耐震と免震と制震 | マンション管理の部屋

耐震と免震と制震

このところ姉歯元建築士による耐震偽装問題で、この「耐震構造」という単語をよく目にするようになりました。似たような単語で「免震構造」や「制震構造」というものがありますが、これらにはどのような違いがあるのでしょうか?何となく分かっているようで、よく分からない用語の違いについて見て行きましょう。

この「耐震」「免震」「制震」はいずれも建物を地震や台風などの揺れから守る仕組みだということは、「震」という文字から想像でます。

1.耐震構造(たいしんこうぞう)
まず、「耐震偽装問題」などに使われる「耐震」という用語ですが、まさに揺れに耐えるための構造で、柱や梁などで建物に強度を持たせるものです。


従来からある建物の耐震構造は、次の2つです。

剛構造(強度指向型)
地震の揺れを建物がしっかり受け止めるように、柱や梁などを強固にして、建物が変形せずに建物全体が揺れる構造のことをいいます。地面の揺れにともなって建物が揺れるので、建物が高いほど、上層階の揺れが大きくなることがあります。

柔構造(靱性指向型)
建物がしなやかで柔らかい構造。骨組みにかかる力が小さく、超高層ビルに多く採用されています。地震時には揺れに抵抗せず、地面が揺れると下の階から時間差で揺れ、地面が逆方向に揺れてもまた、下の階から動いて地震のエネルギーを吸収します。ただし、建物の変形が大きいために、内外装などへの配慮が必要となるでしょう。


短い棒なら硬くすることで丈夫になりますが、棒が長くなると折れてしまうので釣竿のようにしなやかにしようという考えです。


2.免震構造(めんしんこうぞう)

免震

免震構造とは、地震の揺れを建物と地盤の間でシャットダウンする構造のことで、実際は建物の基礎部分に巨大な積層ゴムでできた免震装置を挟んで揺れを吸収するものです。

テレビなどの下に柔らかいゴムの板をおいて地震の時に倒れないようにする防災グッズがありますが、これと原理は同じようなものです。
これにより地震の揺れが3分の1程度に提言されるといいます。

免震装置を設置するにはそれなりのコストがかかりますが、逆に揺れが小さくなる分、建物の耐震性をそれほど強くする必要がないため、姉歯問題ではありませんが普通よりも柱を細くしたりすることにより、建築費をセーブすることができます。

一般的には免震装置設置によるコストアップと、これに伴う耐震構造のコストダウンで差し引き数パーセント程度建築費増となるようです。

ただし、ゴム製の免震装置の寿命は50~60年と言われており、もし交換する場合には相当な費用がかかりますので、マンションの躯体の寿命がそれ以上となる場合には検討が必要です。


3.制震構造(せいしんこうぞう)

制震装置
外見上は耐震構造と変わりありませんが、建物に取り付けた制振機構(ダンパーなど)によって、強風の時や地震の時に建物の揺れを小さく抑えることができる構造を指します。建物の(層間)変形を小さくして、構造躯体(柱、梁など)への深刻な被害を軽減することができます。ほとんどのものがメンテナンスを必要としません。また別に、機械的な制御などを行う制振構造という考え方もあります。

具体的には屋上部分に重りを置いて、地震が起きた時には振り子の原理で揺れを抑えたり、骨組みの部分に油圧ダンパーなどを挟んで揺れを吸収したりと様々な方法があります。
建築コストは免震構造に比べて低く済みますが、揺れの軽減度合いは免震構造ほど大きくないといわれています。