「管理」が危ない(2)
↑マンションの24時間フロントサービス
日本経済新聞の埼玉版のマンション管理についての特集記事をご紹介しております。
(以下、新聞記事)
「これでは責任ある管理業務は不可能です」。
一昨年7月、東京都新宿区のあるマンションの区分所有者全員に、一通の「通告書」が届いた。差出人は管理会社。新築から20年余の付き合いでついに“三くだり半”が突きつけられたのだ。
管理会社がマンションを見放すのは極めて異例。だが、その事情には無理からぬものがあった。据え置かれ続けた修繕積立金は月額たったの7百円。国土交通省がはじいた平均額の10分の1にも満たない。外壁のタイルははげ、手すりは錆びだらけ。それでも区分所有者に危機感が薄い。
15戸のほとんどが賃貸物件で収入源としか見ていないためだった。
そんな状況下で管理会社は大規模修繕を提案、1戸100万円の臨時出費を求めたが、結論は「絶対反対」。最後のお願いは悲劇というより喜劇じみて幕を閉じた。
これを極端なケースと断じるのは簡単だ。しかし、管理費は削るに限る、との風潮は賃貸物件だけではない。むしろ「終(つい)の住み家」と腹をくくった住民の胸中には、割高な管理費を払わされてきた、という不信感が根深く巣くっている。
興味深い調査がある。
1998年、住宅金融公庫が中心となり、首都圏の管理会社に「80戸、エレベーター1基を持つ程度のマンションの年間管理費はいくらか」とアンケートした。
結果は最高が2千8百43万円、最低が320万円。
サービスの質の差があるのだとしても、これだけの価格差を素人はどう理解したら良いか?
「うかうかしていると、2千8百万円の金を支払っても、300万円台のサービスしか受けられない可能性もある」と同公庫の冨田主席研究員は言う。
業界ではかつてマンション管理を「おいしい仕事」と言ってはばからなかった。分譲会社などの系列会社が新築時から管理業務を受託。仕事に忙殺されて住まいに注意を向きにくい住民相手に、値上げもすんなりと通った。だがここ数年、管理を専門に行う独立系企業が参入、割安な価格を前面に出して老舗の領分に攻め込む事例が続出、今や「仁義無き戦い」の様相だ。
公正取引委員会の2003年の調査では、マンションの奪い合いが生んだ新たな歪みが指摘された。管理組合が取引を見直そうとすると、管理会社が住民名簿や会計簿を渡さないなどの陰険な妨害工作にでる事例が目立ったという。
住民も目を覚まし始めた。「もうヒモ付きの管理会社はいらない」。東京都江戸川区の葛西第2スカイハイツの住民が立ち上がったのは3年ほど前だ。
真っ先に手をつけたのは80年の分譲時からの管理会社の変更。
新会社競争入札とし、年間約500万円の管理費を削減。大規模修繕工事も組合が直接発注し、工事が適正に行われているかどうかを判断してもらうためコンサルタント会社とも契約した。
選定にあたってはマンションの理事長が事務所に出向いて、社長を面接したほどだったという。
住民が汗をかき、不透明な取引を徹底的に排除した。「やればできる」を地で行った成功例だが、それでも不満が出るのが集合住宅の難しさ。
住み込みで働いていた管理人を「通い」に変更したところ、一部から不満が漏れた。
「私は常駐が魅力でここを買ったのに」
高齢者の住民のゴミ出しを自治会が手伝うなど、このマンションではその後も表立った対立は無い。
しかし、価格と一緒に切り捨てたサービスを巡るしこりが完全に払拭(ふっしょく)しきれたかどうか。同マンション理事長のつぶやきは重い。「100人いれば100通りの理想がある。誰もが納得できる管理なんてあるのだろうか」
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最近、マンション管理についての関心の高まりから、革新的な理事会では管理会社のリプレイス(変更)が積極的に検討されています。
一方で、マンション管理にほとんど関心の無いマンションでは、逆に管理会社の方から契約解除を申し入れられるケースもあります。
マンション管理についてはこれと言った正解はなく、人それぞれ理想を持っています。
最近のマンションでは高級ホテルのように24時間対応のフロントを設置する物件もあります。多少管理費が高くても、そのようなハイグレードなサービスを受けたいがために購入を決めた人も多いでしょう。
なのに、「管理費が高くつくから」という理由でこのようなサービスの廃止を提案しても、「そんなこと最初から分かっていたこと」「だったら他のマンションを買うべき」といった強い反対が予想されます。
マンションでは管理の質を後から変更することは非常に困難です。しかし、時代の流れに応じて管理の質や内容が変わっていくことも現実です。
日頃からマンションの住民の意思疎通を図り、価値観のすり合わせをしていくことが重要でしょう。