マンションの防犯対策(2) | マンション管理の部屋

マンションの防犯対策(2)

前回の記事でも書きましたが、マンションでの犯罪は住戸への侵入だけではありません。


・駐車場や駐輪場などの敷地内での盗難や破損(自転車泥棒、車上荒らしなど)

・外部侵入者による犯罪行為(痴漢、落書き、器物破損)

なども深刻な犯罪です。

さて、戸建住宅と比べた場合、防犯に対するマンションの弱点はどのような点でしょうか?



①敷地が広く侵入が比較的容易

最近ではオートロックがついたエントランスが当たり前になってきていますが、オートロックがついているマンションでも、脇に回れば腰高のフェンスを乗り越えるだけで簡単に侵入できるマンションもありますし、マンションの居住者がオートロック扉から出入りするタイミングを見計らって一緒に侵入することも可能です。

以前私が実家のオートロック付のマンションを訪問した際、たまたまオートロック扉のところで居住者の方と一緒になり、インターホンで家の者に解錠してもらうのも面倒なので、顔見知りではありませんでしたが「こんにちは」と挨拶をして、一緒に入れてもらいました。

本来であれば居住者の方も、顔見知りでなければ「適正な手続きを経てください」と言うべきところなのでしょうが、実際にはそのようなことは期待できません。

相手がサザエさんに出てくる泥棒のように頬被りをして、背中に唐草模様の大きな風呂敷でも担いでいれば「怪しい?」と思うかも知れませんが、マンションに忍び込もうとする不審者は普通、怪しい格好はしていないものです。


このようなことから、オートロック付きのマンションと言えどもプロの賊に対しては侵入を阻止するだけの効果は期待できず、せいぜい押し売りやビラ配り、溜り場を探している不良などに対する「けん制機能」程度の効果と思っておいた方がよいでしょう。


・不審者の居住者の区別がつきづらい

これはマンションにおける最大の弱点と言えるでしょう。

基本的にある程度の規模以上のマンションでは、全ての居住者が顔見知りということはまず無いと思います。(特別にコミュニケーションの良いマンション別ですが)

マンションの規模が大きくなればなお更です。


それに、マンションの居住者なら顔見知りであっても、その親や親戚、友人などが訪問することもあるでしょうから、マンションの敷地内に見知らぬ者がいたとしてもさして不審には思わないでしょう。

戸建住宅であれば自分の敷地内に見知らぬ者が侵入していれば、即座に「不審者」という判断が下せますが、マンションの共用部分に見知らぬ者がいるというだけではこのような判断が働きません。


よほど挙動不審でない限り、不審者を特定することは困難であり、まさにそこが犯罪者のねらい目になるのです。




・外部からの視線をさえぎるため、多くの死角が存在する。

マンションではプライバシーを確保するために、なるべく外部からの視線を遮断するような設備を設けます。

例えば道路に接する部分では街路樹を植えたり、外部廊下には目隠しを設置することもあります。


目隠し


廊下は階下からスカートを穿く女性の下着が見えないように、腰から下はフェンスでななく、コンクリートやパネルなどで目隠しをすることが多く、不審者が廊下でしゃがみこめば外部からは発見しづらい環境にあります。



最近の流行で玄関のアルコープ仕様というのをご存知でしょうか?

通常、マンションの玄関が共用廊下に接して配置されていますが、これを廊下から数メートル窪ませたところに玄関を設置し、同じ階の住人から玄関を死角にするものです。


これもプライバシーに配慮した設備で、最近のマンションでは人気があります。


アルコープ

↑アルコープ仕様の玄関


しかしアルコープ使用の場合、窪みに不審者が身を潜めていても、共用廊下の両端からは不審者を確認することができません。

特に注意が必要なのは廊下の一番奥の部屋のアルコープです。通常、一番奥の部屋には、その部屋の住人か用事のある者しか行きません。

ということは、この部屋のアルコープに不審者が潜んでいると、他人からは極めて発見しづらい死角となってしまうということです。


このような場合、待ち伏せ強盗などの標的となる危険性が高まりますので、反射ミラーを設置するなどの防犯対策が効果的です。



要するにプライバシーを求めて目隠しなどをすればするほど、賊にとっては都合の良い環境を提供してしまうという皮肉な結果になってしまいます。


さて、次回は「集合住宅のどこなぜ危ないか」について、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。



【宣伝コーナー】

身内の宣伝で誠に恐縮ですが、私の愚弟 薬丸 岳 がこの度、 「天使のナイフ」 という作品で作家デビューをいたしました。


少年法を扱ったミステリー小説であり、手前味噌ではありますが、なかなか読み応えのある作品に仕上がっていると思いますので、興味のある方は是非お買い求めいただければ幸いです。

(あらすじ)

生後五ヶ月の娘の目の前で惨殺された妻・祥子。夫・桧山貴志は耳を疑った。犯人は、十三歳の少年三人。四年後、犯人の少年の一人が殺され、桧山は疑惑の人となる。少年たちの事件後を追う桧山に付き付けられた、信じがたい真実、恐るべき過去――。

天使のナイフ

    1680円(税込) で講談社より発売中