内なるリスク(4) | マンション管理の部屋

内なるリスク(4)

日経新聞の連載特集「マンション誰のもの」の第5弾、『内なるリスク』をご紹介しています。

今日は第4回目、最終回です。


(以下新聞記事)

マンションが抱える問題と正面から向き合い、住民主導で解決に取り組んでいる管理組合がある。川崎市の等級田園都市線宮崎台駅前にある「宮崎台プラザビル」(135戸)だ。

理事長の三好章一さん(59)は「このマンションは沿線のシンボル」と胸を張る。理事長のもとに幾つもの委員会を設置し、様々なトラブルや課題への対処法を協議。違法駐輪に悩まされた時は有料のラベルを発行し、貼っていない自転車は撤去する方針を打ち出した。

駐車場が足りないとなればテナントの銀行と粘り強く交渉し、顧客向けだったスペースの7割を住人用に転換。防災訓練は地震の揺れを体験できる専用車を借りてくるほどの熱の入れようだ。


1年半前までは他のマンションと同様、組合活動は低調だった。住民意識が変わったのは管理会社の変更がきっかけだ。長く等級コミュニティーが務めていたが、前理事長の小林重行さん(67)が「サービスに比べて委託料が高くないか}と見直しを提案。

理事就任は3回目という小林さんはこれまで仕事が忙しく、何もできなかっただけに「今度こそ」と自ら改善に乗り出した。

まず、全戸にアンケートをして意欲的な住人を組織。管理費削減協会(東京、北区)に相談して管理会社を代えたうえ、清掃や植栽など個々の業務は組合が業者を直接契約する方式に切り替えた。その結果、年間3千万円かかっていた維持費は3分の2に減少、住人が支払う管理費も3割引き下げることができた。

一人が動けば変わる、という自信がその後の改革を後押しする。「耐震強度偽装問題は自分が暮らすマンションに関心をもってもらう好機」。小林さんから理事長を引き継いだ三好さんは女性の理事を増やし、住人間の意思疎通に気を配る。

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長い年月をかけ、荒廃した状況から住人自らの手で再生したマンションもある。東京・杉並区ノガーデン掘ノ内住宅(238戸)だ。現在はきれいなったが、かつては「ゴミが散乱し、エレベーター付近で小用を足す人がいるほどだった」と管理組合理事長の日高三郎さん(69)は振り返る。

事態を改善するカギとなったのは駐車場だ。かつては4世帯につき1台分しかなく、使用料が格安だったこともあって、駐車スペースのない住人には「不公平だ」という不満が渦巻いていた。敷地内の樹木帯をつぶして拡張しようにも、住人に加え近隣からも反対の声が上がり、動けない。

そこで日高さんらは住人に敷地の白地図を配り、駐車場の配置も含めた土地の有効利用昨を提案してもらった。その後も「何台分必要か」「料金はどの程度にするのか」と細かくアンケート。最終的には緑を減らすことなく駐車場を3倍に広げ、使用料は3倍強に引き上げる案を作り上げた。

解決には6年を要したが、駐車場の増収分は建物改修の貴重な財源となり、マンションは「見事にきれいになった」(日高さん)。

「相互理解と相互協力のなかで住むようにします」
日高さんらh2003年。全国でもまれな「住宅憲章」を策定。マンション自治の確立に今も挑む。


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耐震強度偽装問題でも露呈したが、欠陥マンションなど各地で相次ぐトラブルの背景には業者のモラルの欠如や法制度の不備がある。住人は「隣人は他人」「管理組合は形だけ」という行動様式では自らを守れない。

昭和の高度成長の波に乗り、急速に増えたマンション。
その歴史は決して長くないが、そろそろ住人が自治意識を高め、自らの暮らしを守るという新たな「マンション文化」を確立すべき時期にきている。