マンションの付加価値 | マンション管理の部屋

マンションの付加価値

前回の記事に関連して、マンションの付加価値についてお話ししたいと思います。


最近の新築分譲マンションの広告をみていると、実に様々な付加価値をもった物件が増えていますね。

デベロッパー(分譲会社)も他社との差別化を図るのに必死といった感じです。

私が広告を見たものとちょっと書き出してみると、


☆オール電化対応

☆ペットと住めるマンション(足洗い場設置)

☆全戸サウナ付き

☆クリーニング受付BOX

☆全戸温泉付き!

☆24時間のフロント対応でホテル並みのサービス

☆100%無料駐車場付きマンション

☆最上階に共用大浴場 などなど

ペットマンションは従来の「マンションでペットは飼えない」という常識を覆す提案ですね。

最近ではリゾートなどでもペット同伴対応ホテルが増えてきていますが、マンションもどんどん多様化してきています。


さて、マンションが多様化して消費者の選択肢が増えることは悪い事ではありませんが、このようなマンションを選ぶ際は注意が必要です。



それは、そのマンションの特色はコストに見合っているのかという事と、将来に渡ってそのコストを負担していく覚悟があるか?ということです。




例えば24時間フロント対応ですが、マンションのエントランスにカウンターがあり、24時間対応でホテル並のサービスを提供してくれるというものです。


コンシェル




確かにサービスとしては素晴らしいと思います。

↓これはあるマンションの広告の一部です。


コンシェルジェがサポートするプライベートライフ

 
マンションライフのプライバシーを守り、わずらわしさからは解放する。24時間有人対応のフロントは、あらゆる居住者のニーズに対応するべく、待機しています。
 コンシェルジェは留守中の訪問者からのメッセージ預かりや、クリーニングの受け渡しはもちろん、タクシーやレンタカーの手配、トラベルチケットのリザーブやハウスクリーニングやベビーシッターの手配など、まさにリゾートホテル並みのサービスを実現するためには、欠かせない存在です。

ちなみに「コンシェルジェ」とは特にフランスのホテルなどで、観光案内など客のお世話をする係りのことです。

マンションに帰ってくると「薬丸様、お帰りなさいませ。」なんてお出迎えしてくれるのでしょう。


しかし、もちろんこのサービスはただではありません。サービスにかかる費用は全て管理組合が負担するのです。と言うことは区分所有者が月々の管理費の中で負担すると言うことです。

非常に大雑把な計算ですが、24時間対応でフロント対応をするとなると、フロント要員は最低3交代は必要でしょう。

フロント要員1名の月当たりの人件費をざっと25万円とすると3人分で75万円。
75万円を仮にマンションの居住者100戸で割ると、一ヶ月7500円です。

この7500円をマンションの住民全員が将来にわたってずっと負担することを覚悟するということなのです。



『最上階に大浴場』 、毎日仕事の疲れを夜景を見ながらの入浴で癒す。うらやましい・・・・。


温泉



しかし、この大浴場にかかる費用も全て住民負担です。大浴場を使おうが、使うまいがです。
大浴場ですから水道代も馬鹿になりません。毎日の清掃費用もかかります。
誰も入らない日があっても湯を沸かさなければなりません。

このような高付加価値のマンションでは、入居開始数年で「管理費削減のための共用サービス見直しについて」といった議論が持ちあがることがあります。

マンション住民の総意で変更するのであれば問題ありませんが「俺は費用負担覚悟で大浴場付きのマンションを買ったんだ!大浴場がなければこのマンションは買わなかった!」という人もいるでしょう。

ある高層マンションの区分所有者の方に聞いた話しですが、高層マンションでは低層階に比べて高層階の分譲価格は高額であり、居住者の所得格差が大きいそうです。

そのため管理組合の運営でも意見が分かれる事が分かれることが多く、合意形成難しくて困っているということです。





もう一つ、 「無料駐車場」ですが、これはなにも販売会社のサービスではなく、本来なら管理組合の重要な収入源となる駐車場使用料が入らないということです。

さらに、車を所有しない住民との間に不公平感が生じる危険性もありますね。

このようなマンションでは当然大規模修繕の際に資金が足りなくなる可能性がありますから、一時金の徴収が予想されます。

要は現在の負担を軽くして将来苦しむか、こつこつと地道に積み立てるかの違いです。


このようにマンションの付加価値には、区分所有者の大きな負担となるものが多くあります。

また、マンションの特性として一度決まった事柄を変更するには、大変なエネルギーを必要としますから、もし後から付加価値を付ける変更を行うような場合は、十分な検討と覚悟が必要でしょう。