マンションの駐車場問題(5)「判例紹介」 | マンション管理の部屋

マンションの駐車場問題(5)「判例紹介」

法廷  


さて、今日はマンションの駐車場問題で裁判になった主な事例をご紹介していきます。

「争いごと」というものは非常に白黒がつけ難いものであり、大概双方にそれなりの言い分があるものです。

最近は法律問題をあつかったTV番組が増えているようですが、法律も解釈の仕方によっては結論が変わってきます。

本来争いごとは、話し合いで解決するにこしたことはありませんが、お互いに折り合いがつかなければ、やむを得ず訴訟ということになってしまいます。

さて、今回は駐車場に関する事例を3つ紹介しましょう。



(1)抽選入替え方式使用者固定方式に変更した事例


これとは逆に

(2)使用者固定方式抽選入替え方式に変更した事例

最後に

(3)当初からの使用者をそのままにして、使用者固定方式を細則で定めた事例
です。 

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

(1)抽選入替え方式を使用者固定方式(半永久使用)に変更した事例

   これは神戸地方裁判所の平成3年6月28日の判決です。

 

【事実関係】

・Aマンションは戸数35戸の小規模マンションであり、駐車場台数は17台分しかない。


・駐車場の使用ルールは「駐車場取扱要領」で定められており、1年交代の抽選制としていた。


・管理組合総会で出席者30名中、賛成21名の過半数決議で、利用期間は1年で引き続き利用を希望する者には継続使用をさせるという半永久制に変更した。

 

【判決の内容】

①共用部分である駐車場を、特定の区分所有者に専用使用させる権利を与えることは、共用部分の変更に当る


②「駐車場取扱要領」は形式的にも実質的にも管理規約であるから、これを変更するには規約改正のための決議要件である特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成)が必要である。


③よって、管理組合総会の普通決議(過半数の賛成)による半永久制への変更は無効である。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


2)使用者固定方式(半永久制)を抽選入替え方式に変更した事例

   これは埼玉の浦和地方裁判所の平成5年11月19日の判決です。

 

【事実関係】

Bマンションは戸数375戸のマンションで、駐車場台数は戸数の約3分の1である126台しか無い。


・入居後1年の第2回管理組合総会で、駐車場使用細則を過半数決議で、2年毎の抽選による入替え制にした。


・これに対し入居当初から駐車場を使用していた組合員が「分譲会社からは既得権であると説明されていた」として、本件は規約事項であり、共用部分の変更であるから特別決議が必要であるとして訴えを起こした。

 

【判決の内容】

①専用使用権の期限は1年間であり、その後は双方に異議がなければ更新されるというものである。

②管理組合の総会で「駐車場の使用契約期間は2年、使用契約者の選定は抽選による」と定められたことから、この時点で管理者である管理組合から駐車場の使用者に対して異議が述べられたと同じ効果が生じる


③よって、この管理組合の総会決議が可決された時点で、専用使用権は消滅したものとする


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○



(3)当初から使用者をそのままに使用者固定方式(半永久制)に細則で定めた事例

   これは那覇地方裁判所の平成16年3月25日の判決です。

 

【事実関係】

Cマンションは戸数21戸のマンションで、駐車場は12台分しかない


・管理規約等には駐車場の使用方法や管理運営に関する規定は存在しなかった


・実際の運用は先着順で駐車場使用契約を締結し、満車以降は予約待ちとなり、空きが出たときのみ、順次契約できるという方式をとっていた。


・その後、既に駐車場を使用している組合員らが、駐車場の管理規定ないことに不安を覚え、管理組合総会で現状の運用ルールを維持する内容の駐車場使用細則を駐車場使用者12名の賛成多数による過半数決議により可決。


・これに反対する人たちが、駐車場使用細則は規約に該当するため、特別決議が必要との訴えを提起した。

 

【判決の内容】

①「駐車場使用細則」は実質的に特定の区分所有者に、駐車場の優先使用権を認めている内容となっていて、共用部分である駐車場の性質に反するものである。


②したがってこのような優先的な使用を認めることを内容とする規定事項は、規約にさだめることが相当である。

③よって、過半数の賛成による「駐車場使用細則」決議は無効で、特別決議が必要である



○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


さて、以上の判例をまとめると、



抽選制⇒半永久制=特別決議が必要(規約変更にあたる)

半永久制⇒抽選制=普通決議で変更が可能(永久使用権は保護されない)

制度なし⇒半永久制=特別決議が必要(規約に定めることが相当)

ということになります。


この結果を見ると、裁判所では共用部分が一部の者の利益となるようなケースでは、非常に厳しい制約を課しているようです。


特に2番目の半永久制を抽選制に変える場合、特別決議が必要無いという判例からすると、管理組合としては不公平感を緩和するような仕組み を考えざるを得ないというところでしょうか。



【告知】

●このブログでは皆さんからテーマを募集します。

 日頃、気になっていること、疑問など、今後の参考にさせていただきたいと

 思いますので、コメントへどしどしお寄せください。

●過去のブログをテーマ別に整理しました。

 是非、昔の記事もご覧下さい。