マンション強度偽造 刑事告発へ | マンション管理の部屋

マンション強度偽造 刑事告発へ

今日の朝刊の一面に、千葉県の設計事務所が「構造計算書」を偽造し、3都府県の21棟の建物に倒壊の恐れがあるという記事が掲載されました。


(以下 11月18日日系新聞朝刊)



【一面記事】


マンションなど強度偽造
千葉県の設計事務所 3都府県の21棟
震度5強で2棟倒壊も


国土交通省は17日、千葉県の建築設計事務所が、建物の耐震性などを示す「構造計算書」を偽造していたと発表した。


書類が偽造された疑いが強いのは東京、千葉、神奈川のマンションなど21棟。

このうち少なくとも2棟は震度5強の揺れで倒壊の恐れがあると言う。


国交省は建物所有者らへの連絡を始めるとともに、設計事務所を警視庁に刑事告発する方針を決めた。


国交省によると、書類を偽造したのは千葉県市川市の姉歯建築設計事務所。

2003年2月以降に建設許可の出たマンション20棟とホテル1棟について偽造が疑われている。


所属する一級建築士の男性(48)あホテルを除く20棟について偽造を認め、「コスト削減のプレッシャーがあった」などと話している。


マンション4棟は工事中、3棟は未着工だった。

完成済みのマンションは世帯向けが7棟(236戸)、単身・小世帯向けが6棟(235戸)だった。


建築基準法などは震度6~7級の地震でも人命が危険にさらされない耐震性を求めているが、既に国交省が点検を終えた5棟のうち千葉県船橋市と川崎市のマンションは、いずれも震度5強の揺れで倒壊の恐れがあった、残り3棟は未完成だが完成すれば同様の危険があったという。




【社会面記事】


耐震偽造 刑事告発へ

千葉県の建築設計事務所による書類偽造が17日発覚した。

首都圏では7月に最大震度5強を観測した地震が起きたばかり。

「マンション2棟が震度5強で倒壊の恐れがある」との報告に緊張が走った国土交通省は、この建築設計事務所を刑事告発する方針。

突然危険性が明らかになったマンションの住民らにも「信じられない」などと衝撃と不安が広がった。


国交省、対応策急ぐ 補強や建て替え要請も

マンションや公共建築物などは建築確認申請の際、構造計算書を指定確認検査機関などに提出することが定められている。

この設計事務所は別の設計事務所から構造計算書作成を請け負い、コンピューターで計算したデータの一部を偽のデータに差し替えて提出していたと見られる。

委託した設計事務所や指定確認検査機関が適正に検査していれば書類の不備から偽造に気付いた可能性もあったが、不備を見落としていたという。

国交省は自治体と連絡協議会を設置。

既に完成済みのマンションで耐震性に大きな問題が確認されれば、建物の所有者に耐震補強や建て替えなどを求める。

退去者の受け皿として公営住宅や都市再生機構住宅の活用も検討している。

記者会見した佐藤信秋事務次官は「突然の話しで居住者の気持ちは察するに余りある。誠に遺憾で違法行為をした設計事務所に対しては毅然とした態度で臨む」と話した。

マンション住民、ぼうぜん

構造計算書の偽造による倒壊の危険性が明らかになった川崎市のマンション。

衝撃の事実を突きつけられた居住者は言葉を失った。

昨年分譲されたばかりで1戸当たりの専有面積も広い。

最寄り駅からも近く、「優良物件」のはずだった。

自営業の男性(32)は「去年の10月に買ったばかり。言葉も出ない」と悲痛な表情。

医師の男性(42)は「信じられない。地震はいつ起きるか分からない。入居者に不利にならないよう1、2ヶ月以内に対応してもらいたい」と、険しい表情で語った。

東京都墨田区のマンションの住民たちには販売会社からお知らせが。

マンションの管理組合理事長(32)は「会社でニュースを見て、大変だなと思った。帰宅して我が家だったのかと、びっくりした」と話した。

各戸ポストには販売会社から「重要事項のお知らせ」が投函され、「近日中に説明会が開催できるよう努力している」などの説明書きがあった。




今回被害に遭われたマンション居住者の皆さんの心中を察すると、本当にお気の毒としか言いようがありません。

こればっかりは「注意をしていれば避けられた」という次元ではありませんから・・・・。


事件の背景を少し補足しますと、

建物を建築する場合は、意匠設計図、構造設計図、構造計算書、設備設計図、各工事仕様書、工事費積算書、建築関係諸手続き書類など、様々な図面や書類が作成されます。

そして、ここで作成した設計図の一部を使って「建築確認申請手続き」を行ない「建築確認通知書」を受理してからでなければ、工事に着工できません。


構造計算書といのはマンションやビルなど、一定の規模の建物を建築する場合、重力や風圧、地震などの外部からの力に建造物が耐えられるために必要な鉄筋の本数や柱の太さを計算した書類で、建築士が作成するもので、行政機関か民間確認検査機関に提出をすることが義務付けられています。


今回の事件は、姉歯建築設計事務所が構造計算書を改ざんして、さらに民間の検査機関のチェックに引っかからずパスしてしまったため、耐久力の劣るビルができてしまったという、とんでもない事件です。



今年の3月には兼松日産農林という会社が、自社で製造したビスや釘の耐久力に関する大臣認定書を偽造して、表示よりも耐久力の無い釘やビスが出回り、その釘やビスを使って建築された戸建て住宅の耐震性に問題が出たという事件がありました。

このような行為は『人の命にかかわる』ことであって、どのような理由があっても決して許されるものではなく、毒入りの食べ物をばら撒くのと同じといっても過言ではありません。

建築とは関係ありませんが、三菱自動車のリコール隠しも全く同じことです。

この構造計算書の改ざんについては、今後司直の手によって実態が解明されていくことと思いますが、これらの事件をみて感じたことは、「重要なことは常に性悪説に立って考えることが必要だ」ということです。

特にマンション管理の場合は、区分所有者全員の、しかも多額の資産を管理しているわけですから、油断は禁物です。

「大手の会社だから」とか「信頼のおける人だから」ということで安心してはいけません。

いくら注意をしていても騙されるときは騙されてしまうのですから、日頃から常に危機感をもって事にあたりましょう。