「管理」が危ない(3) | マンション管理の部屋

「管理」が危ない(3)




少し間が空きましたが、日本経済新聞での特集記事の続きをご紹介します。

マンション誰のもの-「管理」が危ない

(以下日経新聞より)

管理会社とうまくつきあう方法がある。「性悪説」に立つことだ。

 

千葉県市川市にある「サニーハウス行徳」(160戸)。

築30年を超す同マンションで昨年5月、管理会社の不透明な経理処理が発覚した。

管理組合の決算と管理費の通帳残高が一致しなかったのだ。

マンションの住人が見つけたわけではない。管理会社に不審を抱いた当時の理事長がマンション管理士の重松秀士さん(54歳)に2年分の資金の出入りについて監査を依頼して判明した。

玄関ガラスの破損など、本来なら損害保険から保険金が下りるはずの修理代が、管理費から全額支払われていることもわかった。

5月。このマンションの管理組合は管理会社を変更した。
今度は大手の会社だが、重松さんは顧問管理士として四半期決算など様々な書類をチェックするお目付け役を今も続けている。

管理組合理事長の乙坂記良さん(70歳)自身も月次報告などに必ず目を通す。
「管理会社任せで一度失敗したのだから、これからは丸投げだけはできない」。
幾重にも監視する体制を整えることがトラブルを未然に防ぐ。


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管理会社が万一、破綻した場合でも被害を抑える方法もある。
横浜市港南区の「Fハウス」(仮称、約200戸)は昨夏から管理会社への支払いを「後払い」に変更した。

業界では月末に翌月分を振り込む「先払い」が普通だが、当月分をその月末に払う方式にすれば、管理会社が倒産しても青ざめなくてすむ。

実はFハウスの管理組合が管理会社のサービスや財務内容を他社と比べてみたら、業績不振の親会社から買い取った資産の下落で自己資本比率が低いことが判明した。

すぐに四半期ごとの業績報告を求め、支払い方法の変更を要求したのだ。
Fハウスはその管理会社にとって看板物件だったため、渋々受け入れたのが実態だ。

業界動向に詳しいマンション管理士の川原一守さん(30歳)は「一般の商取引なら後払いは珍しくないが、この業界では管理業者に有利な慣行が続いている」と打ち明

ける。


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工夫すれば、管理会社とのトラブルはある程度なくすことができる。しかし、マンションで最も厄介なのが住民自身の不正だ。

「おたくのマンションではひどい談合が行われているらしいよ」
東京・江東区のあるマンションで暮らす伊藤重光さん(仮名、61歳)は知人からこう耳打ちされて驚いた。

このマンションは現在、約5億円をかけて大規模修繕の工事中だ。
建設関係の仕事をしている伊藤さんは、他の住民と相談して別の業者に見積もりを頼んだところ、ほぼ半額で済むことがわかった。

発注までの経緯を調べると、複数の会社に見積もりを求めていたが、落札したのは最も金額が安い業者ではなかった。

管理組合の中に設置された修繕委員会の中心メンバーの住民と懇意と噂されている業者が選ばれていたのだ。

談合ではなく、癒着。
伊藤さんが「気付くのが遅かった」と悔しがるが、こうした事例は珍しくない。

マンション運営に住民が無関心なところほど、「内なるリスク」は膨らむ。
リスクを乗り越えることができるのは、住民自身でしかない。



今では少なくなったと思いますが、ひと昔まえではマンションの管理組合というと、なんとなく町内会などの自治会活動と同じようなものといったイメージが強かったように思います。

逆に言えば、マンション管理組合の理事になった方の中にも、自治会活動の延長線といったイメージで活動をしていた人も多かったのではないでしょうか?

マンションの管理組合と自治会は色々な面でまったく異なる要素の団体なのですが、その中でも扱うお金の額は桁違いです。

自治会費は1世帯あたり年間で数千円です。500世帯の自治会で年間3千円の自治会費としても、年間総額はたった150万円です。

しかし、マンションでは管理費と修繕積立金の年間合計額は規模にもよりますが、軽く年間数千万円規模となります。
また、修繕積立金が積みあがっている組合であれば、億単位お金の管理が必要となります。


数億円の資産(修繕積立金)を持ち、年間数千万円のお金が動くということを会社に当てはめると、そこそこの規模になるのでははないでしょうか?
それを素人集団である管理組合が行うのですから、大変なのは当然です。



多額のお金が動くということは、色々なリスクも生じます。

特集記事でもあった管理会社の不正や倒産、住民による談合等のリスク。
また管理組合理事による着服なども良く聞く話しです。


企業であれば決済ルールの明確化や組織間のけん制機能、内部監査などによって不正防止を行いますが、マンションでは住民の信頼関係をベースにしていることから、あまり露骨なチェック機能を設けることには抵抗があると思います。

しかし、マンションという共有資産の維持管理や扱う金銭の大きさを考えるとあまり悠長なことも言っていられません。

記事の冒頭でも「性悪説」にたつことが重要とありましたが、
人間だれでも人を疑うことは気持ちの良いものではありません。

できれば「性善説」で考えたいところです。


武田鉄也さん歌、『贈る言葉』の一節で

♪~信じられぬと 嘆くよりも

  人を信じて 傷つくほうがいい~

と言う歌詞がありますが、マンション管理ではそうは行きません。
人を信じて傷つくだけで済むのは自分の財産だけです。


では、この性悪説にたつということはどういうことでしょうか?
「人はもともと悪いことをするものだ」と思って対応することですが、日頃から

「あの人はちょっと信用できない」とか

「管理会社の担当者はどうも怪しい」などと疑いの目を向けたところで、これでは単に疑心暗鬼になるだけです。


重要なのは信頼はしているが万が一のためにチェックのためのルールを設けるということです。

例えば一番初歩的な事例では修繕積立金の通帳は理事長が保管し、印鑑は会計担当理事が保管するというルール。

両者が共同しなければお金が引き出せない仕組みにします。

また、工事の見積もりは「最低3社からの相見積をうけること」というルールを決めることで簡単に談合が行われないようにします。

また、定期的に外部機関に管理組合の事務について監査を受けるというルールも有効です。

人間は魔が差す生き物です。普段はそのような気が無くても、つい出来心というものが生じます。

例えば野菜の無人販売所で100円のキュウリを買おうと思って財布を見たら50円玉しか無かった。「今度50円多めに払えばいいか」と思うことは良くあることではないでしょうか?
これが無人販売所ではなく自動販売機なら魔が差す余地はありません。お金が足りなければ買うことが不可能ですから。

色々なルールを作るとつい「面倒だから」とか「大丈夫だろう」といったことで手続きを省略してしまうことがありますが、必ずルールは守るということを常に意識することがリスクを回避する上で最も重要な要素です。

マンション管理について色々な仕組みを考えることで、相当なリスクが回避できると思いますので、皆さんのマンションでも知恵を絞ってみてください。




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