マンションの駐車場問題(4)「既得権」 | マンション管理の部屋

マンションの駐車場問題(4)「既得権」

 大規模

 

さて、3回に渡り駐車場の構造や形態の違いと言った「ハード面」について、お話をしてきましたが、今回から駐車場問題の本丸ともいえる「ソフト面」

すなわち、駐車場の管理における諸問題について考えていきたいを思います。

 

さて、ここでお話しする前提条件ですが、

・駐車場は管理組合と居住者で「駐車場使用契約」を締結する。

・駐車場設置台数よりも駐車場使用希望者の方が多い。

 (駐車場が空いているマンションでは、抽選等の問題は生じないから)

という、一般的な形態の場合について、検討していきましょう。

 


■駐車場使用者の決め方

 

【公平の原則】

通常マンションの駐車場は、各区分所有者が共有している敷地に設置されているわけですから、区分所有者が駐車場を使用することについては、公平に運用しなければならないということは当然のことです。

 

最近では「駐車場100%完備」といった分譲マンションも増えてきていますが、多くのマンションでは、全戸分の駐車場が確保されていないため、何らかの方法で使用者を決定しなければなりません。

 

この決定方法には、

(1)定期間抽選方式

(2)使用者固定方式

という2つの形態が見られます。

 

【定期間抽方式】

これは、1年とか3年といった一定期間を使用単位として、抽選で使用者を決定する方法です。

この方式の場合、使用期間を短期間にすることは、抽選の観点からは公平性が益すと思われますが、マンションの周辺で月極め駐車場などが多くあり「いつでも比較的簡単に駐車スペースが確保できる」ということが条件になるでしょう。

そうでなければ、駐車場の入れ替えの度に、抽選にもれた人が自動車保管場所を確保できないと言った状況になり混乱が生じるからです。

マンションによっては、入れ替え時の混乱を少なくするために10年に1度の抽選を行っているところもあります。

 

【使用者固定方式】

分譲当初に使用者を抽選等で決定し、転居や自動車を手放した等による空きが生じた場合にのみ、待機または抽選によって新しい使用者を選ぶ方式(半永久制)です。

この場合、一度駐車場使用を獲得した入居者は、引越したり車を手放さない限りずっと駐車場を使用することができ(詳細な規則については駐車場使用細則等で定められている場合が多い)、後から入居してきた居住者との間で不公平感が生じる懸念があります。

マンション管理においてよく問題となるのが、この既得権についてです。

特に周辺の月極め駐車場より敷地内の駐車場の使用料が安い場合などは、この不公平感は更に増大します。

 

 

 

平成15年度マンション総合調査結果報告によりますと、一定期間ごとに入れ替えている管理組合は、たったの2.2%しか無く、同報告の「管理規約上のトラブル」で「駐車場使用方法に関するトラブル」が13%と高い比率を示しているのは、これら駐車場の使用者の決定方法についてだと推察されます。

 

ちなみに、自転車置場についても同様の問題があり、あるマンションでは入居順で自転車を置かせているため、古い入居世帯では一軒で5台もの自転車を置いているのに、途中から入居してきた人は自転車置場が一杯という理由で、1台たりとも自転車の所有を認めないという極端な例もあるようです。

 

駐輪場  


おそらく、管理組合も「これからは自転車は1世帯1台にしましょう」と提案したのでしょうが、既に複数台の自転車を所有している入居者から「では、置けない分の自転車は捨てろという事か?捨てざるを得ない自転車の分は補償してくれるのか?」とねじ込まれたのではないでしょうか?

正に既得権戦争と言えます。

マンション管理において、この既得権ほど厄介なものはありません。

社会生活を送る中で不満というものは沢山あります。

仕事上の不満、学校での不満、不親切な役所への不満etc。

これらの不満は、不満な状態に接している状況では非常に不愉快でありますが、不満の状況から距離をおくことで、ストレスを和らげることができます。

例えば、仕事での不満も飲みに行って気分転換するとか、役所の窓口で長時間またされて腹が立っても、用事が済んでしばらくすれば、よほど深刻な問題以外は急速に忘れていくでしょう。

しかし、マンション管理に関する不満は、そこで生活する以上、最も日常に近い部分での不満でありますから、忘れようと思っても、つい思い出してしまい、ストレスが蓄積する傾向にあります。

例えば、駐車場の不満も一歩家を出ると、いやでも駐車場が目に入りますし、お隣りさんが既得権者であれば、顔を合わせるたびに「不愉快」な気持ちが生まれるかもしれません。

本来であれば様々な不満によるストレスを癒すべき「わが家」なのに、そのマンションの管理に不満があるということはとても辛い状況です。

マンション管理の問題が泥沼化する背景には、このような要因があるのではないでしょうか?

さて、次回は駐車場使用者の決定に関する判例をご紹介することにしましょう。