マンションの防犯対策(5)
マンションの防犯対策について特集しているところですが、先日の日経新聞朝刊(9月7日)に、
「エレベーター内 暴力行為を検知」
という記事がありました。
三菱電機ビルテクノサービスが、防犯カメラを使ってエレベーター内の暴力行為を自動検知する技術を開発したというものです。
いったい暴力行為をどのようにして自動検知するのでしょうか?
「乗り降りなどエレベーター内での一般的な行動パターンと画面上の人の動きを照らし合わせ、暴力行為を検出する仕組み」
だそうです。
具体的な技術は
「防犯カメラが撮影した画像を4800に分割、各ポイントの色や明るさの変化で人の動きを認識する。」
というものですが、このシステムによって、暴力行為だけではなく、エレベーター内での待ち伏せをしている不審者や、急病で動けなくなった人も検知できるそうです。
暴力行為を検知するとブザー音やアナウンスで警告をし、危険度が高そうな場合は、最寄り階に停止してドアを開き、同時に暴力行為を詳細に記録する機能もあるということなので、密室で危険が潜むといわれるエレベーターの新しいセキュリティーとして注目されています。
詳しくは
http://www.meltec.co.jp/press/pdf/050906.pdf まで。
さて、ここからは前回からの続きです。
今日は「犯罪者の心理」について考えてみましょう。
防犯対策に完璧というものは無く、新しい鍵やシステムを導入しても、賊の侵入技術がその上を行き、またそれに対抗する新しい防犯グッズが誕生するという、まさにいたちごっこです。
また、防犯対策には限度があって、例えば予備錠を10個付ければ確かに防犯効果は高まるでしょうが、出かける時に10個の鍵をかけ、帰宅の際にまた10個の鍵を開けるということでは、普通の日常生活は送れませんね。
空き巣でも自動車泥棒でもそうですが、プロの賊がその気になれば、大抵の鍵は開けられてしまいます。
しかし、賊も捕まりたくありませんから、なるべくリスクを排除しようとします。
逆に言えば、賊が嫌がる環境を作れば、賊のターゲットから外れる可能性が高まり、結果防犯効果が上がるということです。
では、賊が嫌がる環境とはどのような環境か?
それには
賊に直接聞いてみるのが一番!
という訳で、ここに「逮捕されたマンション窃盗犯に対するヒアリング結果」という、非常に興味深い資料があります。
要するに本当に捕まった泥棒から聞いた生の声ということです。
池波正太郎作品の『鬼平犯科帳』でも、長谷川平蔵は捕らえた賊の中で改心した者を密偵として活用し、大きな成果を上げました。(あくまで物語りですが・・・)
※資料の出典は警視庁生活安全部の講演会資料からです。
Q:犯行を諦める侵入のための所要時間は?
5分未満 58%
5分以上、 10分未満 20%
10分以上、15分未満 13%
15分以上 9%
約8割の賊は開錠作業などにかかる時間が10分を超えると、その住戸への侵入を断念するという結果です。
賊の侵入作業に5分間持ちこたえられる防犯設備を設けるだけでも、約6割の賊は侵入を断念するわけですから、完璧な防犯設備でなくても、ある程度時間稼ぎができるだけで、十分効果があると思われます。
Q:犯行にかける時間は?
5分以内 29%
5分以上、10分未満 40%
10分以上、15分未満 9%
15分を超え、20分未満 16%
20分以上 6%
10分未満の合計で約7割ですから、賊は非常に短時間勝負です。
ちょっとしたゴミ捨てなどでも施錠が必要ということの裏づけです。
Q:侵入しにくい防犯設備は?
防犯センサー 62%
防犯ブザー 51%
監視カメラ 27%
補助鍵 27%
※複数回答
監視カメラよりも防犯ブザーのように音の出る設備が効果的のようです。
思うにマンションの監視カメラはリアルタイムに不審者のモニタリングをしている訳ではなく、犯行が行われた後、映像を確認するためのものですから、賊にとっては直ちに侵入の障害になるものではありません。
また、監視カメラの設置場所も1階のマンションの入口部分等が多く、賊が実際に開錠行為を行う各住戸に設置されていないことが多いので、それほど大きな抑止力にはなっていないようです。
ただし、防犯センサーや防犯ブザーはあまり高感度にしていると誤作動の原因となり、近所迷惑となります。また、誤作動を防止するためにセンサー機能を切断するといったことを行う組合もあるようですが、これでは本末転倒ですね。
残りのアンケート結果については、次回ご紹介します。
それではまた。