「管理」が危ない(1) | マンション管理の部屋

「管理」が危ない(1)



通帳



日本経済新聞の埼玉版に6月1日から4回の連載で『マンション誰のもの--「管理」が危ない』というマンション管理についての特集記事が掲載されましたので紹介していきたいと思います。

日本経済新聞では以前も同様の特集が組まれたことがあり、このブログでもで紹介しておりますので、あわせてご覧いただければと思います。

(ブログテーマ一覧の「建替えのこと」から入って、3月16日からの記事に記載しております。)

それでは早速新聞の記事を紹介いたしましょう。



(以下、6月1日の新聞記事)


「まさか自分が被害にあうなんてね」

東京・港区にある分譲マンションの管理組合で理事長を努める鍋川強士さん(仮名、41歳)。修繕用に住民が積立ててきた資金の通帳のコピーを前に、肩を落とした。

「2004年3月31日、入金540万円」「4月1日、出金540万円」―――。

不自然な資金の出し入れが始まったのは3年前。マンションの管理会社で今年1月に事実上破たんした和泉創建(渋谷区、福田稔社長)は、組合の決算日に一時的に入金し、残高証明を提示することで、何事もないかのように装ってきた。

資金の流用は経営が行き詰まるまで発覚せず、繰り返された。

 現在は組合で印鑑を保管しているが、かつては通帳、印鑑ともに和泉創建に預けていた。

「払戻請求書に勝手に判子を押し、引き出していたんです」。鍋川さんは悔しがる。

 和泉創建は約30物件・計1200戸を管理し、流用した資金は1億5千万円を越す見通しだ。同社が加盟する高層住宅管理業協会には加盟社の経営破たんに備えた保証制度があるが、保証されるのは管理費や積立金の1ヶ月分だけ。

 鍋川さんのマンションの場合では約40万円と、被害額の10分の1にも満たない。


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 埼玉県三郷市でも管理会社の破たんと資金流用で多額の損失を被ったマンションがある。

 「高金利の商品に預け替えるから」「管理費の滞納分を積立金から補填してほしい。――。

 事件が起きたのは2001年、マンションの管理会社である東海不動産管理の担当者が言葉巧みに組合の理事長に押印させ、引き出した資金を横領していた。被害額は3千4百万円。組合が会社に問いただすと、金庫に保管されているはずの通帳もなくなっていた。 会社も間もなく倒産。

当時、マンションは築2年目で管理組合は発足したばかりだった。「不慣れな住民からお金を騙し取るのは赤子の手をひねるようなものだったはず」と現在の組合理事長である和泉民郎さん(42歳)は憤る。

 住民は将来の大規模な修繕に備えて資金を積み立て、多くの場合、管理会社に委ねている。管理業務は手堅いビジネスで参入企業も多いが、バブル崩壊による不動産売買の失敗などの傷がいまだ癒えぬところも少なくない。

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 高層管理協会に2004年度に寄せられたトラブルなどの相談件数は約4千5百件。

前年に比べて2割も増えた。


 不測の事態を避けるためには経営状況の監視が不可欠だが、財務情報の開示はお寒い限りだ。

 01年8月にマンション管理適正化法が施行され、管理業者は登録時に財務データや管理戸数などを開示することが義務付けられている。しかし、データの更新は5年ごとで役に立たない代物だ。高層管理協会も加盟社の決算情報をホームページで公開しているが、強制力はなく、和泉創建などのデータ欄は長らく空白だった。

 情報開示を徹底する法制度の充実も当面は望み薄だ。国土交通省は勉強会を発足。管理適正化法の見直し作業に着手したが、動きは鈍く、住民自身が自ら守るしかないのが実情といえる。

 2003年秋に破たんした東洋ビル管理の場合、同社が管理していた役70物件のうち、被害額がゼロだったマンションが3割あった。「住民の目が厳しいかどうか」(高層管理協会の松岡英雄事務局長)


マンションが「管理」を買え――。

マンションの購入時にしばしば耳にする言葉だ。管理の水準が建物の寿命を左右するためだが、実際には管理会社任せの例が多く、各地でトラブルが発生している。「うちの管理会社は大丈夫なはず」という気の緩みが落とし穴になる。

第二部ではマンションの管理を巡るリスクを追う。


如何でしたでしょうか?

「うちのマンションは大丈夫だろう・・・」とお感じになった方も多いのではないかと思いますが、その根拠は何でしょう?

管理会社が大手だから?

管理組合の誰かが、きっとちゃんとしてくれているから?

いくら会社が大手でも、倒産するときは倒産します。

また、マンション管理にあまり詳しく無い人ほど「管理組合には立派な人が役員になっているのできっと大丈夫」と思いがちですが、意外とそうではありません。

理事の中には仕事柄、数字や法律に詳しい人や、施工関係の人のいらっしゃるでしょう。確かに個々の分野ではプロかもしれませんが、「マンション管理」という分野ではほとんどの皆さんが素人です。


会社が倒産することを事前に察知することは非常に困難です。

取引をしている会社ですら察知できずに不渡り手形をつかまされたりするのですから、マンションの管理組合がそれ以上の対応を行うことなど不可能に近いでしょう。


ところで倒産というのは具体的にどのようなことを言うのでしょうか?

一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」と定義されます。

しかし、赤字続きでも倒産しない会社はたくさんありますし、一方で利益が出ているのに倒産する会社もあります。

倒産の形を大きく2つにわけると、

①2回目の手形不渡りを出し、銀行取引停止となったとき

②民事再生法などの申請を行ったとき

です。

会社というものはいくら赤字であっても、支払いが滞らない限り倒産はしません。スポンサーがじゃんじゃんとお金をつぎ込めば、いつまでも潰れないのです。

一方、黒字経営の会社であっても、付け払いが多すぎて資金繰りが滞ってしまい、不渡りを2回出してしまうと銀行取引が停止となってしまいます。これは会社にとって「社会的信用が無くなった」ことを意味し、 「死亡宣告」と同様の効果となります。

よくニュースで「事実上の倒産しました」というのはこのような場合を言います。

このように倒産の情報を事前に察知することは非常に困難なので、管理組合としては

管理会社が倒産した場合のリスクを徹底的に排除する

ことに関して、常に注意を払うことが求められるでしょう。