工事 潜むリスク(3)
日本経済新聞で特集された「マンション誰のもの-工事 潜むリスク」をご紹介しています。
今回は第3回目です。
散らばる廃材、露出する鉄筋、コンクリートの不良--。
川崎市の小田急線生田駅からバスで10分ほどの丘陵地に、白いタイルで外壁を覆われたしゃれたマンションがある。
テレビのロケで使われたほどだが、外観とは裏腹に床下には異様な風景が広がる。
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田中一郎さん(仮名、52)が同マンションを購入したのは13年前。
無理をして7千万円もひねり出したが、入居早々に和室の一角で水漏れが起こり、やがて部屋にカビが生えてきた。販売業者に苦情をいうと、その都度補修をするが、一向に改善しない。
同じような不満を抱く住民とマンションの床下を調べると、明かな施工不良を発見した。
床を支える梁(はり)の高さが設計とは異なり、建物基礎の強度が弱い。
第三者に調査を頼むと、地盤改良が不十分で地盤沈下が続いていることもわかった。
販売業者も施工業者も名の知れた企業。
田中さんらの指摘に業者側は本格的な補修工事を実施したが、今も問題は続いている。
業を煮やした田中さんらは二つのグループに分かれて業者を訴えた。
しかし、売買契約の取消しを求めたグループは一審で敗訴。
梁の強度不足など一定の瑕疵は認定されたが、契約を解除できるほどの過失ではないという司法判断だった。
「マンションを買う前に自分で床下の基礎まで確認しろということか」。
田中さんは現在、設計段階から問題があったと主張し、係争中だ。
欠陥マンションは民間だけではない。
東京の八王子市では都市再生機構(旧都市基盤整備公団)が1990年前後に分譲したマンション群で鉄筋の本数不足など重大な欠陥が発覚した。
46棟の大半で手抜き工事が確認され、全体の4割を建て直す事態になったのだ。
こうした事業では工事をチェックする管理者を置く仕組みになっているが、機能していなかった。
大規模修繕でもトラブルが絶えない。
現在、修繕工事の8割は特定の業者に設計から施工、監理まですべてを委ねる丸投げ型をいわれる。
設計と施工を分離し、設計者が工事監理をする方式が望ましいが、別途費用がかかることからなかなか普及しない。
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だが、設計と施工を分ければ大丈夫というわけでもない。
大規模修繕を計画していた横浜市金沢区のマンションでは実際に着工するまでに2年以上かかった。
著名な設計事務所に設計監理を依頼したところ、1億円程度の予算額の2倍以上の工事額が提示された。
「残りは借金しなければダメなのか」。
管理組合が相談すると、「ではこれは除きましょう」と事務所の担当者は一部工事をあっさりと削った。
どこまで必要なのかという説明がなく、事前の建物調査が十分なのか疑わしかったという。
同組合は結局、違約金を払ってその事務所を解約。
別の2社に改めて工事提案を求めると、見積額は大幅に下がった。
最終的には居住者を集めて公開コンペを開き、納得するまで話し合って1社に絞った。
「業者の選定は医者選びと同じ。説明責任を果たす業者かどうかが大切」とマンション管理支援協会の水谷文彦理事は話す。最後は住民自身の目利き力も試される。
※申し訳ありませんが、時間の都合上、私のコメントは次回まとめて掲載させていただきます。