ペット問題
個人情報保護法のお話しはちょっとお休みです。
昨日の新聞に出ていましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、今日はマンションのペット問題の判決についてお話ししたいと思います。
名古屋市中村区のマンションの住民が、上階の住民が飼う犬の鳴き声や足音で不眠になったなどとして、買主に対し損害賠償262万円と飼育禁止を求めた訴訟の控訴審判決が27日、名古屋高裁でありました。
名古屋高裁は第一審判決を変更し、犬の飼育禁止を命じ、損害賠償請求も30万円増額の132万円を言い渡しました。
第一審では犬の飼育禁止が認められなかったのですが、今回の控訴審では一転、飼育禁止が認められ、さらに賠償額も増額となり、原告の主張がかなり認められた判決となりました。
以下は第一審の地裁判決と今回の控訴審判決の比較です。
【第一審判決】
損害賠償請求……102万円
飼育禁止請求……認めない
理 由……①被告がマンション管理規約に違反して犬を飼育したため、
原告が連日連夜睡眠不足に陥ったと認定
②原告は占有権や賃借権などに基づいて犬の飼育禁止を求め
ているが、「犬の飼育や騒音によって占有権などが侵害さ
れたとは言い難い」と判断
【控訴審判決】
損害賠償請求……132万円
飼育禁止請求……飼育禁止を命じる
理 由……①犬の鳴き声の程度は受忍限度を超えている。
②原告の人格権が侵害されている。
私はこの判決を非常に画期的なものと受け止めています。逆に言えば、昨年の12月にあった第一審の判決は、非常に理解に苦しむものであり、裁判官はマンション管理についての理解が欠如しているのでは?とも感じました。
恐らく第一審の裁判官は「上階の住人にだって犬を飼う自由があるし、これによって占有権を侵害したとまでは言えないから、飼育禁止はやりすぎだろう」と考えたのでしょうか?
しかし、そもそもマンションの管理規約に禁止をされているということは、そのマンションでは犬を飼う自由は無い のです。
「規約」というと「なるべく守りましょうね!」といった軽いニュアンスに受取る方がいますが、これは大きな間違いで、規約はマンションにおける『憲法』であり、そこに住む限り必ず守らなければならない掟なのです。
これを守れない人は住む資格が無いといっても過言ではありません。
近所のテニス同好会の規約や、同窓会の規約とは重みが違うのです。なにしろ区分所有者はこの規約を一つの判断基準として数千万円という物件を購入するわけですから。
民間会社で最も基本となるルールは「定款(ていかん)」であり、会社には必ず必要なものです。
この定款を変更するには株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)という厳格な手続きが求められていて、気軽に変更することはできません。それだけ重要なルールであるということです。
少し前にライブドアとフジテレビの問題で、株式の3分の1以上を握ると重要議案の拒否権が持てると言ってましたが、この定款変更も重要議案の1つです。
片方が3分の1以上を持つということは、逆に言えば提案する方は3分の2以上の賛成を得られないので、定款変更が認められないという事になりますからね。
マンションの管理規約もこの定款と同じ位置付けで、変更には管理組合集会の特別決議(4分の3以上の賛成)が必要とされています。
マンションに住むということは、全員がルールを守るという前提があって、はじめて成立する生活形態であることを忘れてはいけません。
次回は今回の判決内容を法律的に、少し判り易く解説してみたいと思います。