マンションの防犯対策(1)
最近の住宅に関する犯罪といえば、真っ先に「ピッキング」を思い浮かべる方が多いと思いますが、住宅犯罪の類型としては以下のような分類ができると思います。
①玄関や窓から室内に侵入をしての窃盗や傷害
②駐車場や駐輪場などの敷地内での盗難や破損(自転車泥棒、車上荒らしなど)
③外部侵入者による犯罪行為(痴漢、落書き、器物破損)
これらの住宅犯罪件数は10年前と比較すると明らかに増加傾向にあります。
同時に犯罪の内容も多様化、集団化、悪質化していて、住民のセキュリティーに対する関心も年々高まってきています。
福岡や世田谷の一家殺害事件などは記憶に新しいところですが、このような事件もひと昔まえであれば日本中を震撼させるような事件であったはずですが、現在では特別珍しい事件ではなくなっているという点で、「日本の治安も悪くなったものだ」ということを痛感いたします。
このような中、新築マンションの広告を見ていても、セキュリティーの高さを前面に打ち出しているものが目立ってきていますね。
ざっとあげても、
・防犯センサー付玄関扉
・玄関扉の二重ロック
・プログレッシブディンプルキー(防犯鍵)
・カメラ付きインターホン
などの各住戸のセキュリティーを高めるものから、
・オートドアロック
・防犯カメラ
・防犯灯
などの共用部分の防犯対策、
そして警備会社との提携による24時間管理システムなど、ハード・ソフト面まで多岐にわたっております。
さて、冒頭に書きましたように住宅犯罪で真っ先に思い浮かべる「ピッキング」のように玄関から室内に侵入する犯罪ですが、これは犯罪ジャンルにおいては「不法解錠行為」と言うそうですが、住宅犯罪の約50%を占めているそうです。
最近ではピッキング対策として防犯性の高い鍵に変える住民も珍しくありませんが、それに対応すべく賊側も新たな進入方法を考案し実行しています。
それが、
・バールによるこじ開け
・サムターン回し
・カム送り
と呼ばれる侵入方法です。
皆さんもこれらの用語は良く耳にすると思いますが、ちょっとここで用語の解説をしておきます。
まず、おなじみの「ピッキング」ですが、これは
合鍵以外の用具(ピッキング用具)を使用し、錠シシリンダー部分を操作して解錠する手口を言います。
こんな感じです。
次に「バールによるこじ開け」ですが、
これはドアの隙間にバールをねじ込んで、力まかせでドアを破壊するものです。
↑バールでこじ開けられたあとです。
かなり乱暴な手口で、外国人犯罪者に多く見られます。
次に「サムターン回し」ですが、
サムターンというのはドアの内側にある錠を開閉するつまみのことです。
通常はドリルなどを使って鍵の横に穴をあけて、
扉の外から先端が90度曲がる工具を突っ込みます。
そして、工具を約90度折り曲げてサムターンに引っ掛けて解錠します。
最後に「カム送り」ですが、
シリンダーカバー(下の写真の赤丸部分)を指でひっぱると、扉とカバーの間に少し隙間ができます。
その隙間から扉内部に特殊な工具を挿入して、錠ケースを直接操作して解錠する手口です。
別名「バイパス解錠」とも言われています。
これらの侵入方法については、次々と対策商品も出ています。
例えば「こじ開け」についてはガードプレートを付けたり、複数の予備錠をつけるという防衛手段がありますし、「サムターン回し」についてはサムターンに工具が引っかからないように、サムターンカバーを付ける方法があります。
しかし、賊側と防犯商品開発の攻防はいたちごっこの感もありますので、抜本的な解決にはいたっていません。
さて、次回はマンションに求められる防犯とはどのようなものか?
「マンションに潜む特有の危険」について考えてみたいと思います。