大規模修繕セミナー
先日、埼玉県マンション居住支援ネットワークと埼玉県、越谷市が主催する「マンション建物診断と修繕計画」についてのセミナーに参加してきましたので、その時の内容を少しご紹介したいと思います。
【長期修繕計画】
さて、皆さんのマンションでも『長期修繕計画』をお持ちだと思います。
修繕というものは一般的に
日常修繕、中規模修繕、大規模修繕等
に分類され、中規模修繕は5年に一回程度、大規模修繕は12年に1回程度実施されるもので、大規模修繕になると外壁に足場を作って壁の補修を行ったり、屋上の防水をやり直すといった、かなり大掛かりな修繕となります。
平成15年度のマンション総合調査でも、98.3%の管理組合が長期修繕計画の必要性を認めており、83.0%の管理組合がすでに長期修繕計画を作成済みとされています。
マンションは決して『メンテナンスフリー』ではありませんから、日ごろからしっかりと修繕管理をする必要があります。
さて、この『長期修繕計画』ですが、皆さんのマンションでは誰が、どのようにして作成されていますか?
マンション総合調査では、
マンション管理業者が作成 59.4%
販売業者が作成 6.4%
管理組合が独自に作成 20.5%
という結果になっています。
ようするに約7割近くの管理組合が管理会社や販売業者に長期修繕計画の作成を依頼している ということです。
長期修繕計画をまったくの素人が作るのは困難なので、管理会社は販売会社へ依頼することはおかしくありませんが、問題なのは全てを『丸投げ』してしまい、管理組合でほとんど『精査をしていない』場合です。
マンションは受注生産物ですから、自動車やパソコンのように同じ規格のものを工場で大量生産するものではありません。
一棟づつ、現地で加工、製造、組立を行って作っていくものなので、立地を含めて考えると世の中に同じものが二つと無いという特性があります。
大切なことは。このようなマンションごと条件や特性を、どの程度長期修繕計画書に盛り込んでいるかどうかということです。
例えば同じ構造のマンションでも、海の近くのマンションでは潮風の影響で錆びやすいという特性があるでしょうし、国道沿いのマンションでは排気ガスの影響でコンクリートの劣化が進みやすい状況かもしれませんから、補修のサイクルや内容もマンションによって異なってきます。
管理会社や販売業者が、それぞれのマンションの特性を考慮した長期修繕計画を作り込んでくれているのであれば問題ありません。
しかし、管理会社も多くの物件を抱えていますから、長期修繕計画書は一定の雛形に沿って画一的に作成されていることも少なくないと思われます。
ですから自分たちのマンションに応じた、適切な計画を策定しておかなければ、将来思わぬところで予定外の事態に陥る危険性があります。
【修繕の内容】
一概に修繕といっても多岐に渡りますが、大きく分けて
『建築部分』と『設備部分』に分けられます。
『建築部分』とは
・外壁工事
・鉄部の塗装工事
・防水工事
などをさします。
『設備部分』とは
・給排水設備工事
・電気設備工事
などで、エレベーターの改修なども含まれます。
以上がマンションの機能を回復させる修繕にあたるわけですが、その他に
『改良工事』というものがあります。
これはもともと無かった機能を追加して、マンションの付加価値を上げるたものものです。
例えば
・エントランスのオートロックの新設
・バリアフリー化
・エレベーターの新設
・駐車場の増設等です。
長い年月、マンションで快適に過ごすには、このような『改良』についても、住民とよく相談をすることが大切です。
【修繕積立金の増額】
多くの人がその必要性を理解しているマンションの『長期修繕計画』でも、いざ修繕積立金の増額や一時金の徴収という話しになると、区分所有者の間で揉め事になることがよくあります。
反対派の言い分は、
・購入してから修繕積立金を増額するのは約束違反だ。
・生活費に余裕がないので困る。
・理事会のやり方に不備があるのでは?(不信感)
などなど・・・。
私はそもそも、購入前に月額の修繕積立金の額が決定していて、その金額でマンションの修繕が保障されているという誤解を与えているという点が非常に問題だと思います。
『約束違反だ!』などと言ったところで、どこにも約束など無いのです。
マンション購入者してみれば、ローンの支払いと管理費+修繕積立金が毎月の住宅費ですから、その範囲で支払いが可能かどうかを判断していますから、途中で値上げといわれても困るといったところでしょう。
ごく単純なシュミレーションですが、
前提を戸数100戸のマンションで、毎月の修繕積立金が1戸あたり1万円とします。
このマンションで12年目と30年目に大規模修繕を行うとして工事費累計額を仮に
建築工事3億円
設備工事3億5000万円の計6億5000万円とします。
一方、新築から30年間で積み立てられる修繕積立金は、金利等を考慮しなければ
1万円×100戸×12ヶ月×30年=3億6000万円です。
実に2億9000万円の不足となります。
もし、30年間で6億5000万円を積み立てようと思ったら、
1戸あたり月額1万8千円の負担となります。
『ほとんどのマンションでは現状の積立金では不足なのです!』
しかし、マンション販売業者は修繕積立金の額をあまり高額にするとマンションの売れ行きに影響が出るので、なるべく低く抑えようとします。
私はマンションの広告にも、「この修繕積立金は将来の修繕を保障するものではなく、正式な管理組合の総会において見直される必要があり、増額、一時金の徴収の可能性がある」といった説明が必要ではないかと思います。
今後、管理組合の理事会に求められることは、
○将来どのような修繕や改良をしていくかという綿密な計画を立てる。
○修繕積立金を貯めるために、管理会社との管理委託費を見直し、余剰金を修繕積立金に充当する。
○もし駐車場収入等を月々の管理費予算に充当しているような場合は、駐車場収入等を修繕積立金に充当するように会計方法を変更する。
○現状の修繕積立金では将来の修繕に全く足りないということを区分所有者に十分理解させる。
上記の対応は、早ければ早いほど効果がありますので、対応の遅れている管理組合は早急に取り組むことが肝要です。
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