姉歯問題の根幹(物の値段) | マンション管理の部屋

姉歯問題の根幹(物の値段)

小嶋

耐震偽造「公表前にヒューザー圧力」とイー社長 衆院委

日経新聞の特集記事『地域のなかで』をご紹介中ですが、今日は姉歯問題について少し考えてみたいと思います。

先月29日、耐震強度偽造問題を審議するため、衆議院国土交通委員会でヒューザーの小嶋社長、木村建設の篠塚元東京支店長、イーホームズの藤田社長などを参考人として招致し、質疑を行った。

この時の模様はニュース番組やワイドショーなどで相当取り上げられているので、ここで説明するまでもないが、被害住民不在の責任のなすりあいに終始している。

当初は「姉歯建築士」という一個人の犯罪か?と思われていたが、いまでは行政庁や政界を巻き込んだ大問題に発展してきている。

さて、このヒューザーのマンション。

色々な報道によると、専有部分が100㎡を超えるにもかかわらず、3000万円程度と破格の価格設定だったとか。

この問題は明らかに違法行為に基づくものですから、購入した方に責任があるわけではありませんが、やはり、『うまい話しには裏がある』ということでしょうか。

さて、今日は

物の値段

について考えてみましょう。


主婦の皆さんであれば、日常よく購入するもの、例えば野菜や卵の相場感というものをある程度お持ちだと思います。

たとえば卵なら1パック200円とか、キャベツなら一玉150円とか。


仮に卵が1パック30円で売っていたとします。

これが信用のおけるスーパーマーケットなどであれば客寄せのための「目玉商品だな」と理解できますが、ちょっと怪しげな店でのようなことがあると、「なんだかいわく付きでは?」と勘ぐりたくなります。

先日、最寄り駅の駅前で、軽トラックに野菜を積んで売っている行商人がいました。

リンゴが一山5個で150円・・・・。

男性だと相場をご存じないかもしれませんが、スーパーマーケットでは1個100円前後です。

あまりに安いと「最近問題になっている、農家からの盗難品では?」と疑いたくもなります。

このような疑念が起こるのは、リンゴの相場というものを知っているからです。


さて、難しいのは一般の人にはマンションや工事費などの相場感というものが無いということです。
今回も100㎡で3000万円という値段、確かに安いが相場感が乏しいので「何らかの理由で安いのだろう」という理解をしてしまう。

物の値段には必ず理由があります。

普通、物の値段は原材料費に製造費や経費を加え、さらに会社の適正な利益を乗せたものになります。

何らかの理由がなければ損をしてまで安売りをすることはありえません。

マンションの場合は土地の仕入れ価格に建設費と販売のために広告費や営業経費などを乗せ、そこに会社としての利益を乗せたものが販売価格になります。


土地購入費+建設費+経費(広告費等)+販売会社の利益
=販売価格  

です。

それぞれの費用が適正な価格であれば、最終的な販売価格も適正な価格になるはずです。
その地域のマンションの一般的な相場が4000万円であって、あるマンションが3000万円だとすると、何らかの理由があるはずです。

販売会社がわざわざ損をする訳がないので、販売会社の利益は確保されているはずです。

特に新興のデベロッパーでは、知名度や信用力が乏しいため、ある程度の経費(広告費等)は必要です。

また、マンション用地に適している土地であれば、競争が起きますから土地購入費が破格に安かったということもあまり無いでしょう、

そうなると残る費用は建設費です。
これは取引の上下関係から言っても、建設会社は一番弱い立場です。
上の図式で言うと、一般的には土地を売る地主が一番強く、次が販売会社(デベロパー)、最後が工事の請負業者である建築業者です。
業界では請負「うけおい」を、その立場の弱さから「うけまけ」と言ったりもします。

いくら弱い立場とは言え、建設業者にも値引きの限界があります。

今回の事件は、主導的立場が誰であったかは別として、人の安全という最も重要でありながら、もっとも立場の弱い部分で不正が行われたという悲惨な事件です。

マンションの管理におていは工事の発注や管理会社との契約、普段なじみのない物品の購入など、相場感のわかりづらいものの取引きが多く行われます。
管理組合における重要な事項については、単に「安いから」とか「有名な会社の製品だから」といった安易な判断ではなく、ある程度費用をかけてでも、納得できる判断結果を導くことが肝要です。