マンションの駐車場問題(3)
さて、今日は≪立体駐車場≫の特徴についてです。
前回のおさらいですが、≪立体駐車場≫には<自走式>と<機械式>がありましたね。
<自走式>
自走式とは、「自走」つまり格納位置まで自力で走行するシステムのことを言います。
自走式立体駐車場はデパートやホテルの地下駐車場、ターミナル駅の地下駐車場、スーパーや量販店の屋上駐車場などで見ることができますが、これらは一般的に鉄筋コンクリート造で、建物全体あるいは建物の一部を駐車場として利用しているものです。
建物の一部とは、地下だけが駐車場だったり、ジャスコのように屋上に複数階の駐車場があるようなものを指します。
建物全体というのは建物全体が駐車場ビルになっていて、スロープで上り下りするものです。
駐車場が込んでいると、最上階までグルグルと上らされますね。
最近では軽量鉄骨で組み立てられた自走式立体駐車場も増えてきており、マンションでも見かける事が多くなりましたが、パチンコ店や郊外型量販店などでもよく見かけます。
自走式はスロープなどにより、車が自分で駐車位置まで移動するので、構造は比較的単純ですが、建物の全部または一部であったり、敷地に別棟で建設をするため建設コストがかかりますので、後から駐車場を増設するような場合は、かなり大掛かりな工事と費用負担を覚悟しなければなりません。
<機械式>
車の格納位置への移動の一部または全部を機械が行うものが機械式駐車場です。
鉄筋コンクリート製の地下ピット(くぼみ)を築造して、機械と油圧やチェーンによって車の昇降を行い入出庫するものが機械式立体駐車場です。
上下2段のパレット(車を載せる台板)に車を2台格納する「2段方式タイプ」や、上中下の3段のパレットに3台の車を格納する「3段方式タイプ」があります。
このような昇降・ピット式駐車場では、地上から2段目以上のパレットの車を出し入れするために、地下ピットの深さを確保しなければなりません。
例えば、2段式なら地下に1段分、3段式なら地下に2段分の深さが必要です。
その他の機械式駐車場では、同じピット式でもパレットが横に移動して、よりスムーズな入出庫ができるタイプや、より大規模で大量の台数を収容できる<タワー式>などがあります。
さて、駐車場を増設する必要があり、敷地にあまり余裕がない場合は機械式駐車場が有効だと思われますが、一方で機械式駐車場のデメリットもあります。
まず、
①メンテナンスに手間がかかる
上下昇降型の機械式駐車場は、一般的にチェーンや油圧によってパレットを稼動させます。
マンション管理組合の役員を経験された方ならお分かりと思いますが、このような動力型の設備はメンテナンスにかなりの費用がかかります。
エレベーターの保守管理費用なども管理組合にとっては大きな負担となっていることを考えると、さらに保守費用の負担が増加することとなります。
本来、駐車場の使用料収入は管理組合にとって重要な修繕積立金の積立原資となるはずですが、場合によっては機械式駐車場のメンテナンスや改修工事で持ち出しとなってしまう危険性もあります。
②意外と老朽化が早い
パレット型の機械式駐車場が屋外に設置されている場合、雨ざらしとなりますので、鉄骨部の錆びなどによる老朽化が問題となります。
特に深刻なのチェーンの錆びは、機械の稼動に直接影響がでるため深刻な問題です。
また、中段、下段のパレットに格納されている車は、上から落ちてくる錆び汁で汚れてしまう可能性もあります。
③騒音問題
機械式駐車場が住宅部分に近接している場合、パレットを上下させるときの機械音が問題になることがあります。特に深夜や早朝の入出庫では安眠妨害となってしまいます。
設置当初はほとんど無音でも、メンテナンスが悪かったり、機械が老朽化してくると騒音が大きくなることもあります。
④電力ダウンのリスク
機械式駐車場の入出庫は電力を使用しますので、停電している間は地下部または2段目以上の車は出し入れができません。
一時的な停電であれば、さほど問題にはならないでしょうが、災害発生時には重大な問題が発生する場合があります。
このプロフィールに記載しておりますとおり、私の実家は「阪神大震災」を経験しましたが、このとき、ライフラインが寸断され、しばらく電力がストップしてしまいました。
実家のマンションには地下に自走式の駐車場があり、その一部にピット式の機械式駐車場が設置されていたのですが、水道管の破損や停電による湧水ポンプのストップで、地下駐車場が冠水してしまいました。
停電しているので、機械式駐車場を稼動させることができず、地下部分に格納されていた自動車は水没してしまい、所有者はなすすべもないということがありました。
さて、もちろん敷地を有効活用するということでは、機械式立体駐車場は魅力的なシステムでありますが、前述のようなデメリットもありますので、管理組合で増設を検討する際は、メリットとデメリットを十分に考慮して決めることが肝要かと思われます。