マンションの防犯対策(3) | マンション管理の部屋

マンションの防犯対策(3)

今日はマンションの「どこ」「なぜ」危ないか?というマンションの弱点について、もう少し掘り下げて考えてみましょう。


1.敷  地

マンションは戸建住宅と違って敷地内に不特定多数の人々出入りできます。

建物内についてもオートロックがなければ自由に出入りできますし、仮にオートロックがついたマンションであっても、前回の記事で書いたようにその気になれば侵入することは容易です。


空き巣などプロの窃盗犯は手当たり次第に盗みに入っているわけではなく、極力捕まるリスクを排除しようとするために、慎重に事前調査を行うようです。

その意味ではマンションという構造は賊にとって事前調査のしやすい物件ということになります。

また、居住者全てが他の居住者を把握することが困難で、不審者と居住者のと識別がしづらいという問題も大きな弱点ですね。


2.廊  下

共用廊下の手すりはコンクリートの壁や目隠し、風防のためのパネルが設けられていることが多く、地上や下層階から上層階の廊下の状況がわかりにくい構造になっています。

このため、賊にとっては身を潜めやすい環境になっていることが多いのです。

余談ですが、某大手警備会社の方に伺った話しです。

あるマンションの方が

「自分のマンションは駅の目の前にあって、共用廊下が駅のホームに面していて、絶えず多くの人の目に触れるため防犯上優れている」

とおっしゃっていたそうですが、意外とそうではないようです。

確かに駅のホームにはたくさんの人がいますが、その風景に慣れている人にとっては、いちいちマンションの廊下などには注意を払わないようです。

もっともマンションの廊下で大騒ぎしているとか、煙が出ているといった状況なら別ですが、多少怪しいとおもわれるくらいのことなら、ほとんど気がつかないケースが多いそうです。


また、怪しいと思ったとしても、そこから警察に連絡するといった行動に移るということはほとんど期待できないということです。

映画「Shall We ダンス?」で役所広司が駅のホームからダンス教室の草刈民代に気がついたのは、草刈民代に興味があったからで、人間強い興味がなければ自分に関係の無いことにはあまり関心を示さないということですね。



ダンス

↑映画「Shall We ダンス?」

アルコープについては前回の記事でも書きましたが、玄関扉の設置部が廊下歩行部から少し奥まっている形状のものですね。


これだと廊下を歩いていて、その扉の前を通過しないかぎり、玄関扉の様子がほとんどわかりません。

まあ、わからないようにわざわざアルコープにしているのですから当然ですが。


賊にとっては自分の姿を発見されにくいので、扉の解錠作業に落ち着いて取り組めるという利点があります。



3.住宅形状

マンションの形には様々なものがありますが、下の階より上の階の住居が少なくなっているセットバックという建物の場合、廊下などに有効なフェンスがなければ賊が侵入するための格好の入り口となってしまう場合があります。


セットバック

↑セットバックの建物


私が子供の頃住んでいたマンションはルーフバルコニー付きだったのですが、共用廊下の腰壁を乗り越えて、壁伝いに回り込むとルーフバルコニーにたどり着く構造になっていて、子供たちで鬼ごっこをする時などはこのルートを使ってよく遊んだものです。

今から考えるとなんて危険なことをしていたのかと冷や汗が出ますが・・・。



マンションでは統計的に1軒の賊の侵入を許すと、隣接物件の被害発生率が非常に高くなるといわれています。

特に左右への移動はバルコニーの手摺壁を使えば比較的容易に他の部屋へ移動できるので、賊としては効率的に仕事?をこなすことができるという訳です。

賊の侵入件数は意外と屋上に近い階やセットバック部からの侵入が多いようです。

高さ的に人目に触れやすい1階は意外と安全と言う意外な統計結果も出ています。


4.駐車場、駐輪場


機械式駐車場や電動シャッター付地階駐車場はともかく、地上置き型のタイプは車上荒らしに遭遇する危険性があります。

少し前のニュースでマンションの駐車場の車のタイヤが、千枚通しで次々とパンクさせられるという事件もありました。


マンションでは戸建住宅と比べて、駐車している車とその所有者の住居に一定の距離があるため、車上荒らしや悪戯に遭いやすいというリスクがあるものと思われます。


また、駐輪場などは屋根が設置されていることが多いため、住戸からは見えにくく、賊からすれば大量の自転車が確実に置いてあり、目的の車種や施錠されていない自転車を発見できる可能性が高いと言うメリットがあります。


5.エレベーター


低層以上のマンションではエレベーターは無くてはならない設備です。

しかし、エレベーターは密室であり、ガラス扉タイプのエレベーターでなければ不審者と乗り合わせた場合、非常に危険な空間となります。


現状の設備では、エレベータ内の防犯カメラをセキュリティー会社の防犯システムに連動させることは困難なようですが、録画タイプのカメラを設置し、その録画画像をエレベーター内のディスプレイに表示するだけで、ある程度の抑止力が期待できます。


以前、渋谷のタワーレコードのエレベーターには監視カメラがついていて、エレベーター内の映像がエレベーター内の上部に設置されたモニターに映されていています。


常時自分がモニターに映っているので、特にやましいことが無いのになんとも落ち着かないという経験をしましたので、このような監視カメラには一定の犯罪抑止力が認められるのではないかと思います。



6.その他


①階段室

 エレベーターのあるマンションでは、上下階の移動は通常エレベーターを使うため、階段室の使用頻度が下がります。そのため、賊が潜むエリアとなる危険性があります。

 また、未成年者の夜間の溜まり場となる危険性もあります。


②植樹帯

 プライバシーを重視するあまり、過度な植樹帯による目隠しは賊にとっては有利な身の隠し場所となります。


③ゴミ捨て場

 以前、マンションの敷地内にあるコンクリート平屋造のごみ捨て場所に浮浪者が住みついていたという事例がありました。このような施設では夜間の鍵閉めなどの徹底が必要でうす。



さて次回は、どのような実害事例があるかについてご紹介していきましょう。