工事 潜むリスク(2) | マンション管理の部屋

工事 潜むリスク(2)

日本経済新聞で特集された「マンション誰のもの-工事 潜むリスク」をご紹介しています。

今回は第2回目です。


(以下新聞記事)

横浜市港南区のマンションで暮らす岡山敬一さん(仮名、52)がマンションの重大な欠陥を知ったのは、築後14年たってからだった。


「バルコニーが傾いてきてますよ」。

大規模修繕工事に備え、建築事務所に建物診断を依頼すると、こう指摘された。

バルコニーの避難ハッチの位置がおかしいうえ、内部の鉄骨の配置に不備があり、強度がかなり弱いというのだ。


事実を知った岡山さんは弁護士に相談し、訴訟を検討。

しかし建設した中堅ゼネコン(総合建設会社)はすでに倒産しており、販売会社の担当者も押し黙ったまま。

10年間というアフターサービス期間は修了しており、訴えても門前払いになる可能性もあった。


加えて、マンションの住人の間で意見が割れた。

欠陥を公表すれは風評被害が想定されるためだ。

「このままの状態で大地震がきたら大変な事になる」。

販売会社との協議が平行腺をたどるなか、岡山さんらは訴訟を断念。

5千万円近い改修費を自ら負担するはめになった。


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マンション購入は人生の一大事だが、購入者に与えられる情報は極めて少ない。

新築はもちろん、中古物件でも判断材料となるのは立地や築年数、間取りなどわずかだ。

情報が少ないからこそ、風評やうわさが独り歩きしがちで、適正な資産価値形成を妨げる。


国土交通省は10月末をめどに、マンションの履歴システム「みらいネット」の試験運用を始める。

当面、9百程度の管理組合をモニターとして募集。

建物の構造、過去の修繕工事の図面、管理組合の活動状況などのデータを蓄積する。


各種情報を電子化することで管理組合の活動を支援し、来夏には第三者へのデータ公開も始める予定だ。

システムへ登録する組合が増えれば、マンション購入や資産評価の新たな材料になる。

マンションの情報管理には、思わぬ落とし穴もある。


東京の世田谷区三軒茶屋にある築30年を超すマンション。

2年前に2度の大規模修繕工事を実施した際、予想外の問題が発覚した。

全体の1割近い住人がベランダをサッシで囲い、自分の部屋と一体化していたのだ。


ベランダは個人の所有物ではなく、住民全体の共用空間である。

だが、地上から見えないことをいいことに、リフォーム時に勝手に工事をしていた。

「配水管の工事に支障が出る」と管理組合は早期に元の状態に戻すように求めたが、「自分が買った時点ですでにこの状態だった」と一部住人が反発。交渉は難航した。


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最終的にはリフォームをした住民側が折れたが、問題の背景にあるのは彼らのモラル不足だけではない。

マンションの構造変更という重要情報を内部でチェックするルールそのものが不備だったのだ。


当時、このマンションでは簡単な書類を組合に提出するだけでリフォーム工事を認めていた。

修繕工事にかかわったマンション管理士の田村日出男さんは「あらかじめ図面や仕様書の提出を義務付け、場合によっては完成後の写真の提出も求めることが必要だ」と指摘する。


マンションではそこで暮らす人全体の財産。

情報を共有し、自身があれば将来の住人に向けて公開する。

それがトラブルを抑え、マンションのあり方を変える第一歩になる。

『区分所有者間の意思統一』

この区分所有者間の意思統一というものは非常に難しい課題です。

区分所有者にはそれぞれの事情や考え方、思惑があります。

そのマンションを終(つい)の棲家として考えている人もいれば、近い将来転売しようと考えているもいるでしょう。

特に、後者の場合は「余計なことをして、マンションの売値が下がったら困る」ということになり、なかなか折り合いがつかなくなります。


以前、このブログに書いたことがありますが、私の実家のマンションが阪神大震災で罹災したときも、同じような住民間の対立があったと聞いています。


あの時、建物の損傷具合によって「全壊」、「半壊」、「一部損壊」 (記憶が確かであれば・・・・)の認定があり、被害の状況によって補償金の額が異なっていました。


とりあえず、そのまま住み続けるつもりの区分所有者は「全壊」や「半壊」の認定を受け、なるべく多くの補償金をもらって、修繕に充てたいと考えますし、すぐにでも売却して他の場所へ移転することを考えている区分所有者は、補償金の額よりも「全壊」や「半壊」の認定による、マンションの売却価格の下落を嫌います。


まあ、大災害という状況の中で「売値が下がると困る」という区分所有者の気持ちも分からないわけではありませんが、結局問題を先送りして逃げ得ということにもなりかねませんから、何が適切な判断であるかしっかりと考えるべきでしょう。



『マンションの改造』

これも困ったもんだいです。

この記事はバルコニーの改造ですから、ちょっとひどすぎるケースですが、「専有部分だから何をやっても良い」と思っている人も多くいます。

中には梁や躯体(コンクリートの構造部分)に穴を開けるという強者も居るほどですから。


各部屋のバルコニーを居室と同じように「専有部分だ」と勘違いをしている区分所有者も、意外と多いのではないかと思います。

何しろ普段は区分所有者しか立ち入らない場所ですから。

バルコニーはいざという時の避難経路にもなる部分で、あくまで専用使用権を認められているだけですから、厳密に言えば避難の邪魔になるようなプランターボックスを置くのも問題があります。

このような決まりごとを「知らなかった」と言う場合と「知っていたけどやっていた」という場合があるでしょう。

意外とそのような決まりを「知らなかった」と言うケースが多いのではないでしょうか?

このような場合、例えば管理組合から「注意」といったキツイ文書ではなく、「このような決まりを知っていますか?」といったクイズ形式で住民の関心をかい、周知させるというのも一つの手段ではないでしょうか?

いくらきめ細やかな管理規約や規則を作っても、その内容や必要性が周知されていなければ、まさに『仏作って魂いれず』です。

日頃からの管理組合の周知、意識向上活動が非常に重要ですね。