『地域のなかで』 1 | マンション管理の部屋

『地域のなかで』 1


姉歯

姉歯建築士、今日聴聞会。

前回記事で書いた姉歯建築設計事務所による構造計算書偽造問題。

大変な社会問題になっており、連日ニュースやワイドショーで報じられていますね。


デベロッパーによっては無償で建替えに応じると表明しているところもあるようですが、昨日のニュースでは熊本県に本社がある木村建設という会社は、不渡りを理由に営業停止状態にあるといいます。


また、別の報道では姉歯建築士は施工会社から改ざんを強要され、会社役員にキックバック(不当な賄賂等)を要求されていたといいったものもあります。


この事件、誰が一番得をするのか?を考えると・・・・・・。

日に日に新しい事実が報じられていますので、これからも注目していきたいと思います。


◇◇--------------------------------◇◇


皆さんもマンションの購入を検討される際、販売会社はどこか?ということは、かなり大きな判断材料になったのではないでしょうか?


たとえば大手財閥系や電鉄会社系列の有名な不動産会社と、地元の中小の不動産会社。

両社を比較すると大手の会社に安心感があるように感じますが、これは


『大手企業は不正を起こさない!』


ということではありません。三菱自動車のリコール隠しなど見ると分かるように、どのような大企業でも不正が起きる可能性はあります。

ただ、問題が生じたときに大資本の会社ほど、賠償能力が期待できるということです。


問題が生じたときに、相手に責任があるということが

『認められる』ことと、実際に相手から

『賠償を受けられる』ということはまったく別問題です。


いくら責任が認められても相手が破産してしまえばされまでです。


しかし、だからといって地元の中小の会社が悪いというわけではありません。

むしろ地元密着型の営業で、厚い信頼を受け、大手企業より細やかなサービスや斬新なアイデアを提供している会社も沢山あります。

ただ、このような会社を選択する場合は、商品やサービスの見た目だけではなく、企業の理念、姿勢や財務体質などにも興味を持ち、購入者としての自己責任として選択する慎重さが求められます。




◇◇--------------------------------◇◇


さて、話しは変わりますが。日本経済新聞の首都圏版で11月8日から「マンション誰のもの 第4部-地域のなかで」という特集記事が組まれました。

この「マンション誰のもの」という特集は第4回目になり、前回は9月に「工事 潜むリスク」というテーマで連載されており、このところ頻繁に特集されています。

これは、マンション管理問題が益々社会問題化してきている結果ではないかと感じております。


それではこれから4回に渡り、この特集記事をご紹介していきますが、以前の特集記事については「新聞特集記事」というテーマの過去ログからご覧ください。


(以下新聞記事)


東京・板橋区の東武東上線、ときわ台駅前に昨年2月に完成した11階建てのマンションを巡り、地域住民と分譲会社のあつれきが続いている。


住民グループ「ときわ台の景観を守る会・がタカラレーベンなどを相手取って、景観侵害による損害賠償と7階以上の建物撤去を求める訴訟を起こしたのだ。


「地域に愛着を持つ人々が自主規制して作り上げた街なのです」と原告の一人で、守る会のメンバー、暫波都代子さん(64)は強調する。


常磐台では宅地分譲が始まった昭和初期の段階で、住宅以外への転用禁止や道路側への前庭の設置などを購入者が守る紳士協定が存在した。それ以来の長い歴史がある。


◇◇--------------------------------◇◇



景観上の被害を数値で表す指標の一つに「形態率」がある。

人物の上空に半球を描き、そこに投影される建物の影の割合を示すもので、一定の数値を超すと人々に圧迫感を与えると言われる。


この地域ではその限界が「6階建てまで」(住民側弁護士の米倉勉さん)なことが、7階以上の撤去を求める根拠になっている。


もっとも、同マンションは建築基準法は遵守しており「地元への説明会も行ってきた」(タカラレーベン)。

景観面で威圧感を感じるかどうかには個人差があることも事実だろう。


昨年12月の景観法施行は住民らに追い風をなったが、景観権は日照権や眺望権のように広く認知されてはいない。


それだけに各地でマンション建設に伴う景観紛争を相次ぐ。争いを未然に抑えようと自治体の間で建物の高さを規制する「絶対高さ制限」を導入する動きが広がっているが、規制強化は既存のマンション住人にとって足かせになる場合もある。


新宿区大京町にある築40年を超す「エンパイアコープ」の建て替え計画がゆれている。

当初、現在の7階建てを高さ100メートル超の超高層マンションに建て直す予定だったが、都から待ったがかかった。


◇◇--------------------------------◇◇


神宮外苑の銀杏並木からみると、絵画館の真後ろにマンションの上層階が突き出す形になるのが理由。

隣接する新宿御苑にマンションの影がどのようにかかるかも問題となった。


「建物には社会性があり、景観を損なうことは本意ではない」。

同マンションの住人で設計事務所所長の山内研さん(63)は計画の見直し要請を受け入れ、都や区と協議を重ねながら最終的に42.8メートルまで高さを下げる案を作成したが、まだ着工に至っていない。


大幅な計画変更に住人は戸惑い、合意形成が遅れているためだ。



新宿区は来年3月下旬をめどに、新宿駅周辺の商業地区などを除く地域に絶対高さ制限を導入する予定。同マンションがある場所の高さは最高30メートルと定められており、着工が遅れると計画は振り出しに戻りかねない。


街並みを守るためには財産権に一定の制約を設けることはやむを得ないだろう。

しかし、経済効率を優先した街づくりが続いた首都圏で、良好な景観を創造することは容易ではない。


マンションの建設急増は地域住民と施工会社などとの間で様々な対立を起こしている。一方、老朽化したマンション群の再生は周辺住民にとっても重要な課題だ。

第四部では、地域におけるマンション問題を追う。


◇◇--------------------------------◇◇


姉歯の事件の後ですから、景観や環境を理由に建物の撤去を求めるということは、ちょっとやりすぎでは?との感じも否めませんが・・・・。


確かに過去何十年も間、地域の皆さんは環境や景観の保全に努力されてきたわけですから、突然そのような配慮を無視するようなマンションの建築が始まると、『冗談じゃない!』という気持ちになることはわかります。


しかし、このような要求がどこまで認められるか?ということですね。

少なくとも建築に関しては行政の許可は得ていて、違法な行為ではないわけですし、景観問題で建築が規制されるとなると、その土地の所有者にとっては土地の価値が下がることになり、逆に、『冗談じゃない!』ということになりかねません。

たとえば法的に10階まで建築できる場所で土地の価値が1億円なのに、地域住民が反対して6階までしか認められないため、6千万円の価値になってしまった場合、土地も持ち主は4千万円損をするということです。


マンションの建て替えの場合、非常に大きな影響を受けることになります。

現在のマンションを取り壊して新築するには、解体費用や新築の工事代金等、膨大な費用を捻出するために、普通は可能な限り部屋数を増やそうとします。


しかし、このような建築制限の要求が出されると、建て替え計画自体が頓挫することになってしまいます。


景観 VS 生活


難しい課題ですね。



昔は東京のあちこちから富士山が見えたといい、その名残で「富士見」といった地名も多くあります。

いま富士山が見える場所といえば、ごく限られた場所でしょう。


冨士


民法という法律の第一条に、


①私権は、公共の福祉にしたがう。

②権利の行使および義務の履行は、信義に従って誠実にこれをしなければならない。

③権利の濫用はこれを許さない。


とあります。

皆さんは如何お感じでしょうか?