、

初年度登録費用が5~6万円、更新料が1~2万円程度になるようです。



また、上で説明した【登録システム】には《文書の電子化》《図面の電子化》のオプション

サービスが用意されています。

これは膨大な管理組合の書類や図面を電子化するこにより、管理をしやすくしたり、紙の

劣化による資料の毀損を防止する狙いがあります。


マンションの役割は一戸建てへの「腰掛け」から「終の棲家」へと変化してきています。

このような中では中古市場の活性化も予想され、益々正確な情報開示が求められて

いきます。


5年、10年先には「マンションみらいネット」はごく当たり前のシステムになっていて、ネット

に登録していないマンションは信用の得られない「もぐりマンション」というレッテルを貼られ

て、資産価値を大きく下げられるという状況になっているかもしれません。


皆さんのマンションでもご検討されてみてはいかがでしょうか?



工事 潜むリスク(4)

日本経済新聞で特集された「マンション誰のもの-工事 潜むリスク」をご紹介しています。

今回は第4回目、最終回です。


(以下新聞記事)

東京都杉並区の西荻窪駅近くにある「ベルフォート西荻駅前」。

2004年秋、理事会メンバーは目前にある2つの報告書を見比べてうなった。

マンション販売業者が提示した新築2年目点検の薄い報告書と、厚さ10センチ近いもう一つの書類。

後者は理事会が依頼した建築士が出したものだ。


発端はコンクリートに染み込んだ水がもれだし、タイルが白くなる「白華現象」だった。

販売業者が行った1年目点検を受けて実施した修繕はタイルの上からペンキを塗るのが主な作業だった。


◇◇◇----------------------◇◇◇


「本当に直しているのか」。

疑問を感じた理事の渡辺妙音(みょうおん)さん(39)らは、2年目点検に向け、マンション管理支援協議会(東京都中野区)の建築士を雇うことにした。


この業界が行っているアフターサービスでは、多くの場所は築2年後までなら無償で修繕してもらえる。

この機会を逃す手はない。


建築士は白華現象を徹底して調べ上げた。指摘した個所は販売業者が見つけた場所をはるかに上回る多さ。屋上の仕上げが設計図より耐久性の劣る工法になっていたことも指摘した。

渡辺さんらは建築士の報告書を手に業者と話し合い、今年9月から足場を組んで本格的な修繕が始まった。


建築士に支払った金額は約80万円。だが、その結果、無償で行ってもらう修繕はかなりの規模でなった。

「何もしなければ10数年後に自分たちの負担で直さなければならなかっただろう」と渡辺さんは話す。


日本の住宅寿命は短い。

取り壊された住宅の平均築後年数(国土交通省調べ)は31年と、米国(44年)や英国(75年)を大幅に下回る。


日本では築30年たつと「老朽化マンション」といわれるが、建物の寿命というより修繕や管理が不十分で劣化を抑えられないためだ。


地価が高騰していた時代はマンションを「仮住まい」と考える人が多く、手入れもおざなりになった。

しかし、最近の地価下落の影響もあって住民のマンション観は変わりはじめ、いかに長持ちされるかが課題となっている。


◇◇◇----------------------◇◇◇


「築後60年まで、めどがたったと建築士からお墨付きをもらった」

横浜市港北区の「グルーンコーポ大倉山」。

大規模修繕にかかわった榊枝清一さん(40)は満足そうに話す。


01年に着工した2度目の大規模修繕で、建物の維持管理にとどまらずバリアフリー化や資産価値向上という前向きの目標を掲げた。

地盤沈下の影響で問題が生じていた床下排水管の修繕が最大の眼目だったが、「修繕して前と同じにするのでは意味がない」。


段差があった建物の入り口にはスロープと手すりをつけ、敷地を狭くする要因だった変電施設は最新式の小さなものに変えた。


外壁も従来の白からクリーム色と茶色のツートンカラーに変えた。

見た目にフルさを感じさせないようにするためだ。


だが、ここまでうまくいったのは1度目の修繕後に積立金を値上げしておいたため。

「おかげで今回は積立金の範囲内で済んだが、次回もうまく行くとは限らない」と、管理組合は1戸当たり月1万円だった積立金を1万5千円に引き上げた。

10数年後に向けた準備を始めた。


本来長く住むことができるマンション。

「30年寿命説」をはね返し、「終(つい)のすみか」にできるかどうかは、住民の意識を努力にかかっている。


◇◇◇----------------------◇◇◇

バブル期以前では、マンションは永住の対象ではなく、買い換えを繰返し、最後は戸建という資産形成のセオリーに登場するアイテムだったと思いますし、実際にそのようにしている人が回りにたくさんいました。


ですから、当時マンションを買った人たちには築30年とか40年といった、マンションの老朽化に対するイメージが希薄だったと思います。


『どうせ古くなる前に売ってしまうから』

大半の人がそう思っていたのではないでしょうか?


ということは、区分所有者も建替えと言うことに対してはあまり深刻に受け止めていないわけですから、修繕積立金の額についてもシビアに考えてこなかったのです。


マンションを新築で分譲する際、はじめに管理費や修繕積立金の額を設定するのは、マンションを販売するデベロッパーです。

ここでは、本当に将来のことを考えて、必要な額を設定しているわけではなく、あくまで物件が売りやすい金額を設定します。


顧客はローンの支払額と管理費や修繕積立金の支払額から月々の支払い可能額を計算して収支計画を立てるわけですから、修繕積立金も安いに越したことはないと考えます。

例えば一般的なマンションで繕積立金が3万円とか5万円だったら、ちょと手が出ないでしょう。


転売を前提にしている時代は、それでもあまり問題にならなかったのですが、現在のようにマンションを終の棲家と考えるようになってからは、一気に老朽化という現実を突きつけられることになりました。


ですから、未だに昔の感覚を引きずっている区分所有者は管理組合の理事会が将来に不安を感じて修繕積立金の値上げ等を検討しだすと、『約束が違う!』とか、『なぜ、そんなに費用が必要なのか?』といって騒ぎ出すのです。


そもその、当初の修繕積立金などに約束も何も無いのです。


『なぜ、マンションだけこのような目に遭うのか?』

『一戸建ては修繕積立金が無いじゃないか!』


それは、マンションというものが独断で物事を決められないという宿命を背負っているからです。

一戸建てでは老朽化した建物を補修して住もうが、建替えようが資金の目途さえあれば所有者の一存で決められます。

説得する相手がいるとしてもせいぜい奥さんや子供だけでしょう。


しかし、マンションではお金に余裕があろうが、なかろが、建替えに反対しようが、賛成しようが、多数決で決まったことに従わなければなりません。だから、準備が必要なのです。



しかし、このブログでも何度も繰り返して書いていますが、マンションの建替えと一戸建ての建替えでは、難易度が天と地ほど違います。


マンションの建替えでは、建替え決議が決まったとしても、どのような建物で、仕様やグレードをどうするか?、各自の資金調達はどうするか?など、実際に建替えるには相当なパワーを必要とします。


ですから、そうそう簡単にスクラップ&ビルド(古いものは取壊し、新しいものを作っていく)というわけには行きませんので、マンションはいかにして長持ちさせるかが重要になります。


『長持ちをさせる』と言っても、単にペンキを塗り替えたり、傷んだ部品を更換すればよいという訳ではありません。

長期にわたり快適に生活するための改良が必要なのです。


例えば昔の車なら窓は手動が当たり前でした。クーラーだって付いている車のほうが珍しい時代もありました。でも、現在はどうでしょう?

クラシックカーのマニアでもない限り、このような車に乗るのはちょっと辛いですよね。


マンションも同じです。今やエレベータやオートロックは当たり前になりつつありますし、バリアフリーだってそうです。電気の容量だって昔のままでは今の電化製品の全部を賄えません。

「古いマンションだから我慢しなければ」ということではとても快適とはいえませんね。


これが、これからの『マンション管理』なのです。


===========================================================


前回の記事ではコメントを省略してしまいましたが、ひとつだけ。


大規模修繕の際の工事監理についてです。

前回「業者に設計、施工、監理を丸投げすることが多く、工事監理の別途発注は費用がかさむため普及しづらい。」といった内容の記事がありました。


たしかに自分では必要と思っていても、いざマンションの管理組合の費用からとなると、


『本当に効果があるのか?』とか『無駄な費用になるのでは?』

と言われてしまうと厳しいものがありますね。


でも、自分で的確な判断が付かないものは、他人の力を借りるべきでしょう。


先日、自動車のオイル交換にカーショップに行ったのですが、カーショップも商売ですから店員から

『エンジンフラッシングをしたほうが良いですよ』とか、

『活性剤(結構高い)も入れた方がいいです』と色々なものを勧められます。


しかし、私はあまり車に詳しくないので、それを行ったとして本当に効果があるのか?費用と効果が釣り合っているのか?がわかりません。

まあ、自分の車なので、自己責任で判断すればいいのですが、これがマンションの修繕となれば話しは別です。大切な皆さんもお金を使うわけですから。


ですから、ちょっとした修繕は別として、大規模なものになればやはり設計や工事監理は別途発注することを検討すべきでしょう。



『本当に効果があるのか?』とか『無駄な費用になるのでは?』

といった問いかけには、


『これほどのリスクを回避することができた』

と胸を張っていえるような管理を行いましょう。



【おまけ】

「かんり」には管理組合の管理と、工事監理の監理がありますが、


管理

「管轄・運営し、また処理や保守をすること。取り仕切ったり、よい状態を維持したりすること。」


一方、監理

「監督・管理すること。とりしまること。」

という意味があります。

ちなみに、業界では管理を「たけかん」(竹かんむり)、監理を「さらかん」(皿)というそうです。

ではまた。

工事 潜むリスク(3)

日本経済新聞で特集された「マンション誰のもの-工事 潜むリスク」をご紹介しています。

今回は第3回目です。



散らばる廃材、露出する鉄筋、コンクリートの不良--。

川崎市の小田急線生田駅からバスで10分ほどの丘陵地に、白いタイルで外壁を覆われたしゃれたマンションがある。

テレビのロケで使われたほどだが、外観とは裏腹に床下には異様な風景が広がる。


◇◇◇----------------------◇◇◇


田中一郎さん(仮名、52)が同マンションを購入したのは13年前。

無理をして7千万円もひねり出したが、入居早々に和室の一角で水漏れが起こり、やがて部屋にカビが生えてきた。販売業者に苦情をいうと、その都度補修をするが、一向に改善しない。


同じような不満を抱く住民とマンションの床下を調べると、明かな施工不良を発見した。

床を支える梁(はり)の高さが設計とは異なり、建物基礎の強度が弱い。

第三者に調査を頼むと、地盤改良が不十分で地盤沈下が続いていることもわかった。


販売業者も施工業者も名の知れた企業。

田中さんらの指摘に業者側は本格的な補修工事を実施したが、今も問題は続いている。


業を煮やした田中さんらは二つのグループに分かれて業者を訴えた。

しかし、売買契約の取消しを求めたグループは一審で敗訴。

梁の強度不足など一定の瑕疵は認定されたが、契約を解除できるほどの過失ではないという司法判断だった。


「マンションを買う前に自分で床下の基礎まで確認しろということか」。

田中さんは現在、設計段階から問題があったと主張し、係争中だ。


欠陥マンションは民間だけではない。

東京の八王子市では都市再生機構(旧都市基盤整備公団)が1990年前後に分譲したマンション群で鉄筋の本数不足など重大な欠陥が発覚した。


46棟の大半で手抜き工事が確認され、全体の4割を建て直す事態になったのだ。

こうした事業では工事をチェックする管理者を置く仕組みになっているが、機能していなかった。


大規模修繕でもトラブルが絶えない。

現在、修繕工事の8割は特定の業者に設計から施工、監理まですべてを委ねる丸投げ型をいわれる。

設計と施工を分離し、設計者が工事監理をする方式が望ましいが、別途費用がかかることからなかなか普及しない。


◇◇◇----------------------◇◇◇


だが、設計と施工を分ければ大丈夫というわけでもない。

大規模修繕を計画していた横浜市金沢区のマンションでは実際に着工するまでに2年以上かかった。

著名な設計事務所に設計監理を依頼したところ、1億円程度の予算額の2倍以上の工事額が提示された。


「残りは借金しなければダメなのか」。

管理組合が相談すると、「ではこれは除きましょう」と事務所の担当者は一部工事をあっさりと削った。

どこまで必要なのかという説明がなく、事前の建物調査が十分なのか疑わしかったという。


同組合は結局、違約金を払ってその事務所を解約。

別の2社に改めて工事提案を求めると、見積額は大幅に下がった。

最終的には居住者を集めて公開コンペを開き、納得するまで話し合って1社に絞った。


「業者の選定は医者選びと同じ。説明責任を果たす業者かどうかが大切」とマンション管理支援協会の水谷文彦理事は話す。最後は住民自身の目利き力も試される。



※申し訳ありませんが、時間の都合上、私のコメントは次回まとめて掲載させていただきます。



工事 潜むリスク(2)

日本経済新聞で特集された「マンション誰のもの-工事 潜むリスク」をご紹介しています。

今回は第2回目です。


(以下新聞記事)

横浜市港南区のマンションで暮らす岡山敬一さん(仮名、52)がマンションの重大な欠陥を知ったのは、築後14年たってからだった。


「バルコニーが傾いてきてますよ」。

大規模修繕工事に備え、建築事務所に建物診断を依頼すると、こう指摘された。

バルコニーの避難ハッチの位置がおかしいうえ、内部の鉄骨の配置に不備があり、強度がかなり弱いというのだ。


事実を知った岡山さんは弁護士に相談し、訴訟を検討。

しかし建設した中堅ゼネコン(総合建設会社)はすでに倒産しており、販売会社の担当者も押し黙ったまま。

10年間というアフターサービス期間は修了しており、訴えても門前払いになる可能性もあった。


加えて、マンションの住人の間で意見が割れた。

欠陥を公表すれは風評被害が想定されるためだ。

「このままの状態で大地震がきたら大変な事になる」。

販売会社との協議が平行腺をたどるなか、岡山さんらは訴訟を断念。

5千万円近い改修費を自ら負担するはめになった。


◇◇◇----------------------◇◇◇


マンション購入は人生の一大事だが、購入者に与えられる情報は極めて少ない。

新築はもちろん、中古物件でも判断材料となるのは立地や築年数、間取りなどわずかだ。

情報が少ないからこそ、風評やうわさが独り歩きしがちで、適正な資産価値形成を妨げる。


国土交通省は10月末をめどに、マンションの履歴システム「みらいネット」の試験運用を始める。

当面、9百程度の管理組合をモニターとして募集。

建物の構造、過去の修繕工事の図面、管理組合の活動状況などのデータを蓄積する。


各種情報を電子化することで管理組合の活動を支援し、来夏には第三者へのデータ公開も始める予定だ。

システムへ登録する組合が増えれば、マンション購入や資産評価の新たな材料になる。

マンションの情報管理には、思わぬ落とし穴もある。


東京の世田谷区三軒茶屋にある築30年を超すマンション。

2年前に2度の大規模修繕工事を実施した際、予想外の問題が発覚した。

全体の1割近い住人がベランダをサッシで囲い、自分の部屋と一体化していたのだ。


ベランダは個人の所有物ではなく、住民全体の共用空間である。

だが、地上から見えないことをいいことに、リフォーム時に勝手に工事をしていた。

「配水管の工事に支障が出る」と管理組合は早期に元の状態に戻すように求めたが、「自分が買った時点ですでにこの状態だった」と一部住人が反発。交渉は難航した。


◇◇◇----------------------◇◇◇


最終的にはリフォームをした住民側が折れたが、問題の背景にあるのは彼らのモラル不足だけではない。

マンションの構造変更という重要情報を内部でチェックするルールそのものが不備だったのだ。


当時、このマンションでは簡単な書類を組合に提出するだけでリフォーム工事を認めていた。

修繕工事にかかわったマンション管理士の田村日出男さんは「あらかじめ図面や仕様書の提出を義務付け、場合によっては完成後の写真の提出も求めることが必要だ」と指摘する。


マンションではそこで暮らす人全体の財産。

情報を共有し、自身があれば将来の住人に向けて公開する。

それがトラブルを抑え、マンションのあり方を変える第一歩になる。

『区分所有者間の意思統一』

この区分所有者間の意思統一というものは非常に難しい課題です。

区分所有者にはそれぞれの事情や考え方、思惑があります。

そのマンションを終(つい)の棲家として考えている人もいれば、近い将来転売しようと考えているもいるでしょう。

特に、後者の場合は「余計なことをして、マンションの売値が下がったら困る」ということになり、なかなか折り合いがつかなくなります。


以前、このブログに書いたことがありますが、私の実家のマンションが阪神大震災で罹災したときも、同じような住民間の対立があったと聞いています。


あの時、建物の損傷具合によって「全壊」、「半壊」、「一部損壊」 (記憶が確かであれば・・・・)の認定があり、被害の状況によって補償金の額が異なっていました。


とりあえず、そのまま住み続けるつもりの区分所有者は「全壊」や「半壊」の認定を受け、なるべく多くの補償金をもらって、修繕に充てたいと考えますし、すぐにでも売却して他の場所へ移転することを考えている区分所有者は、補償金の額よりも「全壊」や「半壊」の認定による、マンションの売却価格の下落を嫌います。


まあ、大災害という状況の中で「売値が下がると困る」という区分所有者の気持ちも分からないわけではありませんが、結局問題を先送りして逃げ得ということにもなりかねませんから、何が適切な判断であるかしっかりと考えるべきでしょう。



『マンションの改造』

これも困ったもんだいです。

この記事はバルコニーの改造ですから、ちょっとひどすぎるケースですが、「専有部分だから何をやっても良い」と思っている人も多くいます。

中には梁や躯体(コンクリートの構造部分)に穴を開けるという強者も居るほどですから。


各部屋のバルコニーを居室と同じように「専有部分だ」と勘違いをしている区分所有者も、意外と多いのではないかと思います。

何しろ普段は区分所有者しか立ち入らない場所ですから。

バルコニーはいざという時の避難経路にもなる部分で、あくまで専用使用権を認められているだけですから、厳密に言えば避難の邪魔になるようなプランターボックスを置くのも問題があります。

このような決まりごとを「知らなかった」と言う場合と「知っていたけどやっていた」という場合があるでしょう。

意外とそのような決まりを「知らなかった」と言うケースが多いのではないでしょうか?

このような場合、例えば管理組合から「注意」といったキツイ文書ではなく、「このような決まりを知っていますか?」といったクイズ形式で住民の関心をかい、周知させるというのも一つの手段ではないでしょうか?

いくらきめ細やかな管理規約や規則を作っても、その内容や必要性が周知されていなければ、まさに『仏作って魂いれず』です。

日頃からの管理組合の周知、意識向上活動が非常に重要ですね。

工事 潜むリスク(1)

9月14日から日本経済新聞の首都圏経済欄に『マンション誰のもの』-工事 潜むリスクという特集記事が組まれましたので4回にわたりご紹介していきます。


この日経新聞の『マンション誰のもの』という特集は、過去に何度か行われており、このブログではその度にご紹介をしています。

バックナンバーへはブログテーマの「新聞特集記事」からお入りください。


(以下新聞記事です)


「会社がもうけるためだけの工事だったんですよ」。

東京の文京区水道2丁目にあるマンションの前理事長、藤岡信勝さん(61)は憤る。

3年前の出来事だ。


マンションの管理会社から各戸の窓をサッシに取り換える総額3千万円の大規模修繕工事を提案された。

築30数年がたつだけに窓の立て付けは悪く、枠にガラスを接着する漆喰(しっくい)にもひび割れが生じていた。「ガラスが外れて落下すれば大事故になりかねない」という説明だった。


当時、理事長になったばかりの藤岡さんは了承するつもりだったが、一部住民から異論が出た。

そこで、1階の窓のひとつを犠牲にして、実際に取り付け状況を確かめることにした。


結果は明らかだった。

ガラスはしっかりと窓枠に固定されており、漆喰がひび割れた程度では外れる恐れは全くなかった。


工事を提案した管理会社は悪びれる様子もない。

不誠実な態度に不満を抱いた藤岡さんらはその後、管理会社を変更。

すると、エレベーターの補修工事でも過大な見積が発覚した。


従来の管理会社の提示額は1千万円。

しかし、新しい管理会社である管理費削減協会(堀栄真社長)の助言で、複数業者で入札し、管理組合が業者と直接契約する方式に変えたら、同じ工事が5百万円に下がった。

「悪質な会社が手数料を抜く手口がよくわかった」と藤岡さんは振りかえる。


◇◇◇----------------------◇◇◇


国土交通省が2003年度に実施した調査によると、マンション住民が積み立てる修繕用資金は1戸当たりの平均で月に9千円。

民間の分譲マンションの積立金残高は平均で5千2百万円にも上る。


建物の資産価値を維持するためには計画的な修繕が不可欠だが、油断すると、大切なお金が業者の食い物にされかねない。


「この工期では2度塗りなんて無理だよ」。

東京の世田谷区成城のマンションで暮らす石川正さん(仮名、64)は屋上や手すりなどの塗装工事で、下請業者にこう居直られた。

施工業者との契約では「2度塗り」と明記されているが、かなり無理な工期らしい。


施工業者を決めた時にも問題があった。

つきあいが長い建設会社に工事費の算定基準となる塗装面積や方法などを決めてもらい、入札したところ、最も安値だったのはその会社自身だった。


これにはカラクリがあった。

他社向けの仕様書では塗装面積がわずかに広く設定されていたのだ。

担当者は様々な言い訳をしたが、「素人にはわからないところで誤魔化されている」と石川さんは不信感を募らせる。


◇◇◇----------------------◇◇◇


「大規模修繕では第三者にセカンドオピニオンを求めることが必要だ」

と建築技術支援協会の中村正美部長は指摘する。


ベテラン技術者が集まる同協会は5月から建物診断や見積額の精査、工事監理などの支援事業を始めた。1億2千万円の工事が8千万円に下がった事例もあるという。


マンションを守るためには多額のお金がかかる。

後悔しないためには念には念を入れたチェックが必要だ。業者任せが最も危ない。


◇◇◇----------------------◇◇◇


マンションの大規模修繕でトラブルが相次いでいる。

建物の欠陥が露呈し、訴訟になるケースも少なくない。

第三部ではマンションの工事を巡るリスクを追う。


工事費用やサービスの対価の査定は非常に難しいものですね。

なぜ難しいかと言えば、ひとえに「比較がしにくい」からと言えるでしょう。


キャベツの値段なら、近所のスーパーを数件まわれば、大体の値段はわかります。

あとは産地はどこか?有機農法か?などの付加価値を判断して、自分で妥当と思う値段のものを買えばすみます。


しかし、工事やサービスとなると簡単に値段を比較するものがありません。

比較をしようとおもっても、両者の内容や品質が同等であるかどうかも分からない場合が多くあります。

要するに「値段が高いのか、安いのか見当がつかない」ことに問題があります。



自分の中に適正価格という基準を持っていない場合、一番簡単な方法は『相見積(あいみつも)り』を取る事です。

複数の業者に対し同じ条件を提示して見積りを提出させて、発注先を判断するのです。


ただし、ここで気をつけなければならないのは、一つは比較する両社の見積りが本当に同一条件によるものかどうか?ということと、同一条件ではあっても『安ければ良い』と言うものでは無いということです。


新聞記事にもありましたが、工事の内容や数量に差があって、実際は比較にならないということがあります。安いなぁと思って契約したら、実は素材がワンランク低いものを使われるといったことも良くあります。


それからいくら工事費が安くても、いい加減な業者も多くいます。

「安かろう悪かろう」では後々大変なことになります。


日本の建設会社は大手ゼネコンから一人親方の工務店まで合わせると、約50万社あると言われています。

この50万社という数は、全国の飲食店(喫茶店も含む)の数に匹敵するといわれていますので、恐ろしいほどの数です。

これだけの建設業者がいれば、中にはいい加減な業者がいてもなんら不思議ではありません。


あと、ある程度信用のおける業者であっても、トラブルになった時のことを考えて、工事の監理は施工会社と別の設計事務所などに依頼することが良いと思います。


ちなみに監理というのは、工事が設計どおりに行われているかどうかを発注者に代わってチェックする役割のことです。

一般的に工事は設計・施工・監理からななり、工事看板などに「設計・監理○○設計事務所」とかかれいるのを目にされた方もいらっしゃると思います。

まとめると、小規模の補修などは別として、ある程度の規模の工事に関しては、


①相見積りをとって大まかな適正価格を把握する。

②状況によっては第三者(建築士や技術系のマンション管理士など)に依頼して、

  見積内容のチェック、業者の評価等を依頼する。

③できるだけ工事監理は施工会社以外のところへ別途発注する。


といったことがポイントになります。


先ほど「安ければ良いというものではない」と書きましたが、マンションでは逆に「高いから安心」といった考え方をする場合もあります。

管理組合の役員さんも安い業者に頼んで、何かトラブルがあれば後々自分たちの責任問題になるので、相見積をとって最も高い業者に発注し、「安心料だ」などと言っている本末転倒なケースもよく見受けられます。


どうせ同じお金をかけるなら、値段の高い業者に根拠の無いお金を払うより、少し費用がかかっても監理者を選任することの方が、よっぽど有益です。


忙しい中での組合活動は大変でしょうが、上記のポイントにあるような合理的な判断を心がけるようにしましょう。